ベンチャー企業などで特許出願費用を節約する方法
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「ベンチャー企業などで特許出願費用を節約する方法」について説明します。
革新的なサービス又は商品を提供したいベンチャー企業にとって、1日でも早く特許出願をして他人への参入障壁を作ることは大事です。
この特許出願ですが、1件で済むことはまれで、殆どの場合数件以上の出願となります。
さらに、改良を加えるたびに出願が必要となることがあり、特許出願の費用だけでもかなりの額になります。
こんなとき、一時的ではありますが特許の出願費用を節約する方法があります。
それは、複数の発明を1件にまとめて出願するという方法です。
もっとも、これをするには後の分割出願を視野に入れて出願書類を作成する必要がありますし、後の分割出願までを考えるとトータルでの費用はあまり変わらないと思います。
とりあえず、今の費用を節約する方法です。
では、具体的な方法を説明する前に、前提を説明します。
・特許の出願書類に発明が書いてあれば、その記載をもとに後から出した他人の出願を拒絶できる
・補正や分割出願は、出願当初の記載からしかできない
(逆の言い方をすれば、出願当初に書いてあることは分割出願できる)
この前提からすると、複数の発明を1つの出願書類にきちんとまとめて記載してしまえば、後で分割出願ができます。
ですので、資金に余裕がないときは、とりあえず1つの出願で済ませるのです。
そして、数年後の資金に余力ができたときに分割出願をします。
但し、全く関係の無い発明を1つにすることはできません。ある程度の関連性は必要です。
例えば、Aという発明とBという発明があるとします。
これをそのまま別々の請求項に分けて書くことはできません。
・ダメな例
請求項1 A
請求項2 B
理由は、単一性といって、複数の発明には共通する又は対応する特別な技術的特徴が必要だからです。
上記のダメな例であれば、共通する技術的特徴はありません。
そこで、次に説明する2つの方法がとり得ます。
1つ目は、AとBの上位概念を探して以下の様に記載することです。
請求項1 X+A
請求項2 X+B
2つ目は、下位の請求項を上位の請求項に従属させて記載します。
請求項1 A
請求項2 A+B
どちらが良いかはケースバイケースですね。
1つ目の方法だと、請求項1のみ審査されて、請求項2は審査されない可能性があります。
これは、共通する特別な技術的特徴とはいわゆる新規性のことであり、権利範囲に影響を与えない上位概念を記載すると、必然的にXには新規性がなく、請求項1と請求項2に共通する技術的特徴がなくなるからです。
この場合、請求項2は審査しない旨と単一性違反の拒絶理由通知がなされます。
もっとも、審査に悪影響等がなければ、審査官の裁量で請求項1と請求項2の両方を審査してくれることもあります。
あと、Xの記載に気を付けないと、無駄に権利範囲を狭くしてしまうことになります。
2つ目の方法だと、請求項1と2の両方ともに審査をしてくれますが、B単体で権利を主張することができなくなります。
ですので、B単体での権利が欲しければ、やはり分割出願は必須ということになります。
いずれにしても、後で請求項2を分割出願すれば、トータルの費用は安くはなりません。
でも、今はお金がないけれど、将来はお金が入ってくる予定というベンチャー企業には使える手法だと思います。
あと弁理士目線でいわせてもらうと、複数の発明を含有しつつ、後の分割出願を視野に入れての出願書類の作成って、けっこう手間がかかって面倒なんですよね。
ですから、1つの出願といっても単価は高くなりがちです。
弁理士にもよりますが、事業が成功すれば今後もお宅に依頼しますのとの約束をして、出願時の費用をお値打ちにしてもらい、最初から複数件の出願にする方が良い場合もあります。
いかがでしょうか、ベンチャー企業などで特許出願費用を節約する方法についてご理解いただけたでしょうか。
この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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