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煙が少ないホットプレートの知財

【稼ぐ経営者のための知的財産情報】
 
 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「煙が少ないホットプレートの知財」をお伝えします。
 
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1.ネット記事でみかけた「煙が少ないホットプレート」

 皆さまご存じかも知れませんが、「ROCKET NEWS24」というネット記事があります。
 私はこの記事がけっこう好きでして、スマホのお勧めに出たときには、たいてい読んでいます 笑
 
 このネット記事に「【ガチ検証】象印の「ホットプレート」は煙がほとんど出ない? 会社で勝手に焼肉パーティーを開いて確かめてみた」と題するものがありました。
 何のことはない、象印マホービンの宣伝記事と思われるのですが、その内容が面白いのです。
https://rocketnews24.com/2024/09/02/2308227/
 
 詳しいことは上記URLをご覧になってください。
 失礼ながら突っ込みどころが多くて、私は笑いながら読んでしまいました。。。
 とはいっても、記事の要所に、煙が少ない仕組みについて、きちんと解説してあります。
 
 仕組みを簡単に申しますと、肉などを焼くプレートに穴が設けてあり、そこから油分を落として煙を低減するとのことです。
 
 さて、私は弁理士という職業柄、このような仕組みというか工夫について、当然に知的財産権で保護されているだろうなと考えてしまいます。
 そこで、今回は「煙が少ないホットプレート」に関する知財を紹介して参ります。
 
 余談ですが、私は水筒、ポット、炊飯器の類いは必ず象印マホービン株式会社か、タイガー魔法瓶株式会社のものを買います。
 
 私の勝手な考えなのですが、魔法瓶等の専業メーカーだから悪いものがあるはず無いと思っているためです。
 実際、我が家にある約20年前に購入した象印の水筒は、未だに使えます。
 さすが、日本を代表する魔法瓶メーカーです。
 
 さらに余分な話になりますが、私の若い頃の水筒は、中瓶がガラスでした。
 このため、強い衝撃を加えると中瓶が粉々に割れてしまいます。
 当時、割れた中瓶を自分で交換していましたが、懐かしい思い出です。。。

2.煙が少ないホットプレートの特許分類

 さて、本題に戻りまして、上記のネット記事にあるようなプレートに穴が設けてあり、そこから油分を落として煙を低減するホットプレートの特許を見てみました。
 
 いつもの例で、先ずは特許分類を特定します。
 ホットプレートそのもののFIは、以下のようになります。
 この中で、太字で表わすものがホットプレートの分類です。
 
A47J 37/06 ・ロースター;グリル;サンドウイッチグリル
A47J 37/06 311 ・・プレ-ト調理用のもの
  A47J 37/06 316 ・・・加熱源と一体または組となっているもの
  A47J 37/06 321 ・・・・加熱源が電気であるもの
 
 しかし、これではホットプレート全ての文献を見ていく必要があります。
 そこで、Fタームを見てみると、以下のものがありました。
4B040 ベイキング、グリル、ロースティング
  AC01 ・焼成
  AC02 ・・網やき(←格子)
 
 EB01 ・内表面構造に特徴
  EB02 ・・被調理物収容用凹部
  EB03 ・・調理かす、油だめ用凹部、穴を有する
 
NA00 特殊機能1(煙対策)
 NA01 ・油の燃焼防止機構に特徴
  NA04 ・・油の排出機構に特徴
 
 ということで、今回はFタームで見ていきます。

3.発見された特許

 上記のFタームで検索した結果、発見された特許を以下に紹介します。
 今回は、出願人を象印とタイガーに限定しております。
 
 (1)特開2001-332 象印マホービン株式会社¹
 【発明の名称】電気焼肉器用焼き板
 上記の記事のホットプレートとは異なりますが、既に、象印から20年以上前に穴あきプレートは特許出願されていました。
 貫通孔8から余分な油や肉汁を通過させると記載されています。
 【図2】

特開2001-332号公報の図2


 (2)特開2002-238771 タイガー魔法瓶株式会社²
 【発明の名称】電気調理盤

 こちらは、タイガーから同時期に特許出願された案件です。
 これも、切除孔4cから余分な油を落とす仕組みになっております。
 【図2】

特開2002-238771号公報の図2

 【図4】

特開2002-238771号公報の図4

 上記の2件は、ともに拒絶査定となっており、特許にはなりませんでした。
 そこで、最近の特許文献を探したのですが、ロケットニュースで紹介されていた、最新のものは発見できませんでした。
 まだ、出願後18月経過しておらず、公開公報が発行されていないかも知れません。
 
 無いといっては記事にならないので、今度はタイガーの現行製品の特許を探してみました。

 (3)特許第5604949号 タイガー魔法瓶株式会社³
 【発明の名称】加熱調理器

 これ、調理プレートがすり鉢領域42になっており、そのすり鉢領域42のところに貫通孔44が設けられております。
 【図2】

特許第5604949号の図2

 これ、おそらく下記URLの製品に関する特許だと思われます。
https://www.tiger-corporation.com/ja/jpn/product/others/cqd-b301/

4.意匠はどうなっている?

 さらに、意匠も見てみました。
 というのは、このようなホットプレートの穴の形状は、デザインでも保護できるからです。
 特に、穴の形状が機能を発揮しているようなときは、意匠で保護することで他人の模倣を防ぐことが期待できます。
 
 (1)意匠登録第1773869号 象印マホービン株式会社⁴
 【意匠に係る物品】ホットプレート

 残念ながら、穴あきプレート自体の意匠は、少し古いものしか発見できませんでした。
 そこで、ホットプレート全体の意匠を紹介します。
 こちらは、出願日が令和6年3月27日と最近です。

意匠登録第1773869号の斜視図


 おそらく、ロケットニュースで紹介された象印の製品だと思われます。
 詳しくは下記URLをご覧ください。
 https://www.zojirushi.co.jp/syohin/kitchen/hot_plate/ea-ha/
 
 (2)意匠登録第1432730号 タイガー魔法瓶株式会社⁵
 【意匠に係る物品】ホットプレート用プレート

 タイガーの穴あきプレートも紹介しておきます。
 上記の特許で紹介したものを意匠でも保護していますね。 

意匠登録第1432730号の斜視図

5.考察

 これらの特許と意匠をご覧になって、どのように思われたでしょうか。
 ホットプレート自体、原理が簡単であり、普通ではなかなか改良点を思い付かないと考えます。
 また、油などを落とす穴あきプレートも、既に20年以上前から存在しています。
 
 しかし、象印とタイガーの両者に共通することは、少しでも良いものを作っていることです。
 言い換えれば、常に課題を見つけ、それを解決しています。
 そして、できたものを知的財産権で保護します。
 そういった流れができていますね。
 
 このようなサイクルが、企業の成長を促すのではと考えます。
 
 一方、中小企業では、最初から「知財が~」といってもなかなか馴染みません。
 先ずは、身近なところの改善、課題の解決から進めてみる方が良いのかもしれません。
 
 この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。

引用
¹象印マホービン株式会社.電気焼肉器用焼き板.特開2001-332.
²タイガー魔法瓶株式会社.電気調理盤.特開2002-238771.
³タイガー魔法瓶株式会社.加熱調理器.特許第5604949号.
⁴象印マホービン株式会社.ホットプレート.意匠登録第1773869号.
 ⁵タイガー魔法瓶株式会社.ホットプレート用プレート.意匠登録第1421286号.

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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