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警告書が届いても慌ててはいけない

【稼ぐ経営者のための知的財産情報】
 
 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「警告書が届いても慌ててはいけない」をお伝えします。
※出願等のお問い合わせはこちらから http://www.sakaoka.jp/contact
 

1.警告書が届いたら

 知財総合支援窓口、商工会議所、それから弊所の顧客からの相談を何件も受けていると、たまに警告書が届いたといわれることがあります。
 
 受け取った側からすると寝耳に水となって、慌てていることが多いようです。
 でも、ちょっと待ってください。
 落ち着いて考えると理由のない警告書である場合もけっこうあるのです。
 つまり、相手の勘違いということです。この理由のない警告書に素直に応じてしまうと、丸損してしまいます。
 

2.過去に見たとんでもない警告書

 では、どんな警告書があったのか、守秘義務に反しないよう適度に改変してお伝えします。
 
(1)商標の記述的部分に基づく警告
 前提として、その商品やサービスの品質や効能等をそのまま表わすに過ぎない商標は、記述的商標として登録されません。
 例えば、指定商品「コーヒー」に商標「炭焼焙煎」は、出願しても製法を表わしているに過ぎないとして拒絶されます。
 
 一方、一部に記述的商標が含まれていても、全体として識別力があれば登録され得ます。
 例えば、商標の頭に何らかのロゴマークを付して、商標「(図形)炭焼焙煎」と出願すれば登録され得ます。
 
 こういったことを知らない人が商標「(図形)炭焼焙煎」で商標権を取得してしまうと、「炭焼焙煎」と名乗っている全国の珈琲店に警告をしてしまうということが生じます。
 勿論、こんな警告書は無視しても構いません。
 
(2)無効理由を有する商標権に基づく警告
 とある地方の農産物の方言が、そのまま商標登録されてしまったことがありました。
 例えば、熊本では椎茸のことを「なば」というらしいですが、指定商品「椎茸」に商標「なば」が登録されてしまったと思ってください。
 地元の人からすると、椎茸を売るのに「シイタケ」と表示したら、商標権侵害となるようなものです。
 
 これは、本来登録されるべきでない商標ですので、無効理由を有することになります。
 無効審判は、商標が登録されてから5年経過すると請求できないことがあるのですが、このような場合は請求できます。
 
 しかし、商標権者はそんなことをお構いなしに権利行使を続けていきます。
 権利行使された側も、地域の小さな観光客相手の店ばかりですので、どうすればよいのか分からず、言いなりになってしまったところもあるようでした。
 こういった場合も、きちんと反論すれば相手は何も言えなくなってしまいます。
 
(3)特許の従属項のみの記載に基づく警告
 先ず、従属項について説明しますね。
 従属項とは、特許請求の範囲に記載されている請求項のうち、他の請求項に従属している請求項をいいます。
 逆は独立項です。
 
 例えば、以下のような請求項です。
 請求項1 伸縮機構を備える台車。(独立項)
 請求項2 キャスターをさらに備える請求項1に記載の台車。(従属項)
 
 そして、特許は独立項の内容を、他人が全て実施すると侵害となります。
 一部だけだと侵害にはなりません。
 上記の場合、「伸縮機構を備える台車」を実施すると侵害となります。
 一方、「キャスターを備える台車」を実施しても侵害ではありません。
 
 今回の場合、「キャスターを備える台車」を実施しているから侵害だと警告してきたのです。濡れ衣ですね。
 こんな警告にも従う必要はありません。
 
(4)実用新案権による誤った警告
 最後の事例です。
 これは、私が警告をしようとしている側から相談を受けて、寸前で止めさせた事例です。
 相談者からの情報によると、装飾品で実用新案権を持っており、他県の業者が似たようなものを販売しているそうです。
 警告書を出すために、とある士業に依頼して準備が進んでいるとのことでした。
 
 そこで、技術評価書はどうでしたか?と聞いたところ、何それ状態でした。
 実用新案は、特許と違って無審査で登録されますので、他人に技術評価書を提示した警告書を送った後でなければ、権利行使ができないという決まりがあります。
 これに違反した後に、当該実用新案権が無効となってしまえば、逆に実用新案権者側が損害を賠償しなければならなくなります。
 
 さらに驚くことに、その実用新案権は、毎年納めるべき登録料が未納で、2年前に権利が抹消されていたのです。
 
 こういったことの確認は弁理士にとっては基本中の基本であり、未確認なんてことはあり得ません。
 相談を受けた私が何それ状態になってしまいました。
 

3.知財に関する相談は弁理士に

 失礼を承知で言いますと、法律系資格の王様である弁護士さんでも、自らの専門分野以外のことは間違えたことを言う人がたまにいます。
 知財に関することは、先ず弁理士に相談していただけると幸いです。
 弁理士又は弁護士以外に知財の警告書関係の業務を依頼すると、非弁行為になってしまうおそれもあります。
 
 といった感じで、警告書が来ても先ずは事実関係を確認して、本当に侵害しているのかの確認が重要です。
 仮に、侵害に該当していても、弁理士に相談することで損失を抑えることができる場合があります。
 警告書を受け取ったら落ち着いて、先ずは弁理士の意見を聞いてみることをお勧めします。
 
 いかがでしょうか?
 この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
 
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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