広州モーターショーで中国メーカーの動向を見てきた話
こんにちは、2022年の終わりにコロナ陽性になり、かなり大変な思いをしていたnorippyです。
そんな私ですが、広州モーターショーへ行ってきました。仕事がら行くべきという理由もあるのですが、車好きなのでアホみたいに見て、乗り込んで楽しんできました。そのため1日で回る事ができず、2日間かけて全ブースをガッツリ巡ってきました。
今日はそのモーターショーを通して、中国メーカーの車の動向について色々と見えてきたので、レポートにまとめる事にしました。
広州モーターショーとは?
東京モーターショーと同じような各自動車メーカーが自動車を展示する国際モーターショーの一つです。
このモーターショーが注目される理由は広州や深圳に多くの自動車メーカーがあり、それらのメーカーが自動車を発表する場にしているからというのがあるようです。日本のトヨタ、日産、ホンダも広州に拠点がありますし、中国EVベンチャーとして名前があがるXpeng(小鵬)も広州に本社があります。
http://autoguangzhou.com.cn/#/
そんな広州で開催されるモーターショーですが、日本では見る事のできない中国のメーカーが多く出展しています。今年はゼロコロナ政策の影響で延期からの、方向転換して急きょ実施という事もあり、少し出展メーカーの数が減っているようです。
各ホールの雰囲気はこんな感じで、日本の幕張やビックサイトよりはホールが小さく、メインの通りに対して左右にブースが設置されていました。
東京モーターショーも同じですが、モーターショーは車の見本市なので、この場で購入する車を検討する場になっています。そのため車に乗り込む事ができます。
この"車に乗り込む"が日本のモーターショーを超えていて、1000万円以上の車でも乗り込む事ができます。日本だと乗り込む事ができないメーカーや車も広州モーターショーだと乗り込んでチェックできるんです。
こんな事をずっとしていたら、1日でブースを回り切る事ができず、結果2日かけて全ブースを回る事になりました。
どんな自動車が主に展示されているか
CセグメントやDセグメントのセダンとSUVメインで展示されていました。
中国ではこれらのボディタイプがファミリーカーとして買われているという事が言えます。
MPV(日本のミニバン)も出展されていましたが、かなり種類が少ない印象。中国ではファミリーカーではなく、高級車の部類に入るようで、運転手さんが運転してくれるような車で利用される事がメインのようです。日系メーカーだとアルファード、欧州だとメルセデスのV-classといった高級車に分類される車種が出展されていました。
驚いたのは日本のようにスポーツカー、スポーティなモデルがあまり展示されていないということ。ポルシェ、ロータス、ランボルギーニといったモータースポーツのイメージが強いブランドを除いて、2ドアクーペはほぼありませんでした。1人一台というより家族で1台しか持てず、自動車で遊ぶという文化があまり根付いていないのだろうなと思いました。日本で約500万円で購入できるGRスープラの2.0Lモデルでも約1000万円するので、本当にお金持ちじゃないとモータースポーツなんて出来ないんだと思います
中国メーカーの面白いところ
まず自動車の走りの楽しさを知っている人が少ないと考えると、走る楽しさや性能といった官能的かつ抽象的な指標で競っても中国のメーカーは日本のメーカーに及ばないと考えています。
もちろん市場からはある程度のレベルは求めらるため、少しずつよくなっているようですが、それがマーベラスなクオリティかというと、そこにその会社のある国の自動車文化による差が生まれるはず。中国で現状"究極のハンドリング"みたいな車はまだ出てこないのではないかと思っています。
では何を求めているのか?
中国メーカーの面白いところは、日米欧のように車の走る性能を追求するというよりは"車がいかに便利であるか"を追求しているところにあると考えています。
それを感じたきっかけが中国で有名な自動車メディアの一つである"汽車之家"。このサイトには各モデルの口コミがあるのですが、口コミ点数グラフに"智能化"という項目があります。日本ではまず見ない項目です。
この智能化は、その車がいかに便利であるかを示す指標で、日本でいうところの純正カーナビがどれだけの機能を持っていて且つ使いやすいか、そして自動運転支援がどれほど使いやすいかという性能を示した項目になります。
こういう口コミを見ても中国のユーザーは便利である事を求めているのだなと伺い見る事ができます。
そして便利であることの競争が激化していて、気づけば日本、欧米では見られない新しい機能が提案されている事がわかってきました。
日本にはない便利、快適と感じさせる機能
広州モーターショーではこの智能化にフォーカスを当てて自動車を見てきました。その中で面白い、便利、快適と感じた、今後日本や欧米のメーカーでも採用がされていくかもしれない車の機能を紹介していきます。
助手席ディスプレイ、ディスプレイが動く
TESLAが巨大なディスプレイを車に搭載してから、世界的にも大型のセンターディスプレイをレイアウトするという流れがありますが、中国はそのディスプレイに加えて助手席専用のディスプレイを搭載する車も出てきました。
これは助手席に座る人がオーディオや動画といったエンタメコンテンツを楽しむための専用のディスプレイで、走行中でも動画などを楽しむことができます。日本でもカーナビのテレビ機能は走行中に見れなくなりますが、助手席ディスプレイがあれば助手席ディスプレイにのみ映して、楽しむ事ができると言うわけです。
また助手席専用ディスプレイは偏光フィルムが貼られていて、運転席からは見えないようになっていたり、停車中はセンターディスプレイに映像を移せるものの、走行中にはセンターディスプレイには表示できないといったドライバーの運転を邪魔する、誘目する事がないような工夫も見られました
まだモデル自体は多くないですが、ディスプレイが回転、移動するものが出てきました。
有名なところで言うとBYD。最近のBYDはディスプレイが回転するようになっています。この回転する理由は、そもそもTikTok等縦型のコンテンツを大画面で見れるようになるというだけでは無く、助手席に人が乗っていない時にディスプレイの端までドライバーの手が届くようにするため、ナビなどの情報を高い位置で見れるようにするためだと考えられます。
もちろん回転だけが答えではなく、ロールピッチ方向で回転したり、シートに搭載されたセンサーに反応して、ディスプレイの向きが自動的に変わるモデルもありました。
家族で利用する前提だから内装は"これでいいだろ"と決め打ちで作るのではなく、技術を活用してドライバーのみが乗る時、家族で乗る時それぞれに最適な環境を提供しようとしているのだなと思いました。
周囲に情報を発信する機能
Taobaoを見ていても車に後付けパーツとして後ろの人と簡単なコミュニケーションをとるためのツールが売られています。どうもこの国は周りに情報を伝えたいというニーズがあるようです。
たしかに中国で生活していて、"あなたの車の斜め後ろにいるよ"を伝えるためにクラクションを鳴らしている事がある事に気づきました。
事故を未然に防ぐためにウインカー以外で自車の情報を発信する文化があるのかもしれません。
モーターショーではこのウインカー以外でドライバーの考えていること等を伝える機能があるモデルも何車種かありました。
このようにバンパーにLEDマトリクスを搭載し、ドット絵で周りに情報を伝える事ができるようになっていました。
もちろんモーターショーでデモはありませんでしたが、ヘッドライトにプロジェクターを搭載し、直接プロジェクターで正面の道路にいろいろ表示してしまう機能を持ったモデル(智己L7)もありました。
ドライバーコクピットはHUD中心
ドライバーコクピットと言えばハンドルの内側にメーターがあって、それを見ながら運転するというのが一般的だと思いますが、中国では少しずつHUD(ヘッドアップディスプレイ)を中心としたドライバーコクピットが増えている印象がありました。
HUDが中心のコクピットとはどんな感じかというと、HUDに走行中に必要な情報を表示するため、メーターはメインの表示装置ではなく、HUDでは表示しきれない内容を表示する補助表示装置となっています。
走行中はなるべく視線移動を減らし、ずっと前を見ながら走行ができる状態を作る事で安全に運転ができるコクピットにしようというメーカーの意志を感じました。
このコクピットレイアウトが本当に中国で受け入れられるのかは正直わかりません。
とはいえ欧州メーカーが既に採用を始めているため、このコクピットを採用する流れは今後日本にもやってくるのかもしれないと感じました。
さいごに
自動車のコモディティ化の歴史の違いにより、ユーザーが自動車に求めるものに違いがあり、それに対してメーカーは応え、中国市場に向けて新しい価値を提案している事が感じられました。
日本でも流行るかというと、車に乗り慣れていたり、車で遊ぶことを知らず、"車はこうあるべき!"のような感覚を持っていない、そう、初めて車を買うZ世代の子たちを中心に魅力的に見えて、売れていくのかもしれません。
Y世代のおじさんの私としては今後もマニュアルミッション搭載で、クルーズコントロールくらいの運転支援しか設定がなくて、自分でいろいろといじれる車が出てほしいなぁと思ってしまいますが(笑