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なりあきら君

小学校の同級生に、なりあきら、という名の子がいた。
幼心に「変な名前!」と思っていた。

なりあきら君は、ギャグ漫画みたいな青っぱなを垂らしていて、それをいつも袖口で拭うもんだから、袖はいつもカピカピ。顔はほうれい線から横に伸びた青っぱなの跡がくっきり残っていて、何だか不潔な奴だなあ、と思っていた。
小三くらいに、なりあきら君が自分の上唇に唾を塗って、唇をタコのような形にしてスーハーしながら恍惚の表情をしていることに気がついて、「う、うわあ。。」と思ってあまり近寄らないようにしていた。

たいして勉強はできず、でも、お母さんがものすごく教育熱心で、クラスの中ではなりあきら君だけが唯一、街の中心部にある塾へ通っていた。

成績は普通、特に人望もなく、ルックスも凡庸。でも、ルーム長はほぼ先生の独断で常になりあきら君だった。何か謎だった。先生にごますってる風にも見えないし。むしろ、先生の方がなりあきら君にごますってるように見えたりすることもあり。

「のりお、知らねーのか? なりあきら君の祖先は大名だぞ!」

(。´・ω・) ほえ? だいみょう?

そうなんです。なりあきら君自身はどんなに凡庸だろうと、何代か前の人達は大名だったんです。そして、何百年か経った今でも、もはや大名でもなんでもないなりあきら君にひれ伏そうとする人々がいる。

この一件以来、あまり見慣れない名前だけど歴史上の偉人と同名の人は、ちょっと警戒して接するようになった。もちろん、名づけ親がただの歴史マニアという可能性はあるけど。

ちなみに、なりあきら君は、中3くらいから当主の自覚が出てきたのか急にオシャレなシティボーイwになり、都会の高校へ進学するため町から出ていった。

消防団にいなかったから、今でも実家に帰ってないんだろうな。
消防団の集まりで、ふとなりあきら君の消息を同級生に聞いてみたら、

「俺たちみたいな下々が、お殿様の行方なんか知るわけねーべ! がっはっは」

なりあきら君の近況がもし分かったら、また書きたいと思います。(笑)

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