綾部に住む里山の賢者を訪ねる冒険、賢者はあの世を介して世界を見ていました
未来を見に行く冒険 8
ロンドンに留学してアロマセラピーを学んでいるガールフレンドから連絡が来ました、1998年の梅雨明け前のことです。
届いたair mailにはこんなことが書いてありました。
あなたが世界を目指すなら、何かの役に立つと思うの
あなたが日本だったり、今いるところで活躍するのもいいけど
私は世界を目指してほしいと思ってる。
その時の通訳は私に任せてね!
だって。
その後に、名前と連絡先が書いてありました。
住所を見ると、京都府綾部〇〇
綾部といえば出口なおと出口王仁三郎の大本があるところ、日本の近代史で重要な位置を占めた宗教家で芸術、合気道の元、はては満州国建国にも関わった霊能力界、宗教界の巨人が生まれたところ。
霊力が相当高い地域ではないですか、そこに住む山里の賢者を訪ねて教えを乞うようにとガールフレンドからの指示です。
俄然興味が湧いていました。
どうやらガールフレンドの母親が懇意にしている経営者たちがこぞって訪れて教えを乞う里山の賢者のようです。
さぞや高い霊力を持つ本物の霊能力者でしょう、名前も〇〇哲山、哲学が山のようにある、里山の賢者にぴったりの名前ではないですか。
電話を入れて伺う日を決めました、1日に一人だけの対応で朝の9時から夕方5時まで一人に対して8時間程の時間をかけてリーディングを行うそうです。
普通ではあまり無い長い時間です、どんなリーディングなのでしょう、さらに興味が湧いてきました。
そして最後に
「今、仕事でもプライベートでも結構ですので関係のある方、気になる方の名刺を用意してください」と言われたのです。
約束の前日、里山の賢者から電話が入りました。
「明日はよろしくお願いします」
「明日持ってくる名刺はご用意できましたか」
「はい用意しました」
「ええ、そのようですね、20枚ありますね」
「えっ、数えてはいませんが」
「では、念のために数えていただけますか」
1枚、2枚と数えて行きます。・・・18枚、19枚、20枚、机の上には賢者 の言ったように20枚の名刺が並びました。
「先生、どうして枚数がわかったのですか?」
「では明日、お待ちしております」
と電話を切った。
なぜ私の選んだ名刺の枚数がわかったのだろうか?
私の思考を読むことができたのだろうか?
電話の時点では私ですら名刺の枚数は知らなかった、未来を読むことができたのだろうか?
相当霊力が高い賢者かもしれない、期待は高まります。
次の日の早朝、サーブ900を走らせて綾部に向かいました。
道中は綾部に近づくにつれて小雨が降り出します、少し天気が悪いせいか初めての綾部は少し怪しげな雰囲気でした。
里山の賢者の家は田舎の集落の中にありました。ごく普通の田舎の民家で、通された10畳ほどの部屋はたくさんの本がありますがごく普通の部屋です。
賢者は私の選んだ名刺を見ながら一人一人について、この人はこんな人と特徴と人となりを話し出しました。
選んだ名刺は、その頃建築家を目指していた私と一緒に建物を造った人たちや建築家、一緒にプロジェクトを行っている人たち、芸術家やアーチストの人たちでした。
「この人は男だが母親のような人です、長く付き合うといい」
「この人は友達のような顔をして、首筋にサリンをポンと置くような人、気をつけて」
「この人は猿飛佐助のようにひょいひょいと飛んで誰のところへも行くお調子者」
「この人は正義が好きな人、親分のような感じ」
「この人は箱は作れるけど芸術にはならない経済建築家」
「この人の会社の経理に虫が食っていて、何年後に苦しむ」
とこんな感じで20人の人となりを話してくれました。
意外なことが多い話だったのですが思い当たることは確かにあります、名刺に書いてあることなど大した情報ではないのに果たして賢者はどのようにして彼らの特徴や人となり、未来がわかったのだろうか?
賢者は硯とたくさんの紙を取り出して机の上に置きました、しばし宙を見ながら何かを待っている様子、しばらくして突然筆が走り出します。
文字のような模様のようなものを次々と紙を変えながら書いて行きます、20枚ほど溜まると私と向き合い話が始まります。
どうやら賢者が書いた文字のようなものは、いわゆる自動書記のようなもの、あるいは降りてくるインスピレーションの文字という感じでしょうか。
「あなたのこれまではこんな感じだったでしょう」
と言いながら書かれた模様を解説して行きます。
「あなたの子供の頃は〇〇のような子供で〇〇のようなことが起こりませんでしたか」
確かに思い当たることがありました、賢者は誰も知る由もないことが見えているようでした。
賢者は時折自分でもわからない文字や数字、模様が出てくると世界地図や辞典を開いて意味を探して話を続けます。
インスピレーションで降りてきた文字や模様の言わんとしていることを翻訳するような感じです。
賢者をみていると、どうやらあの世では言語はないようです、日本語で声帯を使った会話ではなく頭の中にドンと理解が入ってくる感じ、あるいは記号のようなものが降りてきてその意味を解読するような感じでしょうか、それも何箇所からきているようにみえます。
綾部という田舎に居て、あの世を介して世界と繋がっているような感じでしょうか。
私と電話で話しながら私の選んだ名刺の枚数を確認する、そして名刺を介してその人物の過去や未来が垣間見える。
なんて便利なのだろう。
もしかして、あの世とつながったら
究極の美、真の美が理解できるかもしれない、
本当の美しさがわかるかもしれない。
美しい建物が創れるかもしれない。
と、身勝手な都合の良いことを考えるのでした。
お昼に中華飯をご馳走になり、午後から賢者は私の現在と未来を見に行きました。落書きが書かれたような半紙は50枚近くになっていました。
2つの数字が半紙の上に出てきて何かと思ったら、地球儀を取り出して緯度と軽度を測ります、そしてその場所はアフリカでした。
「なぜアフリカなんだ、そうかあなたがリーダーとしてアフリカ大陸にいます。なぜだ・・・旅行ですね、たくさんの人と」
確かに私は3年後にたくさんのお姫様とサハラ砂漠にいました、その時にはそんな未来は微塵もありません、すごいな。
時間通りに終了して、大量の半紙をお土産に帰路に着きます。
「先生、あなたのように未来や世界のいろんなことが見えるようになるにはどうしたら良いのですか?」
私の一番知りたいことです、私の問いに賢者の一言は
「隠者になることです」
えっ、それだけ、、、、、なるほど、間違いのない答えです。
未来を見たり、あの世と繋がるには表に出ず誰とも深く交わらないこと、人々と付き合えば雑音ばかりで内面の声など聞こえないでしょう。
人々の同調圧力は正しい判断を狂わせて人々を良く無い世界へ誘います。リーダーや指導者は隠者になることが一番大切なことだそうです。
里山の賢者の教えは活躍する建築家になりたいとか、今流行りの成功者になるとか自己啓発とは真逆のことでした。
さて、私は隠者になれるのでしょうか?
まあ、仕事にも、学びにも、遊びにも乗っている頃です。
隠者になるのは無理でした、輝かしい未来や欲望や成功が微笑みながら手招きをしていました。
でも頭の片隅にはいつもニコニコした隠者が足を組んで座っていました。
それから20年もすると、あの時選んだ20名の名刺の人たちとは関係性は無くなりました。プロジェクトが終わったり、お互いの成長が完了して必要がなくなったり、あの世に行った人も何人か出てきました。
この世の関わりなど、その程度だし魂の成長、進化のための関わりとすれば、いつまでも一緒にいるのは成長が必要ないからでしょう。
里山の賢者の教えを受けて20年も経つと、SNSやIT、AIも当たり前になって家で仕事するのが普通になりました。
精神文明も高まってきてあの世の仕組みを知ることも必要になってきました。
少々時間がかかりましたが、今時の隠者、近未来の隠者になるのもいい時期になってきたのかもしれません。
今までの常識や普通、歴史や教育、価値や社会が古くなって使い物にならなくなってきました。恐ることなくアップデートする時期ですね。
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