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AFURI商標 最高裁判決について思うこと

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 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「AFURI商標 最高裁判決について思うこと」をお伝えします。

 

1.インターネットニュースにて

 2024年11月29日における複数のインターネットニュースにて、「「AFURI」巡る商標争い 最高裁、ラーメン「AFURI」社の上告認めず 吉川醸造が勝訴と報告」との見出しで記事が掲載されました。
 
 これ、以前もnoteに投稿しましたが、吉川醸造株式会社とAFURI株式会社との争いです。
 
 インターネットニュースでのコメント欄に、「AFURI社が天狗になっている、吉川醸造がんばれ」みたいな内容の投稿が多くありました。
 本当にそうなのでしょうか。
 ここでは、私見となりますが弁理士としての意見を述べてみます。

2.争いの内容

 なぜ、吉川醸造とAFURI社が争っているのか、内容をご存じない人もいらっしゃると思いますので、簡単に説明しますね。
 
 (1)吉川醸造の登録商標
 吉川醸造が所有する登録商標は、商標登録第6409633号¹です。
 「雨降」と書かれており、指定商品は「日本酒」等です。 

商標登録第6409633号


 (2)吉川醸造が実際に使用した商標
 上記の登録商標に対して、吉川醸造が使用した商標がこちらです。
 「雨降」右下に「AFURI」と記載されています。

吉川醸造が使用した商標 ※吉川醸造株式会社のHPより引用

 (3)AFURI社の登録商標
 対して、AFURI社が所有する登録商標は、他にもありますが商標登録第6245408号²です。
 指定商品に、「合成清酒」等が含まれます。

商標登録第6245408号


 AFURI社は、吉川醸造が使用した上記(2)の「AFURI」を含む商標に対して怒ったのです。

3.吉川醸造の「AFURI」商標の使用はどうなのか?

 さて、上記2.(2)の商標の使用は、AFURI社の商標権を侵害しているのでしょうか。
 審決をみると、吉川醸造は電話でAFURI社に使用許諾を得ていると主張しているようですが、その辺りの事情は私には分かりかねます。
 このため、ここでは商標に関しての事実をもとに申し上げます。
 
 この件について、侵害しているか否かは裁判の行方をみるとして、私は吉川醸造の行為が良くなかったのではないかと考えます。
 理由は、AFURI社の登録商標である「AFURI」が、吉川醸造の瓶ラベルに記載されているからです。
 
 これ、他人の登録商標を使用する行為に該当すると考えます。 

4.ネットニュースでは吉川醸造の勝訴といわれているが。。。

 一方、ネットニュースでは吉川醸造が勝ったという表現がなされています。
 これは、AFUIR社が吉川醸造の商標登録第6409633号「雨降」に対して無効審判を請求した結果、当該商標が無効にならなかったという意味での勝ちなのです。
 
 AFURI社は、吉川醸造が「雨降」を「アフリ」と呼んで商売をしていることから、自社の登録商標「AFURI」と類似であり、吉川醸造の商標は登録されるべきでなかったとして無効審判の請求をしていました。
 
 これについて、審決(無効2022-890068³)では、「雨降」は「アメフリ」または「ウコー」と読むのであって、「アフリ」とは非類似であるとして、審判請求を棄却しました(坂岡にて要約)。
 つまり、審判では、「雨降」は「アフリ」ではなく「アメフリ」であると判断されています。
 
 続いての知財高裁(令5(行ケ)10122号⁴)では、以下のように判断されております(坂岡にて要約)。
・「雨降」からは「アメフリ」、「ウコー」の称呼を生じるが、「アフリ」の称呼が生じないとはいえない。
・「アフリ」と読める余地があっても、外観及び観念の相違からして両者は非類似である。
 つまり、知財高裁では、「雨降」は「アフリ」と読めるかもしれないが、「AFURI」とは非類似だとしています。
 
 最高裁の判決はまだ読むことができないので、詳細はわかりません。 

5.他にも訴訟は係属中である

 ということで、吉川醸造の商標登録第6409633号「雨降」が無効にならなかったというだけで、他の侵害訴訟はまだ続いております。
 これらの結果がどうなるのか、注目していきたいですね。
 
 私が思うのは、AFURI社が吉川醸造の「AFURI」の使用に対して攻撃したのは、商標権者として当然のことをしただけではないかということです。
 私が同じ立場だったら同様のことをする可能性が高いですし、経営者ならばおよそ同じ考えになると思います。 

 6.今後はどうなるのか

 さらに申しますと、吉川醸造は「雨降+AFURI」の商標登録出願をしています。
 これについては、拒絶理由通知がなされ、意見書が提出された状態で止まっています。
 この出願の審査結果がどうなるのかも興味ありますね。 

商願2023-32269

 仮にこの商標が登録された場合、「雨降+AFURI」と「AFURI」は非類似であると特許庁が判断したことになります。
 もっとも、「雨降+AFURI」が登録されれば、AFURI社が異議申立てや無効審判を請求する可能性があり、この争いはまだまだ続くかも知れません。
 
 いずれにせよ、争いを防止するには、商標を正しく使用することが必要になってきます。
 このあたりのさじ加減は、知的財産の専門家である弁理士にご相談下さい。
 
 この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。

参考文献:新・注解 商標法 下巻 三山峻司 小野昌延 p1514~1520

引用
¹吉川醸造株式会社.雨降.商標登録第6409633号.
²AFURI株式会社.AFURI.商標登録第6245408号.
³無効審判.最終処分日2024年11月14日.無効2022-890068.
⁴審決取消請求事件.令和 5年 (行ケ) 10122号.
 
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)

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