決闘
私は本日、決闘をする。
決闘は命と命のタイマンである。
10時丁度、それが私が迎える最後の10時になるかもしれない。
立会人が迎えに来た。時計は9時を指している。ふと、逃げようと思った。
「決闘を申し込み、受け入れられた以上逃げるのは、クズがやることだ」
私の弱虫を察したかのように、立会人は言った。表情はなく冷え切った顔だ。
「私は死ぬのか。もうどうにもならんのか」
もしかしたら、帳消しになって、銃を撃ち合わなくて済むかもしれない。期待を若干込つつ、小声で言った。だが、現実はそんなに甘くはなかったようだ。
「どうにもならん。闘え。命を賭けよ」
立会人はより冷徹に言い放った。
私は決闘に指定した、街の外れにある、リンゴの木下に連れて行かれた。
周りは草原だ。そこに1本だけリンゴの木がある。秋には真っ赤な熟したリンゴがなり、ピクニックには最適だ。本来ならデートかなんかで訪れるべきだが、私はそこで命を張る羽目になった。
「てっきり逃げるかと思ったぜ」
つい最近まで、友達であった決闘相手の男が、クソを見るかのような目で、言い放った。
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