TheBazaarExpress107、それでも「ソナチネ」は弾いていきたい~少女の叫び
「私はそれでも『ソナチネ』は大好きだからこれからも弾いていきたい。でも、嘘の作曲家のクレジットが入るのはいやだ」
義手のヴァイオリニスト大久保みっくん(愛称、現中1)がそう言ったのは、正月半ばのことだった。この夜集まっていたのは、大久保家4人(両親と妹)と私、そして神妙な表情でうなだれている作曲家・新垣隆氏。すでに新垣氏は前年暮れに、大久保家4人の前で「実は私が佐村河内の曲を18年間つくり続けてきました、申し訳ありませんでした」と、告白していた。
私は、13年正月に上梓した『みっくん、光のヴァイオリン』(佼成出版社)という児童書執筆のために、約2年前から大久保家の取材を続けていた。もちろん、当時みっくんの音楽の師匠を自称していた佐村河内守氏にもインタビューし、そのコメントも使た。だから、ゴーストライティングの実態が明らかになった今、読者からすれば「共犯者」ととられても仕方ない立場にある。だから、大久保家は私に相談してきたのだ。
前年夏ごろから、新垣氏は何度か佐村河内氏に「もう止めよう、近いうちバレる」と説得していたという。ところが佐村河内氏は応じない。さらに6年間で2曲の交響曲をつくってくれと言い張る。
ちょうどそのころ、大久保家は「娘をテレビに出してやったのに、感謝の念が足りない」と佐村河内氏から執拗なメールを受けていた。両親が「日頃の師弟関係には感謝しているけれど、娘をテレビに出してほしいと言った覚えはありません」と返信。それに激怒した佐村河内氏は、「絶縁」をいってきた。困惑した大久保家が相談したのが、4歳の時からヴァイオリンの発表会のたびに伴奏してくれていた新垣氏だった。すると新垣氏は、「佐村河内が増長してしまったのは、私に責任があります」と、良心の呵責に耐えきれずに、告白したのだ。
ではどうしたらいいのか?
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