発明発掘とは何か?

 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「発明発掘とは何か?」について説明します。

 特許に関して「発明発掘」という言葉を聞かれた人もいらっしゃると思います。
 この発明発掘について、複数の意見というか見方があるかと思いますが、私が思う発明発掘とは「新規開発した案件、又は公になっていない既存の技術から特許になるものを抽出する作業」と考えております。

 この発明発掘は、特許を取得していく上でとても大切な作業になります。
 発明発掘の出来いかんによって、その出願が特許査定になるか拒絶査定になるかが決まることがあります。

 というのも、新規に開発した技術であっても、大まかな全体像で見ると似たような発明が過去にあることが多いのです。
 何故なら、発明とは基本的に過去にある技術の改良でだからです。
 全く新規の技術がなされるというのは稀です。
 ですので、似たような技術があるのは普通なのです。

 さらに言うと、日本だけで年間約30万件の特許出願があります。
 特許制度ができてからだと、かなりの数になります。
 これ、過去の出願と似ていない発明をしろという方が無理です。

 では、どうして似たような発明で特許になるのか?
 それは、細部で過去の技術と異なるところがあるからなのです。
 100%完全なものというのは、そうそうありません。
 どうしても欠点というか課題があります。
 この課題を解決することが特許になるのです。

 そして、特許にするために細部での特徴を見出すことが必要になりますが、このときに行う作業が発明発掘なのです。
 では、発明発掘はどうすれば良いのか?を説明します。

 先ずは発明の全体像を把握します。
 このときに、発明の作用効果を考えるのは勿論ですが、先行技術調査によって発見された先行技術文献との差異についても検討します。

 次に、細部について検討します。
 このとき、例えばモノの発明なら、些細な形状にも注意を払います。
 図面に小さな段差が記載してあると、この段差は何の意味があって設けてあるのか、その作用効果は何なのか?という具合に、ありとあらゆることについて検討していきます。

 もちろん、発明者にその都度質問することもありますし、弁理士自らが検討することもあります。
 そうやって、発明に枝葉を付けて行くのです。

 そして、発明発掘ができたら、大まかな全体像を特許請求の範囲の請求項1に記載して、枝葉の部分を下位の請求項に記載していきます。
 こうすることで、請求項1は権利範囲を広く記載して、下位の請求項は狭くして記載することができます。

 その後、出願して審査請求をすると、特許庁審査官による審査がなされます。
 このとき、請求項1はダメと言われることが多いのですが、下位の請求項のいずれかは良いよと言われることがあります。
 すると、良いと言われた下位の請求項を請求項1にする中間対応をして、特許査定となります。
 (審査官の拒絶理由に納得出来なければ、請求項1で特許を主張することもあります。)

 もっとも、全ての請求項がダメと言われることもあります。
 そんなときも、直ぐには諦めません。
 全くダメというときもありますが、大抵は拒絶理由の引例となった文献(これがあるから拒絶にしますという文献)と本願発明とを対比して、請求項に別の発明特定事項を追記する作業を行うか、審査官の認定は正しくないといった主張をします。
 こうした中間対応の結果、約2/3が特許査定となります。

 特許公報(公開公報ではなく特許公報です)を読んでみると、請求項1の記載に下線が引かれているのを見ることがあります。
 この下線は、補正によって追記又は修正された箇所です。

 つまり、審査において審査官から拒絶理由通知がなされ、下線部分を追記したから特許になったということです。
 これって、逆に考えると下線部分が特許の要点であって、その他の記載部分は過去にあるものと同じと言うことです。

 従来技術と異なるのは下線部分だけということなんです。
 細かなところで特許になっているのがわかります。

 だから、特許査定にするには出願前に発明発掘をきちんとして、枝葉の部分まで発明を明確にする必要があるのです。

 この発明発掘は、大企業の場合であると発明者なり企業の知財部が終わらせていることが殆どです。
 しかし、中小企業だと担当する弁理士に頼ることが殆どです。

 いかがでしょうか?発明発掘の重要さをご理解いただけたでしょうか。
 この記事が、御社のご発展の参考になれば幸いです。

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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