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日本人のしきたり(飯倉 晴武)
いつも参考にさせていただいている会社の方が紹介されていた本です。
「しきたり」を辞書で引くと、
「前々からそのようにしてきたこと。ならわし。慣例。」
といった説明があります。
個人的には「しきたり」をあまり気にする方ではありません。我が家では、最近は正月でも雑煮は食べませんし、節分の豆まきもやりません。季節を感じるアクセントとして「菖蒲湯」や「柚子湯」といった類をするぐらいです。
ただ、伝統として残っている「しきたり」について、それを大切にするにせよ、気にかけないにせよ、背景や由来等については知っておきたいとの気持ちはありました。
本書には、「正月行事、豆まき、大安吉日、厄年…に込められた知恵と心」というサブタイトルがついています。
具体的な内容は、数々の「しきたり」を、
第1章 正月行事のしきたり
第2章 年中行事のしきたり
第3章 結婚のしきたり
第4章 懐妊・出産のしきたり
第5章 祝い事のしきたり
第6章 贈答のしきたり
第7章 手紙のしきたり
第8章 葬式のしきたり
第9章 縁起のしきたり
と、主な生活シーンごとに分類し、それぞれの「しきたり」の歴史的由来等を要領よく簡潔に説明しています。
「しきたり」は、時折、合理性のない「迷信」として否定的に捉えられたり、「閉鎖的社会の表象」として前近代的なものとみなされたりしていますが、その由来を辿ると、多くは、長い歴史の中で培われた生活の知恵が込められたものです。
(p51より引用) 七草がゆが定着した背景には、信仰的な側面ばかりでなく、正月のご馳走で疲れた胃腸を休め、青菜の不足する冬場の栄養補給をするという、実利的な効用もあったと思われます。
今に伝わる「しきたり」の中には、はるか昔に起源をもつものや、海外(中国・インド等)に源を発するものもあります。逆に、今のような姿になったのは、思いのほか最近であるものもあります。(ちなみに、我が家で絶対にやらないのが「恵方巻」ですね)
ただ、ほとんどの「しきたり」は、いつの時代、どんな社会であっても共通に存在する「人々の願い」の表れが出自のようです。
子どもの健康を祈ったり、家族の幸せを念じたり・・・といった極々自然な思いの発露です。