医薬品業界は暗示的商標の宝庫

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　弁理士の坂岡範穗（さかおかのりお）です。
　今回は、「医薬品業界は暗示的商標の宝庫」について説明します。

　商標の機能として、誰が製造販売しているのかを需要者に知らしめる出所識別機能や、この会社なら価格が高くても良いものだろうと推測される品質保証機能などがあります。

　一方、商標の品質や効能等をそのまま表わす商標は、いわゆる記述的商標として出願しても登録されません。
　例えば、「レモン味のケーキ」や「痒みを抑える塗り薬」等の商標は、基本的に審査で拒絶されます。

　しかし、商標の品質や効能等をそのまま表わすのでなく、何となく暗示させるに過ぎない暗示的商標であれば登録される可能性はあります。
　例えば、コンピュータープログラムに「Ｍｙ　Ｄａｔａｂａｓｅ」、おでんに「まんまるおでん」等です。

　こういった暗示的商標は、需要者がその商品の品質や効能等を何となく把握することができるため、マーケティングにおいても重要視されることがあります。
　何故ならば暗示的商標は、上手くいけばその商標を見ただけで需要者が何となくその効果を期待します。その結果、売上げを向上させることができるからです。

　さて、暗示的商標が良いとわかっていても、どうやってその商標を考えれば良いのでしょうか。
　これは、他人のやっていることをお手本にして、それを真似ていくことが効果的と考えます。

　そして、お手本にするための、暗示的商標の宝庫が医薬品業界なのです。
　例えば、大塚製薬株式会社の商標を見ただけで、以下のような暗示的商標があります。

　商標登録第１６０９０３５号　カロリーメイト
　商標登録第４６３３０５５号　エネルゲン
　商標登録第５５４１６４４号　赤ちゃん思い
　商標登録第５５９９２２１号　デコボコアイ
　商標登録第５６３３３６０号　大麦生活
商標登録第５６７４０２７号　おからさん
　商標登録第５７０００６９号　ランナーズサポートショップ
　商標登録第５７０９２６８号　女子活
　商標登録第５７１０６６３号　メタラボ
　商標登録第５７７６５５１号　エネルゲン
　商標登録第５７８０８１８号　大人のフェイスシート
　商標登録第５７８０８１９号　大人のボディシート
　商標登録第５８０９６３５号　健粧品
　商標登録第５９０３７１０号　賢者の快眠
　商標登録第５９１２６９６号　ボディメンテ
　商標登録第５９３０１７９号　肌の劣化と戦うウル・オス
　商標登録第５９６２５１６号　頭皮劣化
　商標登録第５９６９２０４号　かちっとボトル

　どうでしょう、大塚製薬株式会社だけでこれだけありました。
　製薬会社は他に多数ありますので、探すとこの何十倍もあるでしょう。

　これらの暗示的商標に共通することは、ターゲットは誰なのか、ターゲットの悩みな何なのか、商品はどんな効果を有しているのか、語呂は良いかなどを指標にして考えられています。

　これらの中で、おっと思うものがあれば、自社商品に当てはめてみても良いでしょう。
　例えば、上記の中で「大人のフェイスシート」「大人のボディシート」というのが登録されています。
　すると、自社商品に「大人の○○」と付けて商標登録出願すれば、登録になる可能性があります。

　注意点としては、他社の商標が登録となっているからと言っても、自社の商標が登録になるとは限らないことです。
　これらの暗示的商標は、拒絶理由通知が来ることがけっこうありますし、場合によっては審判請求や知財高裁まで提訴して登録の可否を争うこともあります。

　また、時の経過とともに以前は登録になっていたものが拒絶になる、又はその逆も起こり得ます。
　ですので、あくまで参考にして考えることが大事です。

　こういった暗示的商標で上手く行って商品の売上げが向上するなら、商標を考える手間や出願の費用は安いものですね。

　いかがでしょうか、医薬品業界は暗示的商標の宝庫についてご理解いただけたでしょうか。
　後半は、これらの暗示的商標を参考にして、自社商品に暗示的商標を付す方法も記載しました。
　この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。

坂岡特許事務所　弁理士　坂岡範穗（さかおかのりお）
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