特許先行技術調査の限界とは
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「特許先行技術調査の限界」について説明します。
これまで、新しいアイデアを思い付いたら、又は新規開発をする前には特許の先行技術調査をすることが大事であることは何回か述べました。
しかし、この特許先行技術調査も絶対ではなく、人がする以上漏れが生じるときがあります。
どんなときに漏れが生じるのか、これまで私が見たこと及び自らの経験などをもとに説明していきます。
1.調査自体が不適切であったとき
これは調査する側が悪いということになってしまうのですが、やはりあり得ることです。
これにもいくつかパターンがあるのでそのパターンを説明します。
(1)テキスト検索しかしない場合
調査しますといってテキスト検索のみで終わらせる場合もあるようです。
しかし、これはよろしくないですね。
テキスト検索は文字だけで検索しますので、違う技術分野の文献がヒットしたり、必要な文献がヒットしなかったりで、ノイズや漏れが多くなります。
テキスト検索だけしかしない場合、顧客には「簡単な調査」と断っておく必要があります。
弊所では、基本的に特許分類で調査しますのでご安心ください。
(2)調査する特許分類が不適切なとき
これは、私も駆け出しの頃に経験しているのですが、調査する特許分類を間違えてしまうこともあります。
この場合、およそ近い文献はヒットするのですが、本当に近い文献はヒットしないことがあります。
(3)単なる見落とし
これはビジネスモデルなどの発明のときに起きやすいと思います。
技術分野によっては図面を見て大体の判断が付くことがありますが、ビジネスモデルですと文字を読み込まないと判断できないことが多いです。
その場合、文字に一般的な表現がされているとまだわかりやすいのですが、抽象的な表現が使われていると、見落とすことがあります。
(4)調査者がその技術分野を理解していないとき
これは受注する側に問題があるといえばそれまでです。
例えば、私が医薬品の分野の調査をしろと言われても、内容がさっぱりわかりません。
こういった専門的な技術を依頼するときは、依頼する側も気を付けた方が無難です。
次に、これは仕方ないなと思われる事例を紹介します。
2.特許庁の審査で海外文献を引用文献とされたとき
引用文献とは、特許庁審査官がその出願を審査するときに抽出した、過去に公知となっていた技術文献のことをいいます。
審査官は、この引用文献を根拠に、この出願は特許になりませんと通知してくるのです。
最近は、審査官が海外文献を引用文献とすることが多くなってきました。
一方、出願前の調査では、費用の関係から国内しか調査しないことが一般的です。
すると、出願前の調査では問題ないだろうと判断したのに、拒絶理由通知で米国とかの引用文献が出てきます。
3.異なる技術分野の文献を引用文献とされたとき
出願前の調査では、基本的に出願に係る発明の技術分野しか調査しません。
しかし、たまにですが特許庁の審査で全く異なる技術分野の文献を引用文献とされることがあります。
私も、機械部品の洗浄に関する発明で、出願前の調査では似た文献はないだろうと判断し、出願したことがあります。
ところが、いざ審査では副引例としてコンパクトディスク再生機の文献を引用文献とされました。
そんなとき、なんでこんな全く技術分野の異なる文献を引例とするんだ、このアホ、ボケと罵りたくなります。実際、心の中ではボロクソに言っていました 笑
もっとも、これについては意見書で反論しました。
実際に特許庁に係属しているお客様の案件なので、具体的な内容はここで書けませんが、気になる人は数ヶ月後に公報をチェックしてみてください。
4.公開公報が発行される前の文献を引用文献とされたとき
特許出願は、出願から18月で公開されます。
それまでは、その文献は審査官しか見ることができません。
このため、出願前の調査では発見しようがなく、審査において初めて知るということになります。
特許先行技術調査での限界というか、どうしようもないと感じる主なところはこんな感じでしょうか。
皆さまも、どんなに腕が良いサーチャーに依頼しても、100%はないことをご理解ください。
ちなみに、最も安価で確実な調査は、特許出願後の審査請求だといわれています。
特許庁の審査も100%ではありませんが、一応、国のお墨付きですので。
いかがでしょうか、本記事についてご理解いただけたでしょうか。
この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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