エネルギーの物語:わたしたちにとってエネルギーとは何なのか (マイケル・E・ウェバー)
(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
“持続可能な社会”というコンセプトが世界的にも市民権を持ち始め、「CO2排出量削減」「再生可能エネルギーへの転換」に大きく世の中が動き始めている昨今、私も仕事がら「エネルギーの将来」については少々関心があります。この本もそういった問題意識から手に取ってみました。
著者は、「水」「食糧」「輸送」「都市」といった身近な事物を材料に、それらと多種多様なエネルギーとの関わりを歴史的視点も含めて解説していきます。
そして、その論考においてエネルギーの係る数々の課題を切り出していくのですが、それらは、すべからく何らかの形で「地球環境」に悪しき影響を及ぼしつつあるものでした。
例えば「食糧」。
食糧生産の分野でも最先端の技術を活用することにより、環境負荷を抑制しつつ生産効率を向上させる方法の追求は必須です。
膨大な「食品ロス」を発生させながら飽食を貪っている人々もいる中で、世界規模では恒常的に飢餓に苦しんでいる人々が数多くいるという現状、せめてこの理不尽な状況だけでも一刻も早く何とかしたいものです。
さて、こういった食糧を取り巻くエネルギーの実相に限らず、すべてのエネルギーの生成/消費サイクルは、私たちの生活基盤である「地球環境」と密接不可分な関係にあります。
「エネルギー不変の法則」の中で、どうやってバランスのとれた全体的な循環システムを作り上げるか。そしてその検討は、どんな時間スケールで、どんな空間スケールでなされるか。
脱炭素社会を目指した具体的解決手段のひとつとされる「電気自動車」も、その主要構成品である「電池の製造工程」では、多くのエネルギーを消費(=CO2を排出)しているといいます。
この課題に対しては、理想的な全体像を作り上げてそれを目指して動くのが正しい道筋ではありますが、そういった「王道」を進む時間的余裕はないかもしれません。
だとすると、私たちにできる取り組みとしては、ちょっと先まで見通した部分最適を目指して動き出してみて、その成果のフィードバックをモニタリングしつつ、全体の環境/エネルギーデザインを継続的に補正・調整し続けていくということでしょう。