スズキが車両を100kg軽量化?!
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「スズキが車両を100kg軽量化?!」をお伝えします。
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1.スズキ、車両を100kg軽く
今回は、マニアックな内容です 笑
伊勢新聞によりますと、自動車やオートバイで有名なスズキが、「1台あたりの車両重量を現在より100キロ軽くした四輪車を2030年代前半に発売することを目指す」(2024年7月18日伊勢新聞記事 引用)とあります。
さらに、同記事によりますと「車両の軽量化では、軽自動車「アルト」の場合、現行の680キロから100キロ減らす想定だ。」とあります。
引き算すると、なんと580kgです!
約15%の軽量化です!
これ、凄いことですね。
数パーセントの軽量化でも、かなりの努力が必要と思われるのに、今回の目標は15%です。
余談ですが、私が若い頃に初めて所有した1970年代の軽トラックであるアクティは車重が約600kg、次に所有した同じく1970年代の軽乗用車のライフは約500kgでした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ホンダ・アクティ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ホンダ・ライフ
現在、軽自動車の車両重量は、一部で600kg台があるものの、売れ筋といわれるトールワゴンやハイトワゴンは軒並み800~1000kgになります。
これは、排気量の拡大、衝突安全性の確保や需要者の要望に応えるための車両の大型化、車体剛性の向上のためになされたと考えます。
2.車両の軽量化の特許
上で15%の軽量化がかなりチャレンジングな目標であることは述べました。
この目標に対し、どんな手法で軽量化していくのか興味が出てきました。
ということで、現時点で公開されている車両の軽量化に関する特許をピックアップしてみます。
今回は、車両に関するFI(特許分類)であるB62Dに、タイトル~クレームの語句に「軽量」が含まれているものを検索して、その中からいくつか抽出しました。
(1)特許第6295788号 スズキ株式会社¹
【発明の名称】補強用部材
先ずは、題材にも上げたスズキの特許から見てみましょう。
これは、主にエンジンルームの左右にあるエプロンサイドメンバ2と呼ばれるフレームに用いられる補強用部材1です。
膨出部16によって強度を稼ぎつつ、開口部3があることで補強用部材1に電着塗料をしっかりと行き渡らせることができる。
その結果、角部13近傍の電着塗装を良好に行うことが可能となり、角部13近傍の防錆性を高めることができる、とあります。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2014-075414/10/ja
(2)特許第6137691号 本田技研工業株式会社²
【発明の名称】自動車の車体構造
これは、車のドアの下にあって、乗り降りのときに跨ぐサイドシル13と呼ばれるフレームの補強に関する特許ですね。
ここでのサイドシル13は、室外側のアウターパネル17、室内側のインナーパネル18、中に挟まれる板状補強部材21から構成されています。
そして、下部接合フランジ17a,18aの3枚重ねになった部分のうち、前後方向の中央部をシーム溶接W1して、シーム溶接の前後をスポット溶接W2しています。
シーム溶接W1より、下部接合フランジ17a,18a間の隙間がなくなって溶接強度が安定するだけでなく、サイドシル13内への水や音の侵入を防止することができる、とあります。
また、シーム溶接W1の前後にあるスポット溶接W2により、サイドシル13に曲げ荷重が加わったときにシーム溶接部分が口開き変形するのを防止することができ、またシーム溶接よりも剥離強度が高いスポット溶接で接合したので、シーム溶接の両端部の剥離を防止することができる、とあります。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2014-015459/10/ja
(3)特許第6112685号 本田技研工業株式会社³
【発明の名称】自動車の車体構造
これは、自動車の車体前部に車幅方向に配置されるステアリングハンガー21と、フロアパネル12のセンタートンネル16とをCFRP(カーボン繊維強化樹脂)製の連結部材30で接続して補強しております。
さらに、連結部材30は、その下部30aに向かって断面が縮小する閉断面部材であり、前記下部30a内にバルクヘッド(隔壁)36を配置した構造です。
これにより、既存のステアリングハンガー21を利用して、ダッシュパネルフロア15を補強し、ステアリングハンガー21の剛性を高めることができるとあります。
また、ステアリングハンガー21の軽量化と、ステアリングコラム(ハンドルの軸)の振動防止を両立させることができるそうです。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2015-535439/10/ja
3.考察
いかがでしょう?まだまだたくさんの特許がありますが、紹介するにも限度があるのでこれくらいにしておきます。
上記の特許に共通することは、部品の強度を高めることで軽量化を図っていることでしょうか。
部品の強度が高いと、板厚や部品点数の削減が可能となります。
また、車体の剛性というのはもちろん限度はありますが、高いほど良いといわれています。
剛性が高いと、カーブで自分の思ったとおりのラインをトレースできます。
例えば、上記(1)(3)の特許では、ステアリングフィールの向上や正確な操舵感が得られると思います。
また、上記(2)の特許では、ステアリング操作に対してのリヤタイヤの横力発生が早く、安心して旋回できるようになると思われます。
逆に、剛性が低いと、直進でもフラフラして常にハンドルの修正が必要になってきます。
(参考文献 「走行性能の高いシャシーの開発」 堀重之著 グランプリ出版 2016)
あと、これらの特許を見たとき、地味だなと感じられたのではないでしょうか。
そのとおりでして、革新的な発明というのは稀であり、殆どは地味なものなのです。
その地味な発明を重ねることで、長期的にみて大きな成果を上げることができると考えます。
スズキのみならず、各自動車メーカーの軽量化が今度どうなるのか興味がありますね。
この記事が御社の発展に寄与することを願っております。
引用
¹スズキ株式会社.補強用部材.特許第6295788号.
²本田技研工業株式会社.自動車の車体構造.特許第6137691号
³本田技研工業株式会社.自動車の車体構造.特許第6112685号
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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