中規模農家に最適!?農業用機械の特許
【経営者のための知的財産情報】
弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「中規模農家に適している?農業用機械の特許」をお伝えします。
※出願等のお問い合わせはこちらから http://www.sakaoka.jp/contact
1.前回・前々回の記事
以前のnote記事では、農業用ロボットの特許について書きました。
https://note.com/norio_sakaoka/n/nbcb921e9bde1
農業用ロボットはとても良いのですが、大規模農家でしか導入できそうもないという課題がありました。
そこで、別のnote記事では、小規模農家であっても使えそうな生産性向上ツールの特許を紹介しました。
https://note.com/norio_sakaoka/n/nbded9ecb95f4
今回は、これらの中間を取って、中規模農家に最適と思われる農業用機械の特許を紹介します。
最初にお断りしておきますが、私は農業未経験ですので、もしかしたら内容がズレているかも知れません。
この点、ご容赦ください。
2.中規模農家で使用できる機械とは
中規模農家で使用できる機械とは何だろうかということで、私が勝手に考えました。
先ず、農業用機械の特許出願を見てみると、専用機がけっこうあります。
例えば、下記に示す長ネギ専用の収穫機械などです。
特許第7453113号 ヤンマーホールディングス株式会社¹
【発明の名称】ねぎ収穫機
この発明は、自走式のねぎ収穫機1でありまして、ねぎを掘り起こし、搬送部26で後方に搬送し、土を落とすものです。
これ、専用機ですので効率は良さそうです。
しかし、専用機となるとけっこうな規模の農家でないと、機械代だけで利益が飛んでしまいますね。
専用機ですから、他の用途に使用できません。長ネギ専用なのです。
すると、長ネギだけでかなりの面積を作付けしていないと、コスト的に厳しいですよね。
私なりに考えた結果、一般的なトラクターの出力軸(PTO)と三点リンクに接続して使用する機械が、中規模農家に適しているのではと思いました。
トラクターに接続する機械ですと、個別のエンジンや走行装置が不要になります。
また、トラクター自体を様々な用途に使用することができます。
つまり、トラクター1台+用途に応じたアタッチメントで、様々な作物に利用可能となる訳です。
使い勝手は専用機に劣ると思いますが、汎用性は優れています。
ということで、今回は、トラクターに接続できる農業用機械の特許について紹介します。
3.特許分類を決める
さて、例によって検索する特許分類を決めていきます。
作物別に見るとFタームに以下のものがありました。
テーマコード 2B072 収穫機本体
AA00 掘取り対象物(収穫作物)
AA01 ・馬鈴薯
AA02 ・甘藷
AA03 ・玉ねぎ
AA04 ・大根
AA05 ・ビート
AA06 ・ごぼう、長芋
AA07 ・レンコン
AA08 ・長ねぎ
AA09 ・落花生
AA10 ・その他
今回は、これらの中から「AA08 ・長ねぎ」を見てみます。
4.抽出された特許文献
さて、長ねぎの収穫機の文献をみてみますと、けっこうな割合で上記のような専用機が出願されています。
これらの中から、トラクターに接続するタイプの特許をいくつか紹介します。
(1)特許第4570258号 レンコー電機株式会社²
【発明の名称】ネギ堀機
この発明は、ネギの根の下に入れた鋤31を前後方向に揺動させ、さらに鋤31の後方に設けられたホーク41を振動させることで、土を柔らかくするのみでネギNを土中に残したままとする機械です。
これにより、ネギNは掘り取られずに、畝の土の中に立ったまま残り、簡単に抜き取れるとあります。
(2)特許第3574797号 新井 一一³
【発明の名称】掘取機
この発明は、1つのアタッチメントで複数の玉ねぎ、ねぎ、じゃがいも等の数種類の農作物に対応できるようにしてあります。
詳しくは、掘り起し部1によって農作物を掘り起し、複数本の細長材5によって構成される支持部4で土を落とし、側壁7で農作物を機械の真後ろに落としていくものです。
ここで、細長材5同士の隙間を小さくする補助支持材6を着脱自在に設け、玉ねぎ、じゃがいも等の落下しない作物は補助支持材6を外し、ねぎやゴボウ等の隙間から落下するような作物のときは補助支持材6を装着して使用します。
いかがでしょうか。
これらのトラクターに接続する機械では、専用機と比較して販売価格が抑えられそうです。
その結果、中規模農家においても採用できるのではないでしょうか。
特に、上記(2)で紹介した発明は、複数の農作物に使用可能であり、汎用性がありますのでより導入し易いと考えます。
弊所でも似たような出願をいくつか代理したことがあります。
このような農業用機械で生産性が向上し、日本の食料自給率が少しでも向上するとよいですね。
この記事が御社の発展に寄与することを願っております。
引用
¹ヤンマーホールディングス株式会社.ねぎ収穫機.特許第7453113号.
²レンコー電機株式会社.ネギ堀機.特許第4570258号.
³新井 一一.掘取機.特許第3574797号.
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
※自社の技術の権利化をお考えの人のお問い合わせはこちらから👇
http://www.sakaoka.jp/contact
ホームページ http://www.sakaoka.jp/
YouTube https://www.youtube.com/channel/UCbd1ApyZxN-PsVUn3XRSS-Q
Facebook https://www.facebook.com/profile.php?id=61561703544400
Twitter https://twitter.com/sakaoka
※Facebookページが2024年7月より新しいものになりました。