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オリンピックで活躍する日本の技術

【稼ぐ経営者のための知的財産情報】

 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「オリンピックで活躍する日本の技術」をお伝えします。
※出願等のお問い合わせはこちらから http://www.sakaoka.jp/contact

1.2024年パリオリンピック

 この記事を書いている2024年8月3日は、パリオリンピックの最中です。
 そんなとき、同日付けの伊勢新聞に「ブランド磨き、五輪で快走」との見出しで、「アシックス業績好調」と載っていました。

 この手のニュースはインターネットなど他のメディアでも閲覧できるのですが、私は伊勢新聞を購読しているため、あえて伊勢新聞としております。

 当該記事によりますと、「陸上長距離を席巻する厚底シューズは当初、ナイキの独断場だった。」とあります。
 これ、読んでいて何だか悔しいなと思ったのは私だけではないと思います。
 というのも、ナイキの創業者は、日本の企業の技術力の高さに注目し、ナイキ創業前にアシックスの前身であるオニツカ社の代理店をしていたなどの歴史があるからです。
 
 とはいえ、同記事によりますと、「(パリ五輪の)表彰式や選手村で着用する公式ウエアはアシックスが手がけた。」「今年の箱根駅伝は(アシックスが)シェア25%に伸ばし、存在感を高めている。」とあります(括弧書きは坂岡記載)。
 日本企業が活躍するのは日本人として嬉しい限りですね。

 ということで、今回は同記事に記載されている、アシックスのシューズなどの特許を取り上げてみます。

2.ランニングシューズの特許

 伊勢新聞の記事によりますと、「リサイクルできるランニングシューズ」という文言が記されています。
 このシューズについて、「熱で膨張する接着剤を採用し・・中略・・使い終わったシューズを加熱すると分解できる」「選手団が履くシューズはこれをベースに「チームジャパン」のロゴをあしらった。」とあります。

 早速、アシックス社の特許と実用新案を見てみました。
 私が契約している特許検索データベースで見たところ、約1,400件の出願あります。
 その中で、下記の文献が該当しそうです。

 なお、以下に紹介する特許は、請求項などの記載内容を説明のために分かりやすく書いております。

 (あ)特許第5153103号 株式会社アシックス¹
 【発明の名称】熱膨張性接着剤、シューズ、及びシューズの解体方法
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-5153103/15/ja

 この特許では、請求項1に「樹脂固形分と、高誘電材と、熱膨張材とを含み、樹脂固形分は90℃以上150℃未満における貯蔵弾性率が5MPa以下である熱膨張性接着剤。」と記載されています。

 また、請求項8に、「上記の熱膨張性接着剤を用いて接着されているシューズ」が記載されております。

 さらに、請求項9に、「上記のシューズにマイクロ波を照射し、熱膨張性接着剤を膨張させるシューズの解体方法」が記載されております。

 この発明により、「熱膨張性接着剤によって接着されているので、耐久性に優れ、且つ使用時には人の動きに追従して適度に曲がり、又、廃棄時には、マイクロ波照射を行うことで、構成部材毎に容易に分離してこれを再利用することができる。」とあります。

3.他の特許は?

 他にも、伊勢新聞記事によりますと、「ランナーの走り方に合わせてパフォーマンスが向上するよう設計した厚底シューズを投入した。」とあります。
 これだけでは、個々のランナーの走り方を解析したのか、性能の良いソールを開発したのか定かではありません。
 今回は、ソールに関する特許出願の中でも新しめのものを紹介します。

(い)特開2023-104151 株式会社アシックス²
 【発明の名称】靴底および靴
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-104151/11/ja

 こちらは、まだ特許になっておらず出願中の案件です。
 この文献によりますと、「走行時において高い推進力を得ることができる靴底を提供する。」とあります。
 この発明は、靴底のうち足指の付け根あたりに反発材1を設け、その反発材がピラミッドの上部を切断したような単位構造体Uで構成されているようです。

特開2023-104151 【図15】
特開2023-104151 【図1】

(う)特開2024-63412 株式会社アシックス³
 【発明の名称】ソール及びシューズ
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2024-063412/11/ja

 こちらも、特許になっておらず出願中の案件です。
 この文献によりますと「接地時における衝撃の低減と、蹴り出し時におけるソールの過度な圧縮の抑制と、の両立が可能なソール及びシューズを提供する」とあります。
 ソール10の中に、図のような構造体102を入れているようです。

特開2024-63412 【図2】

 

特開2024-63412 【図3】

4.経営者が参考にしたいところ
 ここでは紹介しきれませんが、他にもアシックスはスポーツ用品に関して様々な特許を取得しています。

 こういった案件を眺めているだけで、その企業努力が伝わってきます。
 つまり、より良いものを作る、ユーザーのニーズに合ったものを作る努力ですね。

 自戒を込めて書いておりますが、人はついつい現状に満足してしまい、より良くしようとする努力を忘れがちです。
 自社の課題を見つけて、それを解決することが企業の進化につながっていきます。
 もちろん、課題を解決しただけではすぐに模倣されてしまいますので、解決手段を特許等の知的財産権で守ることを忘れないようにしてください。

 この記事が御社の発展に寄与することを願っております。

引用
¹株式会社アシックス.熱膨張性接着剤、シューズ、及びシューズの解体方法.特許第5153103号.
²株式会社アシックス.靴底および靴.特開2023-104151.
³株式会社アシックス.ソール及びシューズ.特開2024-63412.

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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