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趣味は暮らし うるわしき内に棲まう coitellerie  カトラリー

趣味は暮らし うるしき内に棲まう

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coitellerie
カトラリー


料理にゆく前に  

料理に行くその前に、写真を6枚送りました
カトラリーの写真を送ったので一言二言

みなさん、スプーンでカレーライス食べていますか?

それダメですよ

スプーンはスープなど液体を口に運ぶための道具です
(アイスクリームも液体の部類に入ります)

でもご飯を匙ですくって食べるのは幼児の食事で大人がやる事ではありません
かの白洲次郎氏も同じことをおっしゃってましたね

もう一つ、スパゲッティを食べる時

左手に持ったスプーンの上でクルクル巻くのがマナーだと勘違いしてませんか?

映画「タンポポ」の中で岡田茉莉子扮するマナー教室のセンセイがそう
教えるシーンがありましたね

あれは伊丹十三がこれは間違ってますよという揶揄です

正しい食べ方は伊丹一三著の「ヨーロッパ退屈日記」に記されていますし
左手にスプーンを持ってを食べるイタリア人を見たことがありません
まあ、これまた幼児ならそうするかもしれませんが

Maurice


モリスのカトラリーコレクション


ちょっとむかしの話です

建築家はキッチンも設計するので
料理もできなくてはいけません

料理ができるとより導線が明確な設計ができて
たいそう快適な家になるのです
ですから
出来る建築家は料理上手でした

えーっ、そうなの

とゆうわけで
知り合いの建築家と男二人、お料理教室へ行くのでした

先生は中華の鉄人

素敵なマダムたちと包丁を振う
建築家の男二人



大昔のお話です

ある日

名を成し、功を成した大人のところへ
使者が訪れます

そしてこう言います

「甘露の水のお誘いに参りました」

大人は大層喜びました

やっと私のところに甘露の水のお誘いが来た
嬉しや嬉しや

大人は使用人に命じて全財産を財宝とお金に変えました


これで美味しいお酒を飲みます

そして

楽隊を雇い、踊り衆を雇い、荷担ぎを雇い隊列を組みます

隊列はおおよそ1キロにも及ぶのでした

使者が先導し、大人は神輿に乗り大行列の行進が始まります

そうすると町行く人々も行列に加わりさらに長い行列になってゆきます


楽隊はドンチャンドンチャン笛や太鼓をかき鳴らし
踊り衆は踊りながらお金やお菓子、財宝を

ほーれ、ほーれ

と掛け声をかけて放り投げてゆきます

大人様ありがとうござりまする
ありがとうござりまする

道ゆく人はニコニコしながら拾ってゆきます


色は一緒ですがメーカーもサイズもバラバラです、それで構いません


夕方になると宿やを何軒も借り切って
道ゆく人々も入り混じって

ドンチャンドンチャン
大宴会騒ぎです


大人様ありがとうござりまする
ありがとうござりまする

ああっ、楽しや、楽しや

大人は上機嫌です


大きさも違いますが、ちょっと工夫すれば美しいバランスが現れます

一人去り、二人去り
日を追うごとに大行列は少なくなってゆきます

一人去り、二人去り

気づけば大行列は消えてなくなり
お金も財宝も全て無くなり

人もいない山の裾

大人様は一人きりになります

使者が大人を小さな庵に招き入れ

「ここでしばらくお待ちください」


モリスコレクションの可愛らしいティーカップ


庵の縁に腰掛けて待っていると

小僧さんがお盆に湯呑みを載せてやってまいります

「甘露の水でございます、どうぞお飲みください」

大人は湯呑みを手に取ると

掌中の珠の如く両手でおおい

唇をつけてゆっくりと飲み干します

「ああー 甘露、甘露」

と飲み干すと小僧さんも庵も消えてなくなっていました

集まった富はまた市中に帰ってゆきましたとさ


なんとも粋なお話

富は物質ではありません
富は溜め込む物ではなくて

市中に放り投げて

すごいぞ すごいぞ
と形のない大賞賛を受けることです

粋な大人になれば争いもなくなるのにね

noris




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