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ローテク業界にこそチャンスあり?
【稼ぐ経営者のための知的財産情報】
平成23年より桑名市で特許事務所を開業しております。
東海地方で特許出願をお考えなら坂岡特許事務所にお任せ下さい!
弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「ローテク業界にこそチャンスあり?」をお伝えします。
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1.ネットニュースにて
少し前のネットニュースにて、「橋は塗るより“はがす”ほうが遥かに大変!」というタイトルで、橋の塗料を「はがす」作業に特化したという「自律走行型ブラストロボットシステム」の記事が掲載されていました。
実は、この原稿を書いている時点で既に当該ネットニュースは閲覧不可能になっておりまして、記憶だけで書いております。。。
2.塗装を剥がす作業とは
塗装を剥がす作業は「ケレン」と言われます。
なぜ私が「ケレン」という作業を知っているかと申しますと、若いときに副業で1人営業をして、一軒家の塗装仕事を取ってきて、日曜日に友人の塗装職人と一緒に塗装をしていたことがあるからです。
このケレン作業、比較的簡単にできるものから大がかりなものまでありまして、そのとき私がやっていた作業は負担の少ないものでした。
実際の作業としては、マジックロン(登録商標)と呼ばれる不織布研磨材を使って浮いた塗膜を除去したり、古い塗膜の表面や錆の表面をある程度削ったりしていました。
一方、友人の塗装職人が本職でやりたくない仕事として挙げていたのが、歩道橋などの1種ケレンでした。
この1種ケレン、細かな粒を鉄骨に吹付けて、金属の表面が完全に露出するまで塗膜を剥がすのです。
私も、化学工場に設置してあるサイロの中に潜って、電動スクレーパーでサイロ内面にこびりついた謎の白い粉を落とす作業をやったことがあるので、1種ケレンの過酷さはおよそ想像が付きます。
養生された狭い空間にヘルメットを被ってカッパを着込んで、ゴーグルとマスク(当時はタオルを口の周りに巻いたものかもしれません)を装着して、耳の穴の中まで埃だらけになりながら作業をするのだと思います。
まさしく、塗料は塗るより剥がす方が大変です。
3.自律走行型ブラストロボットシステム
この大変さを軽減するために、ネットニュースでは「自律走行型ブラストロボットシステム」を開発したとありました。
(1)おそらく、当該ロボットに関する発明は、特開2023-057056¹のことかなと思っております。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2023-057056/11/ja
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この発明は、第1台車4に取付けられたアーム3の先端に設けられるブラストノズル5から研磨材7を噴出しつつ、第1台車4を移動させて橋の塗膜を剥がしていくものです。
残念ながらこの出願は拒絶査定となったようですが、省力化と生産性向上に大きな効果があると考えます。
(2)他にも似たような技術として、特許第7158555号²があります。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7158555/15/ja
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この特許は、橋桁の上を脱輪せずに走行しつつ、高圧水で塗膜や錆を除去する装置に関するものです。
4.これらの特許をみて思ったこと
上記の特許をご覧になってどのように思われたでしょうか。
私は、これまで人手のみに頼っていた作業をロボット化することで、生産性の向上と人手不足の解消に役立つのではと考えました。
また、上記の文献を抽出する過程で感じたのが、大手企業と中小企業の共同出願が多いように思うのです。
これは、大きな現場の人手不足を解消するため、大手企業の資金力と中小企業の小回りの良さを組み合わせたということではないでしょうか。
ローテク業界の場合、最初から生産性向上や省力化は無理と諦めていることも多いと考えます。
しかし、視点を変えて省力化を図ることができれば、大きな武器になると思われます。
さらに申しますと、紹介した上記の装置は特段ハイテクという訳ではないのです。
多少、メカトロニクスができる会社であれば、汎用部品とシーケンサーを用いて、足りないものは溶接で部品を作って製作できそうだなと感じました。
これ、私見ですが大きなチャンスだと思います。
これまで、当たり前のように人手に頼っていた作業を、ほんの少しでも良いので自動化または機械化していくことで、競合他社に対してアドバンテージを得ることができそうです。
既に機械化されているものも、より良く改造することで他社との差別化を図ることができます。
御社でも、生産性向上のために何らかの装置を作製されてみてはいかがでしょうか。
この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
引用
¹株式会社フルセイルソリューションズ,久保田塗装株式会社.ブラストロボットシステム、及びブラスト加工方法.特開2023-57056.
²川田テクノロジーズ株式会社,川田建設株式会社.橋梁の床版取替工法に適用される鋼桁ケレン装置およびその装置を用いたケレン方法.特許第7158555号.
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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