TheBazaarExpress84、ノンフィクション私論
ノンフィクション作品とは、あるいはその書き手とは、一つの運動体であるべきだと私は思っている。
物語を紡ぎながら、現実に生きる主人公たちと深くかかわり、新たなアクションを起こしながら新しい物語を再生産していく。その連鎖の中で、物語はいやまた豊穣さを増していく。
今回の佐村河内事件の一連の報道でいえば、取材の中で出会った新垣隆氏とのかかわりがそれにあたる。
彼は最も重要な証言者であると同時に、その実力からすれば、もっともっと広く音楽ファンにその存在を認知されるべき才能があることは自明だった。
私は週刊文春での連載が始まる前の段階で彼の演奏を編集部員と共に聴く機会もうけ、彼の仲間に呼びかけて早い段階で応援団をつくった。この事件の禊ぎが済んだ段階で、彼の作品展ともいえるコンサートを音楽界の友人知人たちと企画した。(その禊ぎがいつの段階で済んだかは議論が分かれるところだが)
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