特許を活用した商売上手の話
弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「特許を活用した商売上手の話」について説明します。
先週の「何処にもないの落とし穴」https://note.com/norio_sakaoka/n/nc80340f17af0で、「事業としての可能性を高めたいなら、他人が成功しているものを参考にして、それを改良してより良いものを作っていく方が上手く行くと思います。」と書きました。
こういったことができるのは、かなり商売上手の人です。
パナソニックの創業者であり経営の神様といわれた松下幸之助さんは、上記の手法を用いて会社を大きくされたのではと思っています。
なんせ、他の電機メーカーからは、当時の社名の松下電器をもじって「マネシタ電器」と陰口を言われていたくらいですから。
でも、これって特許法が推奨することと大体同じなんです。
特許法の第1条にはこう書かれています。
「第一条 この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」
この「発明の保護及び利用」のところが大事です。
特許権がある発明は保護します。一方、拒絶となったり特許権が抹消されたりして権利がない発明は利用してください、ということです。
つまり、他人が実施してヒットした商品のコンセプトを真似るのは、知的財産権を侵害しない範囲においては自由なのです。
逆に、産業の発達という意味では推奨されるのです。
ウオークマンがヒットして類似商品が出るのも、iPhoneがヒットして類似商品が出るのも、全てとは言いませんが概ね良いことなのです。
競合他社同士が切磋琢磨して、より良い製品を作って市場を開拓することは、まさしく産業の発達に寄与しますから。
但し、何度も言いますが、猿マネはダメです。
何故なら、特許権や意匠権がなくても、不正競争防止法に抵触する可能性があります。
何より、信義に反します。
あくまでも、商品コンセプトを真似るだけです。
もちろん、知的財産権の侵害には十分注意しましょう。
以下に説明するのは、とある経営者(以下、「A氏」とします。)の話しなので、少しぼやかして説明します。
最近、災害用の備蓄品で、避難所で使う簡易ベッドが密かにヒットしていました。
一般のユーザーの目には触れないながらも、自治体への納入で簡易ベッドを扱っている会社の業績はどんどん上がっています。
そこで、A氏が経営するA社も参入すべく、簡易ベッドの中でも売れている製品をリサーチしました。
すると、引出し等がついている収納機能付きの簡易ベッドが人気で売れていることがわかりました。
そこで、A氏は、避難所で使う収納機能付きの簡易ベッドについて、特許先行技術調査をしました。
ライバル会社の製品も入手して、知的財産権がありそうな箇所はチェックしました。
そして、特許先行技術調査で発見された文献とライバル会社の製品との欠点を研究し、より良いものを試作しました。
もちろん、他人の権利を侵害しないように注意しています。
外観も極力似せないように、独自のデザインを採用しました。
その上で、できた試作品を特許出願して自社の権利として保護しました。
ここから先は推測ですが、自社の製品にはこんな機能が付いて、こんなに便利ですよとの営業活動が可能です。
この営業活動においても、自社の製品は特許出願をしています。だから、こんなに良い技術なんです。自社はきちんと研究開発をする企業なんです。他人の権利を侵害しないよう調査もちゃんと行っています、と色んなことがアピールできます。
これって、かなり上手な経営手法ではないでしょうか。
御社でも、特許を活用した経営を実践されませんか?
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