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自分の答えのつくりかた―INDEPENDENT MIND (渡辺 健介)
渡辺健介氏の本は、以前「世界一やさしい問題解決の授業」を読んだことがあります。
本書は、同じようなコンセプトの第2弾です。
構成は3章からなっていて、それぞれ「日常生活における個人の問題解決を学ぶ」「意思決定の礎となる人間的な土台を作る」「いかに集団の問題解決を行っていくかを学ぶ」ことをテーマとしています。
中高生でも読みやすいストーリー仕立てになっているのは前著と同じです。
ロジカル・シンキングという観点からは、「ピラミッド・ストラクチャー」を中心に据えたオーソドックスな内容で、その説明の中では、
(p280より引用) 事実と解釈を切り分ける・事実がどこから来ているか問いかける
自分が何かを伝える時、判断する時、他人の意見を読んだり聞いたりする時、いずれも、事実と解釈をきちんと切り分けなければならない。
といった超基本的な事項にも言及しています。
その他にも、大事なアドバイスとして「たたみ込む力」と名付けた徹底的な行動の勧め。
(p80より引用) ピンキーとブーの間に、成長のスピードの差が出てくるのも当たり前じゃ。「たたみ込む力」が格段に違うのじゃ。
まず、「思う(!)」。問題意識があるので、日々生活する中で、これが問題だ、これをやった方がよい、と感じることが頻繁にある。
そして、「必ずやる(DO/!)」。思ったら、必ず行動に移す。
しかも、「すぐやる(DO-speed)」。そのスピードがすごい。
さらに、「ちゃんとやる(DO-impact)」。やるとなれば必ず、納得がいく形になるまでやる。
・・・「無理だよ」を「とりあえず、やってみよう」に切り替えてほしいのじゃ。この積み重ねで大きな差が出てくるのじゃ。
また、多様な価値観のなかでの自分の作り方のポイント。
(p160より引用) そもそも、国という区切りで分けて語ること自体が実に乱暴なもので、どこの国でも「いろいろな人」がいる。・・・
だからこそ、「やり方の違い」という表面的な部分よりも、「核」の部分が重要性を増してくるのだ。
「同じ文化同士」という縦の関係だけより、「似た人間同士」という横のつながりが重要になってくる。
人はある線を越えると、縦ではなく横につながるのだ。
こういった様々なアドバイスを通じて、著者は、粘り強く事実を集め、それを多様な判断軸から評価し、自分自身の意見を自分の頭で論理的に考えきるという姿勢の重要性を繰り返し訴えています。
中高生の読者を想定した本書の主張の中で、私が特に首肯できた点は、「他者との関わりを通した自己の成長」を求めているところです。
(p277より引用) ひとりではなく、他人が必要
・・・よい決断をするには、よい「プロデューサー」になることじゃ。できる限りの、最も優れた知見、情報、経験を集め、最適なタイミングで最適なメンバーで議論をし、限られた時間の中で最善の決断を下す。いつか、そんなしくみをうまく設計し、実現に漕ぎ着けられるようになってほしいのう。・・・
「論理的思考」に没入していくと、しばしば頭でっかちの「個人的志向」に陥るおそれが出てきます。
他者の叡智を取り込むことにより、さらに高次の「集団としての論理的思考」に止揚できるということです。