特許で実験結果が待てないときに使う方法
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「特許で実験結果が待てないときに使う方法」について説明します。
特許は先願主義と言いまして、同じ発明であれば1日でも早く出願した方が勝ちます。
これは、いくら先に発明していても、出願が他人より後になってしまえば負けてしまうことを意味します。
ちなみに、8年前くらいまで米国では先発明主義といって、先に発明した方が勝ちという制度が採用されていました。
しかし、これではどちらが先に発明したのか、争いが生じてしまいます。
また、争った場合もどっちの発明が先なのか、証明が難しいという欠点もあります。
このため、現在は米国も先願主義を採用しています。
さて、先願主義のもとでは1日も早い出願が大事ということはご理解いただけたと思います。
ここで、発明の大まかな概念というか、大まかなプロセスと結果はわかっているのだが、特許の審査に耐えて特許査定率を上げるには、まだまだ実験が必要なことが起こり得ます。
1日でも早く出願しないといけない。
しかし、詳細な実験にはまだ月日がかかる。
こんなとき、特許法には最適な制度が用意されています。
それは、「国内優先権」という制度です。
この国内優先権のやり方を簡単に説明しますと、以下のようになります。
1.先に大まかな内容で出願する
2.先の出願から1年以内に国内優先権を主張して出願する
3.後の出願では詳細な実験結果等を添付する
そして、国内優先権の主な効果は以下のとおりです。
1.先の出願に記載した内容は、先の出願時を基準に新規性等が判断される
2.後の出願に新たに記載した内容は、後の出願時を基準に新規性等が判断される
3.先の出願は出願から1年3月で取り下げとなる
どうでしょう、便利な制度だと思いませんか?
簡単な実例を交えてもう少し詳しく説明しますね。
例えばですね、アイスクリームの表面を焦がして、正面だけパリパリにすると美味しいという発明があったとします。
発明が完成した当初は、とりあえず職人の勘に頼って焦がせばOKでした。
しかし、特許出願をするとなると、アイスクリームの表面を焦がすための詳細な条件を詰めていく必要があります。
そうしないと、実施可能要件を満たしていないとして、又は他人のちょっとした発明を引例として拒絶査定になってしまう可能性があるからです。
でも上記の先願主義によって、1日も早い出願が必要です。
こんなとき、先ずはアイスクリームの表面を焦がすということだけを記載して特許出願をします。
そして、詳細な実験が終わってアイスクリームの表面を焦がすための条件が確立されてから、先の出願から1年以内に国内優先権を主張して後の出願をするのです。
すると、アイスクリームの表面を焦がすという最も重量な発明特定事項は、先の出願時を基準に新規性等が判断されます。
結果として、同様の出願をするかもしれない同業者より早く出願することが可能となるのです。
国内優先権って、こうやって見ると割と良い精度ですね。
欠点としては、実質的な出願は1件なのに、出願件数が2件以上になるため費用が割高になることでしょうか。
しかし、大事な発明を他人に先を越されないためと考えれば、納得できる出費だと思います。
あと、先の出願と後の出願では重複する箇所もありますので、弁理士との交渉次第では割引してくれる可能性もあります。
他の例でたまに見るのが、いわゆる個人発明家が自分で特許の出願書類を書いて出願して、後になって弁理士に依頼して国内優先権を使うことがあります。
これは、最初の出願書類が悪すぎて、審査に耐えられないということで出し直しをされるパターンです。
注意点として、このパターンは、先の出願に審査において不利になるようなことが書かれているときもありますし、弁理士にとってはやりにくく割増料金をもらいたいくらいなので、余りお勧めはしません。
いかがでしょうか、本記事についてご理解いただけたでしょうか。
この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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