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従業員の謀反による被害の防止
【稼ぐ経営者のための知的財産情報】
弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「従業員の謀反による被害の防止」をお伝えします。
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1.従業員の謀反による痛手
昨今、人手不足といわれております。
そんなとき、従業員が退職するのは企業にとって頭の痛い問題です。
それが、謀反を起こすとなると、もっと深刻になってきます。
謀反とは、例えばですが、独立して競業関係にあるような会社を興すようなことです。
酷いときには、在籍していた会社の屋号を勝手に使うなんてこともあります。
他にも、製造方法を持ち出してライバル企業に転職することもあり得ます。
こういったことをするというかできる人は、それなりに優秀な人が多いと思われ、元々在籍していた企業にとってはかなりの損失になってきます。
2.謀反を防止する方法
従業員の謀反を防止する方法としては、先ずは従業員が退職しにくく、愛社精神を持って働けるような状態を構築することが重要だと考えます。
例えば、適正な報酬と福利厚生、職場環境の改善、従業員の意見の尊重などです。
とはいっても、これらは一般的な話です。
そのような話はその道の専門家に任せるとして、ここでは知的財産権の面から見ていくことにしますね。
3.秘密保持契約の締結
これはある程度以上の企業では普通に行っていると思われます。
入社時や退職時に署名する書類で、業務で知り得た内容を他所に漏らさないという、誓約書みたいな感じです。
退職後、数年間は競合他社に勤務しないという内容の書面もあったりします。
これらの書面は、署名してもらうだけでなく、従業員に対する定期的な説明や教育も必要かと考えます。
但し、署名はしたけれど、約束を破る人は居ると思います。
優秀な人は、ヘッドハンティングで従来の2倍近い報酬を提示されることもあるようなので、それを断るほどの愛社精神を持ってもらうのも難しいです。
そのような場合は、次に述べる知的財産権での保護が有効ではないでしょうか。
4.知的財産権での保護
(1)特許・意匠
これは、自社の製品を特許や意匠で権利化しておき、他人が同じものを実施できないようにしておくことです。
自社の業務を守るという意味では、元従業員対策だけでなく、上手く行けば業界全体に効果を発揮することができます。
注意点として、特許と意匠には存続期間というものがありまして、永久には保護できません。
そりゃそうですね。
白熱電球に現在も特許権が残っていたら、経済活動に支障をきたします。
存続期間は以下のとおりとなっております。
①特許は出願日から20年
②意匠は出願日から25年
但し、権利を維持するには、毎年の年金(登録料)を納付する必要があります。
(2)商標
これも、自社の屋号や商品名を商標で権利化することで、他人が同一類似の商標を使用できないようにするものです。
こちらも、業界に広く効果を発揮しますね。
たまにですが、これまで商標権は不要と思っていたのに、突然権利行使されたとか、他人に自社の商標を横取りされたといわれる人がいらっしゃいます。
これ、言い方は冷たいですが、癌になってから生命保険に入りたいと言うのと同じです。
このようにならないようにしてくださいね。
ちなみに、商標は10年毎の更新で、半永久的に権利を維持できます。
(3)営業秘密
これは、ノウハウなどを営業秘密として管理することです。
営業秘密は、基本的に①秘密管理性、②有用性、③非公知性を満たせば成立します。
①秘密管理性とは、その名のとおりで情報が秘密として管理されていることです。
②有用性とは、事業活動に有用な技術上、または営業上の情報であることです。
③非公知性とは、その情報が公然と知られていないことです。
営業秘密は、製造業ではもちろん重要ですが、サービス業であっても運用可能です。
例えば、顧客リスト、仕入れ先リスト等も営業秘密として管理が可能と考えます。
謀反を起こす従業員にとって、顧客リストや仕入れ先リストは喉から手が出るほど欲しいものです。
2022年9月に、「かっぱ寿司」の社長(当時)が、元の勤務先である「はま寿司」の仕入れ原価等を不正に入手した等で逮捕されたという話は、皆さまもご存じだと思います。
但し、営業秘密として管理することは、けっこうなコストがかかってきます。
従業員数が増えるとかなり大変だと思いますので、この点、注意が必要です。
5.まとめ
上記の文を読まれてどう感じられたでしょうか?
特許・意匠・商標は、会社や業種によっては不要であることもあり得ます。
一方、秘密保持契約や営業秘密は、ある程度の規模以上の会社になると、けっこうな確率で必要になってきそうですね。
従業員に謀反を起こさせないようにするため、謀反があっても被害を防止するために、対策を検討されてみてはいかがでしょうか。
そのときは、知的財産の専門家である弁理士にもご相談ください。
この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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