一流の人は空気を読まない (堀 紘一)
最近の新書によく見られる「タイトル」で惹きつける類のようですが、元ボストンコンサルティンググループの堀紘一氏の著作ということで読んでみました。
堀氏は、まず、一見すれば同じように空気を読まない人間であっても本質的に異なる2つのタイプが存在すると指摘しています。
(p38より引用) 自分に対して周りが何を望んでいるかはわかっていながらも、「あえて、そうした声には耳を貸さない立場を貫き通している」のか、そういうことではなく、「もともと周囲の望みなどはまったく感知しない」のかは大きな違いであるといえる。
“KY”にも2類型あるのです。
著者は、今の社会に蔓延している「空気」に強く反発しています。
空気を読んで周りに合わせているだけの「一流の空気読み」は、著者によると「迎合のスペシャリスト」とのこと。
(p49より引用) 「一流」とは、時代を切り拓いていくような人物に対して用いられる言葉であるからだ。
著者の主張は、多数に迎合し無難を求める姿勢を厳しく戒めていますが、さらには、最近よくいわれる「ファシリテータ型リーダシップ」へのアンチテーゼのようにも聞こえます。
リスクをとって目標に向かってチャレンジする意思、小さな成功に満足せず自己研鑽に努める姿勢・・・。著者が薦める思考/行動様式には、首肯すべきところが数多くあります。
ただ、それを説くにあたっての社会認識にはちょっとどうかなと思うところもありました。たとえば、以下のような断定です。
(p70より引用) 今後の日本では、数千万円の収入を得るリーダーと低収入の単純労働者に分けられていき、その中間の人間は価値をなくしていくのは間違いない。
そうでしょうか?この二極化論については、どうも賛同しかねます。
1人のスーパーマンだけで企業活動が動いていくとは思えません。販売現場のリーダ、生産現場のリーダ・・・、企業を取り巻く変化に迅速かつ的確に対応するためには、現場での瞬時の判断が今後ますます重要になるように思います。そうなってくると、実質的に事業活動を支えるプロセスを回すのは、実業を熟知した匠の現場のリーダになってきます。
企業を牽引するリーダシップを否定するものではありませんが、事業を実業として営んでいくためには、実務のリーダも絶対に必要不可欠です。