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古い方が良いときがある
【稼ぐ経営者のための知的財産情報】
弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、知的財産とはあまり関係ない話題でして、「古い方が良いときがある」について書きます。
(私の主観がメインですので、参考情報としてください。)
先日、お客さんと話して教えてもらったことですが、古い工作機械にも良いところがあるようです。
何が良いかというと、精度調整を一度すれば、機械の不具合が起きて部品を交換するまでは精度調整が不要とのことでした。
もう少し詳しく書きますと、古い工作機械はその土台やフレームといった基幹的な部品に使われる鋳物を、鋳造後に数年間、屋外に放置していたそうです。
すると、夏の直射日光や冬の寒さなどで鋳物が歪んで、歪みきった状態で落ち着きます。
正確には歪むというより、放置することで内部の応力が取れるといった方が良いのかも知れません。
その鋳物が歪みきった状態で加工して工作機械を製造し、さらに強度設計にも余裕を持たせているため、後から歪むことがなく、精度調整を設置時に1回すればそれでずっと使えるそうです。
一方、新しい工作機械は、緻密な強度計算をして無駄なぜい肉をそぎ落としているうえ、鋳物を数年間寝かせるといったことをしないため、後で歪むらしいです。
このため、半年か1年に1回、精度調整をする必要があるそうです。
古いものが良かったという話は、私が好きなオートバイや自動車でも散見します。
例えば、約50年前のカワサキのZ1というオートバイ、1気筒あたりのバルブ数が2つという高出力化には不利な条件ながら、市販車ベースのレースで長年活躍してきました。
理由は、エンジンの基幹部品であるクランクシャフトが頑丈で、かなりチューニングしても耐えられたからだそうです。
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※https://www.webcg.net/articles/gallery/45805#image-1より引用
エンジンの高出力化をするには、単位時間あたりのガスと空気をいかに沢山吸い込んで、それをきちんと燃焼させるかが大事です。
このため、ハイリフトカムシャフトや強化バルブスプリング、専用ピストンを組み込んで、場合によってはコンロッドも交換して、エンジンの高回転化を図っていきます。
シリンダヘッドを面研して、圧縮比を上げるのも昔はよく行われていました。
すると、ヤワなエンジンですとクランクシャフトがイカれてしまい、エンジンの故障につながります。
これが上記のZ1だと耐えられたそうです。
自動車にも似たような話があります。
こちらも約50年前の日産のL型エンジンです。
ノーマルエンジンのスペックだけを見ると大したことありません。
何せ、シリンダヘッドはシングルカムの2バルブ、さらに吸気と排気が同じ側から出入りするターンフローです。
(吸気系と排気系がエンジンの同じ側にあると、高負荷時に排気系の熱で吸気系の温度が上昇して、吸気の充填効率が下がったり、燃料が沸騰したりします。)
これだけ見ると、こんなエンジンを速くするなんて不可能かと思ってしまいます。
しかし、このエンジン、シリンダブロックが鋳鉄製で頑丈です。
ボアピッチにも余裕があり、ボアアップ(シリンダの内径を広げて排気量を増やす)が容易にできます。
下の写真を見て下さい。
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※https://head-turners.com/?cat=83より引用
L20改2.6の写真です。ということは、元々2リットルのエンジンからボアを約5mm広げていると思われますが、それでもシリンダ間のピッチには随分と余裕があります。
さらに、このL型エンジン、排気量によって複数種類あるエンジンの部品がかなり共通化されているそうです。
ですので、エンジンの種類にもよると思いますが、L型にラインナップされているディーゼルエンジンのクランクシャフトを流用することで、3.2リッターまで排気量を増やすことができ、他にも手を加えることで自然吸気ながら300馬力を狙えるとのこと。
夢がありますね、ワクワクします。
一方、最近のエンジンのシリンダブロックの写真です。
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※https://car.motor-fan.jp/tech/10018323より引用
ボアピッチが狭く、とてもボアアップなんてできるモノではありません。
勿論、最近のエンジンの方が全体的な性能は優れています。
しかし、上記の工作機械でもエンジンでも、昔ながらの余裕のある設計というか、あえて無駄なところが良かったりもしますね。
御社の身近なところにも古い機械が転がっていませんか?
もしあるなら、大事にメンテナンスしてやれば、この先もずっと活躍してくれるかも知れません。
この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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