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蚊取り線香の特許

【稼ぐ経営者のための知的財産情報】

 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「蚊取り線香の特許」をお伝えします。

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1.経済ウイークリーの記事

 私が購読している伊勢新聞の2024年10月25日付け「経済ウイークリー」に、「大日本除虫菊(KINCHO)」に関する記事が掲載されていました。
 もっとも、この経済ウイークリーは、各地の新聞に掲載されているようですので、皆さまも地元の新聞でご覧になったかと思います。

 この記事によりますと、大日本除蟲菊株式会社は、「和歌山県のミカン農家出身の上山英一郎が1885年(明治18年)に地元で上山商店を創業したのが起源だ。」とあります。

 さらに同記事によりますと、「上山は除虫菊を蚊の駆除に使えないかと考え、線香に練り込むアイデアを思い付く。まず棒状の蚊取り線香を販売。妻の助言で効果が長持ちする渦巻き型に改良し、1902年(明治35年)に発売した。」とのことです。
 ※上記括弧書きの和暦は坂岡記載。

 蚊取り線香には、私も子供の頃にお世話になりました。
 当時、私が暮らしていた家は、エアコンなどありませんでした、
 1階には殆ど窓がなくて網戸もありません。
 2階にもガラス窓が殆どなくて、障子の外側に廊下を挟んで木製の雨戸だけが設けられていました。
 網戸というものが存在しない家だったのです。

 このため、夏になると2階の雨戸と障子を開けっぱなしにして寝ていました。
 蚊帳を使うときもあったのですが、いくら蚊帳があっても、蚊が周りにたくさんいれば、人の出入りのときに中に入ってきますので、やはり蚊取り線香は焚いていました。

 ということで、今回は蚊取り線香の特許をみてみたいと思います。

2.蚊取り線香の特許分類

 いつものとおり、先ずは蚊取り線香の特許分類を特定します。

 FIでは、下記の特許分類が該当しそうですが、いまいちな感じです。
 A01N 25/20 101 ・・燻煙剤

 そこで、Fタームもみてみますと、ドンピシャのものがありました。
 4H011 DE05 ・・・・蚊取線香

 次に、このFタームを用いて特許を検索するのですが、上記のとおり、蚊取り線香の発祥は明治時代です。
 弊所にて契約している有料の特許データベースでは、昭和46年以降のものしか検索できません。

 こんなとき、INPITが提供しているJプラットパットが役立ちます。
 Jプラットパットでも、テキスト検索はおよそ昭和46年以降のものしかできませんが、特許分類での検索であれば明治時代のものから検索可能です。

 さて、4H011 DE05 ・・・・蚊取線香で検索してみると、1108件ヒットしました。

3.蚊取り線香の初期の特許

 ここでは、先に蚊取り線香に関する初期の特許をみていきます。

(1)蚊取り線香の初めての特許
 上記特許分類でヒットしたうちの最も古い文献は、特許第825号¹でした。
 出願が1889年(明治22年)となっております。
 特許権者は「伊藤 幹」という人です。

特許第825号

(2)その他にも特許文献を探して、同時期の「上山英一郎」さんの出願を探したのですが、見当たりません。
 同じ姓の「上山彦松」さんの公報があったのですが、この「上山彦松」さんは「ライオンケミカル株式会社」の前身となる企業の創業者でした。
https://www.lionchemical.jp/trivia/除虫菊伝来とライオンケミカルの歴史 -前編-

 この上山彦松さんの文献は、登録実用新案第17239号²でして、1910年(明治43年)の出願でした。

登録実用新案第17239号

(3)さて、上記のとおり同時期での「上山英一郎」さんの出願が見つかりません。
 大日本除蟲菊株式会社のHPには「1900年 明治33 渦巻型蚊取り線香発明特許出願」とあるのですが、私では探すことができませんでした。
https://www.kincho.co.jp/kaisha/ayumi/index.html

 特許文献について、紙での保存媒体があるところに行って探したら見つかるかも知れませんが、そこまでの勇気?が私にはありませんので断念します。

 代わりに、以下の文献³を紹介します。
 これは、線香が渦巻きでなくつづら折りになっております。
 もっとも、この出願は1914年(大正3年)にされていますので、上山英一郎さんの出願よりずっと後ですね。

登録実用新案第36047号
登録実用新案第36047号

4.蚊取り線香の最近の特許

 さて、上記では古い特許をみていきましたが、新しい特許もあります。

(1)特許第7474916号 大日本除蟲菊株式会社⁴
【発明の名称】蚊取線香
 この特許は、蚊取り線香の本体2に着火剤3を付けたものであって、着火時の匂いを抑えたものです。

特許第7474916号【図1】

 最近では、こんな便利なものがあるのですね。
 私の感覚では、マッチに火を灯して蚊取り線香に火を付けるのが当たり前だったのですが。。。

 私が子供の頃、マッチが燃える尽きるまでに蚊取り線香に火が付くかどうかが勝負どころで、慣れるまではマッチを2本以上使っていました。
 今ではそんな心配も無用です 笑

 技術の進歩というか工夫によって、より良いものができるということですね。素晴らしいです。

 皆さまの周りでも、今あるものの改造でとても良いものができるかも知れませんね。
 この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。

引用
¹伊藤 幹.蚊遣香.特許第825号.
²上山彦松.蚊取線香.登録実用新案第17239号.
³野村七兵衛.蚊取線香.登録実用新案第36047号.
⁴大日本除蟲菊株式会社.蚊取線香.特許第7474916号.

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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