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他人の特許を使う
【稼ぐ経営者のための知的財産情報】
弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「他人の特許を使う」について説明します。
事業を進めていく中で、自社開発ができるにこしたことはないのですが、他人の特許を使う方がよい場合があります。
具体的には、開放特許といわれるものを、契約によって自社が実施できるようにするのです。
つまり、他社が開発した技術を自社製品に使用するのです。
こういった取り組みは、INPIT(工業所有権情報・研修館)が以前からデータベースとして提供しております。
https://www.inpit.go.jp/katsuyo/db/index.html
また、民間では私と同期合格の富澤弁理士が、PATRADEという会社を設立して活動されています。
https://patrade.jp/company/
富澤先生、本もいくつか出版されてやり手ですね。
最近のネットニュースでもキューピーの特許を福岡県大牟田市の企業が使用した事例が紹介されていました。
この事例は、根菜類を柔らかくして高齢者が食べやすくするというものです。
https://www3.nhk.or.jp/fukuoka-news/20220822/5010016951.html
これらの開放特許を使う利点を以下に述べます。
1.自社での開発費と特許出願費用を節約できる
新たなものを作るには、けっこうな手間と費用がかかります。
また、その開発品を特許で権利化しようとしても、やはり費用がかかってきます。
こういった初期投資の額を抑えることが可能となります。
2.他人の特許からヒントを得られる。
中小企業がいきなり新商品の開発をしろといわれても、どうすればよいの?状態におちいることがあります。
そんなとき、開放特許を眺めているだけで、この特許は自社の事業に応用できそうかも、と気付くときがあります。
一旦、そういったことに気付くと、あとは芋づる式に色んなアイデアが出てくることが多いかと思います。
3.技術指導をしてもらえる可能性がある
これは契約次第と思いますが、単なる特許情報の提供だけでなく、ノウハウ的なことも教えてもらえる可能性があります。
すると、相手の優れた技術を吸収することができ、自社技術の向上や自社技術者の啓蒙に役立ちます。
もちろん、欠点もあるでしょう。
以下に述べます。
1.ライセンス料がかかる
これは当然と言えば当然です。
このライセンス料、色んな方法がありまして、お互いの契約次第で変わってきます。
一般的な例を挙げますと、およそ以下のとおりです。
・イニシャルコスト
契約時に支払う金銭で、数十万円のことが多いと思われます。
・ランニングコスト
売り上げの一部を支払うもので、3~5%くらいが多いと思います。
企業の最終的な利益率は数パーセントであることが多く、上記の費用を支払っても利益を上げるには、高付加価値商品でないとライセンス料だけで利益がなくなってしまいます。
2.他社も実施できる可能性がある
これも契約次第となりますが、大口の契約でないと独占的に実施させてもらうことは難しいのではないでしょうか。
契約に地域とか業種などの縛りは入れられても、自社だけが独占的というのは難しく、他社にも実施されてしまう可能性があります。
3.特許の存続期間が短い場合がある
特許は出願から最長20年で権利が抹消されます。
特許は一般的に出願から4年くらいで権利化され、その後、特許権者の中で寝かされます。
そして、不要と判断されたものが開放特許になることが多いと思われます。
すると、特許の存続期間までの年月が短くなり、結果的に特許を使用できる期間が短くなります。
もっとも、これは裏を返せば利点となるわけで、特許権が消滅すればその後のライセンス料は不要となります。
つまり、特許の抹消後は金銭不要で大企業等の技術が残る訳です。
いかがでしょうか。使い方によってはあり得る話だと思います。
特に、リソースが限られている中小企業に向いていると考えます。
この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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