商標の拒絶理由によっては安心することもある
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「商標の拒絶理由によっては安心することもある」について書きます。
先日、株式会社ドワンゴから、「ゆっくり実況」「ゆっくり解説」「ゆっくり劇場」の商標登録出願において、特許庁審査官から拒絶理由通知がなされたことを歓迎する旨のツイートがなされました。
https://twitter.com/nico_nico_info/status/1626066367865815043
一般的には商標登録出願が拒絶されると色んな意味で嫌なのですが、ここでは歓迎するとなっております。
どういうことかと申しますと、その拒絶理由の内容がドワンゴの思惑と一致したからです。
一般的な出願で、拒絶理由通知の内容が多いのは以下の2つです。
1.第3条1項各号
これは、識別力がなく他人と出所を区別できない商標になされるものです。
例:薬に「よくなる」、鮎に「天然鮎」、数字だけの商標「123」
2.第4条第1項第11号
これは他人の先願商標に類似しているときになされるものです。
例:先願商標「アリナミン」に対し「アリマミン」
これらのうち、2.の第4条第1項第11号が通知されると嫌ですね。
何故かというと、審査官の主張を覆さないと他人の登録商標を侵害しているおそれがでてくるからです。
しかし、1.の第3条1項各号では、自らが独占的に使用できないというだけで、基本的に誰が使用しても文句を言われない商標ということを、特許庁が見解として示していることになります。
ドワンゴの話に戻しましょう。
1年くらい前に「ゆっくり茶番劇」という、誰もが自由に使用していた(と思われる)商標が一個人に登録され、けっこうな話題となりました。
「ゆっくり茶番劇」では世間の非難?とドワンゴによる無効審判請求もあって、商標権者が自ら商標権を放棄する結果となりました。
しかし、また同じようなことが起きるとも限りません。
そこで、ドワンゴが「ゆっくり・・・」の中で主要と思われる商標を自ら出願したと思われます。
その結果、第3条1項各号に該当する旨の拒絶理由通知がなされ、特許庁から誰もが使用できる商標であるから登録できないとの見解がなされたのです。
だから、拒絶理由通知がなされたのにもかかわらず、ドワンゴからは歓迎する旨の発信がなされたと推測します。
ドワンゴとしては登録されたらされたで、商標権自体は維持しながら自由に使って良いよという姿勢をとるつもりだったのでは?と勝手に思っております。
もっとも、仮に登録されたら「ゆっくり・・・」のあらゆる商標を登録しなければならず、それはそれで困るとは思いますが。
これらの事例を中小企業の例に当てはめてみましょう。
実は、第3条1項各号に該当していても、図形等と組み合わせることで商標登録することが可能です。
例えば、薬に「よくなる」という商標について、何らかの図形と一緒にしたデザイン画像として出願すれば、登録され得るのです。
すると、他人は「よくなる」という商標を使用すると侵害になるのではと思い、使用を控える可能性が出てきます。
(ここ、1つ目のポイントです)
逆に、あなたがその他人に該当する場合、あえて「よくなる」を文字のみで商標登録出願をしてみるのです。
その結果、拒絶理由が第3条1項各号だけであれば、特許庁が誰もが使用できる商標といっているようなものですので、安心して使用することができます。
(ここ、2つ目のポイントです。但し、不正競争の目的がある場合はダメです。)
一方で、第4条第1項第11号が通知された場合は諦めましょう・・・
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