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AFURIvs雨降 無効審判の審決はどうなった?
【稼ぐ経営者のための知的財産情報】
弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「AFURIvs雨降 無効審判の審決はどうなった?」をお伝えします。
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・AFURIvs雨降
以前の記事「AFURI商標について思うこと」で、AFURI社と吉川醸造株式会社との争いを書きました。https://note.com/norio_sakaoka/n/nc9de6878a008
・無効2022-890068
実は、この争いは商標権侵害としての裁判だけでなく、吉川醸造株式会社が権利を持つ商標登録第6409633号への無効審判(無効2022-890068)でもなされています。
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先週になって、当該無効審判の審決情報が閲覧できるようになりました。
結論から申しますと、「本件審判の請求は、成り立たない。」とされました。
つまり、吉川醸造の勝ちで商標「雨降」は無効ではないとされたのです。
(知財高裁への提訴も考えられますので、現時点では審決は未確定です。)
無効審判における両者のやりとりを見てみましょう。
AFURI社の主張は、主に以下のとおりです。
・「雨降」は「アフリ」と読めるから、AFURI社の先願商標「AFURI」と類似する。
・吉川醸造が「雨降」を「アフリ」と称呼している。
・AFURI社の商標が周知であること。
・吉川醸造からの電話で出願や使用を許諾した覚えはない、等。
これに対して吉川醸造の主張は、主に以下のとおりです。
・「雨降」から生じる称呼は「ウコー」であり「AFURI」とは非類似である。
・日本酒の需要者は蔵元についても関心を有しており、AFURI社の商品と誤認混同を起こす恐れはない。
・「AFURI」は周知ではない。
・吉川醸造の代表取締役が、電話でAFURI社の取締役に「雨降(アフリ)」の名称で日本酒を販売したい旨を伝えたところ快諾された、等。
・審決
そして、審決は以下のとおりです。
・吉川醸造の「雨降」からは「アメフリ」又は「ウコー」の称呼が生じるため、「AFURI」とは非類似である。
・「AFURI」が周知とはいえない。
・吉川醸造が「雨降/AFURI」との商標を使用していても、それは本件商標とは別の商標である。本件商標は「雨降」である。
つまり、「雨降」と「AFURI」は非類似である。
吉川醸造が「AFURI」と追記した商標を使用していても、それは別の商標であり、本件商標「雨降」とは関係ないという判断です。
無効審判ではこのように判断されました。
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審決を読んで、吉川醸造とAFURI社に電話等のやりとりについては初めて知りました。
後々このような争いに発展しないように、しっかりと証拠を残しておくべきですね。
・商標法第51条 権利者の不正使用による取消審判
話は戻り、無効審判でなく、仮にAFURI社が商標法第51条の取消審判を請求していればどうなったのか興味があります。
この第51条の取消審判とは、商標権者が故意に登録商標と類似の商標を使用した結果、他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたときは、何人も取消審判を請求することができるという規定です。
商標法第51条で取り消された事例はあまり多くありませんが、例えば、取消2008-301328があります。
これは、「マイチューブ/My Tube」という商標の商標権者が、YouTubeに似せた商標を使用した結果、取り消されたというものです。
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今回の争いの元は、吉川醸造が登録商標「雨降」の使用でなく、「雨降/AFURI」の商標を使用したことが発端です。
個人的には、「雨降/AFURI」の商標の使用は「雨降」に類似する商標であり、かつ「AFURI」と誤認混同を起こす可能性があるように思われます。
実際に、吉川醸造の後願の商願2023-32269「雨降/AFURI」は、「AFURI」に類似するとして拒絶理由通知を受けています(2023年10月15日の時点で査定は未だ)。
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また、商標権侵害の裁判は別途提訴されているので、こちらもどうなるのか興味がありますね。
引き続き、経過を見守っていきたいと思います。
何にせよ、自社の商標はきちんと登録して守りたいですね。
この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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