クレラップに見る逆襲劇
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、前回に引き続きラップフィルムの話でして、「クレラップに見る逆襲劇」について説明します。
前回、家庭用ラップフィルム市場は「サランラップ」と「クレラップ」の2強で、他はこれらの2強の半値程度で販売されているという話をしました。
ところが、今は2強の一角を担うクレラップにも、昔は色々あったようです。
(以下、https://www.nttcom.co.jp/comzine/no056/long_seller/index.htmlを参考にしています。一部主観も入っています。)
クレラップの発売は1960年7月で、ライバルのサランラップより約2ヶ月早かったのです。
しかし、当初は冷蔵庫と電子レンジが普及しておらず、両者ともに販売は苦戦したようです。
そして、普及期になったとき、販売チャネルの違いからサランラップの方が売れ出し、一時期はラップフィルムといえばサランラップというくらい差をつけられた時代もありました。
私が子供の頃は、ラップフィルムのことを普通にサランラップと呼んでいました。他社製品であってもです 笑
それだけサランラップが強く、知名度に差がありました。
(実は、私は今でもサランラップと言ってしまいます、、、)
その結果、クレラップは売れなくなって安値競争に陥ったようです。
これは推測ですが、ユーザーにとってはサランラップの方が知名度が上ですので、頭の中でサランラップ一流、クレラップ二流といった勝手な図式ができあがっていたのではないでしょうか。
品質は変わらないのに、これは苦しいですね。
しかし、クレラップも黙ってはいません。何せ、業界初という自負があります。
その後、クレラップの逆襲が始まります。
1989年にフタにV字型の刃を取り付け、ラップフィルムを切りやすくしたクレハカット(商標登録第5627208号)(特許第2505721号、他複数の特許あり)などの改良をして、製品をリニューアルしました。
そのとき、安売りをやめて価格も上げました。
もっと見ると、クレラップの箱には色んな工夫がされています。
例えばですが、ラップフィルムを引き出すときに掴む箱の側面と上面に、細かなエンボス加工がいくつもなされています。
このエンボス加工、多数の点状であったり、幅数ミリの線状のものであったりとずいぶん多く施されています。
また、側面と上面との境である角を45度の角度に面取りして、箱を掴みやすくしています。
さらに、「きちんと切れ窓」を設けたり、引き出したラップフィルムが戻らないような戻り防止片が設けられたりしています。
細かなところを見ていくと、さらにたくさんの工夫がありそうです。
これらは、恐らく全てが特許、意匠、商標のいずれかで保護されているでしょう。
対するサランラップは、M字カットといわれる刃と、引き出したラップフィルムが戻らないようにする戻り防止片が付いていますが、箱自体の工夫はそれほど多くなさそうです。
箱のデザインも地味なように思います。
(実際はサランラップも色々な工夫はされていると思いますが、見た目で分かりませんでした。)
さらに、クレラップは2005年から「クルッ、クルッ、クレラップ~」の歌とともにおかっぱ頭の女の子が登場するCMで、さらにブランド力を向上させました。
当時、斬新すぎて私もこのCMには見入ってしまいました 笑
そうやって、クレラップは一旦は知名度がかなり低くなった状態から、現在の2強体制に戻ったのです。
これらの話し、おかっぱ頭女の子の全国CMは別として、他は中小企業でも十分可能な方法だと思います。
ユーザーが使いやすいように何らかの工夫をして、差別化を図る。
そして、その工夫を知的財産権で保護して、価格や粗利を上げていく。
こうすることで、企業の収益もブランド価値も向上しそうですね。
いかがでしょうか。
この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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