うまい棒の思い出
社会人になるまで私はお金にルーズで、あればあるだけ使い、ペース配分もたいして考えておらず、貯金はもちろんゼロだった。
そんな私の学生の頃の話。
仕送り入金日までまだ3日あるのに残金は30円という月があった。
マジで10円玉2枚と5円玉2枚っきゃなかった。
当時は部屋に電話がなく、ポケベル全盛の時代だったので携帯なんてもちろんない。公衆電話で10円使って親に無心しようかとも思ったけど、あの鬼母のこと、応じてもらえる可能性は極めて低い。
学校にほとんど行っていない時期だったので、友人もいなかった。
うーむ、困った。
3日くらいなら水だけでも何とか生き延びられそうだけど、それにしても1日1回は何かを食べることで生活に艶がほしい。
にしても、1日に使えるのは10円だ。
10円で買えると言えば、マルカワのガムかうまい棒だろう。
ガムよりはうまい棒の方が、まだ栄養があるのではないか?
そう考えた私は、うまい棒を買いにコンビニへ行った。
(お金がないくせにコンビニへ行くあたりからして、我ながら当時はホントに生活力なかったんだな~)
うまい棒を3本持ってレジに出した。
「31円でえす」
ええっ( ̄□ ̄;)!!
当時の消費税は3%
ぐ、1円足りひん。。
でも、すぐにひらめいた。
「あ、すんません、悪いんですけど、1本ずつ会計してもらっていいですか」
1本ずつ会計すると各10円になるので、30円で3本買えるって寸法。
こうして無事にうまい棒3本をゲットしたのりお青年、嬉々として帰途をチャリで走っていたところ、急に便意を催した。肛門に感じる並外れた圧力からして完全にピーゴロ系。
「おいおい、なんも食ってねえのに、いったい何が出るんだ?!」
仕方なしに、途中にある公園のトイレで用便。何も食べてないのに完全な液便ではなく、ところどころに出てくる半練りな固形物ってアレなんなんすかね~。
そして、トイレから出てチャリへ戻った。
( ̄□ ̄;)!!
ない!
チャリカゴに入れておいた、コンビニの袋がない!
俺のうまい棒がない!!
いいですか。
あと3日をうまい棒3本でしのがなければならなかったのです。
恥を忍んで3回も会計してやっと手に入れたうまい棒だったのです。
それを盗るなんて。
こんな無慈悲なことがありますか。
あまりにショックでチャリに乗る元気もなく、絶望感にうちひしがれてチャリを引いて歩いていたら、後ろから声をかけられた。
「ちょっとキミキミ、その自転車、ホントにキミの??」