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東京外国語大学オープンアカデミーでタガログ語 (フィリピン語) の授業を開講します

2023年度から東京外国語大学オープンアカデミーでタガログ語 (フィリピン語・フィリピノ語) の授業を開講することになりました。

正確な授業名は「フィリピン語 (タガログ語) 初級Ⅰ (CEFR PreA1)【初学者向け】」です。

東京外国語大学オープンアカデミーとは何なのでしょうか? タガログ語とはどんな言語なのでしょうか? どんな授業なのでしょうか?

ここでは私のオープンアカデミーの授業についてご紹介したいと思います。

東京外国語大学オープンアカデミーとは?

東京外国語大学オープンアカデミー (TUFS Open Academy) とは、公式ウェブサイトによると、

東京外国語大学は、学術的な生涯学習の場としてTUFSオープンアカデミーを開設しています。本学の理念である『21世紀の地球社会と対話し行動する』をモットーに、広く市民の皆様に対し、グローバル時代に求められる知性と教養の獲得をサポートします。

「オープンアカデミーとは」 (https://tufsoa.jp/about/index.html)

という理念を持っています。

この理念のもと、生涯学習の場として、東京外国語大学が専門とする言語や地域文化を中心に幅広く講座を展開しています。

現在では年間およそ200の講座が開講されており、国内外から、年間のべ4,000名を超える方が参加していらっしゃるそうです。すごいですね。

私が専門とする言語学の立場から考えると、このオープンアカデミーには大きな二つの特徴があります。

一つ目は、オンライン講座であることです。

語学を学ぶことのできる学校や機関はそれなりにあると思いますが、オンライン講座であるところはなかなかありません。世界のどこにいても、時間とネットさえあれば受講できるのは大きな利点ですね。

二つ目は他ではあまり学べない言語の授業を受講できることです。

オープンアカデミーのウェブサイトを見てみるとわかりますが、アイスランド語からはじまってロマ語にいたるまで、80近くの言語が開講されています。

そんなたくさんの言語を学ぶことができる場所は他にはなかなかありません。私の優秀な言語学の仲間たちもたくさん教えています。おすすめです。

そんな東京外国語大学オープンアカデミーで私も来年度からタガログ語の授業を開講することになりました。

タガログ語 (フィリピン語・フィリピノ語) とは?

では、私が担当する言語であるタガログ語はどのような言語なのでしょうか?

タガログ語はフィリピン共和国で広く話されている言語です。

フィリピン共和国で使⽤されるだけでなく、⽇本を含む世界各地のフィリピン⼈コミュニティで話されています。この言語を使えば、1億人近くの人々とコミュニケーションがとれるようになります。

語族としてはオーストロネシア語族に属する言語です。同じ東南アジア島嶼部のインドネシア語やマレーシア語と同じ言語グループに属しています。共通する単語も多いです。

言語の特徴としては、音声は比較的簡単で、最初の1〜2回でだいたい発音できるようになります。

文法は、日本語や英語など我々のよく知る言語とは大きく異なっています。文のなかで動詞が一番最初に来たり、表現したい意味によって動詞の形が複雑にかわります。

なお、この授業ですが、授業名が「フィリピン語 (タガログ語) 初級Ⅰ (CEFR PreA1)【初学者向け】」です。

「フィリピン語」という呼称は、東京外国語大学でのタガログ語の呼び名です。他にも、フィリピノ語とかピリピノ語とかいう名前もありますが、基本的に同じものを指しています。

詳しくは、以前、東京外国語大学で教えていたときに配布していた資料「27言語リレー フィリピン語・タガログ語 (2018年度)」にまとめてあるので、そちらをご覧ください。

タガログ語と「私」

では、なぜそもそもなぜ私が今回「フィリピン語 (タガログ語) 初級Ⅰ (CEFR PreA1)【初学者向け】」という授業を開講することになったのでしょうか?

理由の1つ目は、タガログ語は私が専門として研究している言語だからです。

note の自己紹介にも書きましたが、私はフィリピンやインドネシアの言語を専門とする言語学者です。フィリピンの代表的な言語であるタガログ語を広く一般に教えることは言語学者としての仕事の一つだと考えています。

2つ目に、私はそもそも2013年度から2018年度まで東京外国語大学でタガログ語 (フィリピン語) を教えていました

2019年度からは現在の勤務校である東京大学に移ったのですが、もちろんその後もタガログ語の研究は続けており、フィリピンにも何度も行き、タガログ語を教えた学生たちとの縁は続いていました。

そういうわけで、またタガログ語を教えたいなと思ったのです。

私のタガログ語の授業の特徴

以上のような事情から、東京外国語大学オープンアカデミーでタガログ語の授業を開講する運びとなりました。

正式な授業名は、「フィリピン語 (タガログ語) 初級Ⅰ (CEFR PreA1)【初学者向け】」です。

公式のウェブサイトはこちらです:

それでは、この授業、どういう特徴があるのでしょう?

第一に、まったくの初心者むけの授業です。授業のタイトルに「CEFR PreA1」とありますが、これはそういう意味です。

タガログ語について全く何も知らない⽅を対象に、発⾳やあいさつなどから学習します。ゆっくりやっていきます。

タガログ語で⾃⼰紹介ができるようになり、簡単な⽂なら英単語を使いながらも作れるぐらいのレベルを⽬指します。

このぐらいタガログ語ができたところでどういう意味があるのかと思うかもしれませんが、実はこれだけでもけっこう役に立ちます。

授業で話しますが、フィリピン共和国では英語が通じる場合が多いので、英語と少しのタガログ語を知っているだけで、できることがぐんと増えます。

第二に、タガログ語の⽂法を中⼼に解説しながら、基礎的な語学⼒を⾝につけます。

つまり文法が中心です。タガログ語の文法は日本語や英語とかなり異なるので、文法を学ぶことはタガログ語上達の秘訣です。

なお、文法よりも会話に集中したいという方は、東京外国語大学の元同僚で共同研究者のフロリンダ・パルマヒル先生の授業が開講されていますので、そちらもご検討ください。

第三に、「構⽂」を単位としてアプローチします。

タガログ語⽂法の学習は動詞が90%を占めますが、構⽂の考え⽅を使えば習った⽂法をすぐに応⽤することができるでしょう。この授業で扱う構文はシラバスをご覧ください。

タガログ語の文法は構文で理解するとわかりやすい (2018-10-23@東京外国語大学)

ちなみに、このようなアプローチは英語学習でも人気のようですね。最近話題の中田達也先生の本は英語の定型表現を扱ったものですが、この本の「はじめに」では Martin Hilpert 先生 (私の大学院の先輩です) の構文文法の話が出てきます。

第四に、フィリピン共和国においてタガログ語と英語が⼆⾔語併⽤される現実に対応して、英語も混ざったタガログ語 ("Taglish") も勉強します。

この Taglish は現代のフィリピン社会を生き抜く上で欠かすことのできないタガログ語の特徴なのですが、教育的配慮からタガログ語の語学の授業ではとりあげられることがあまりありません。この Taglish を私の授業ではできるだけ扱います。

そして、この Taglish を使う際に、文法と構文が極めて強力な武器になります。これらを知っておくと、英語の語彙を使ってタガログ語をしゃべることができるようになります。

最後に、テキストは、講師作成の教材・レジュメ等を電⼦配布する予定です。

音声を聞くために、東京外国語⼤学⾔語モジュールと YouTube も利用する予定です。

私のオープンアカデミーのタガログ語の授業は、このような授業です。

タガログ語を勉強してみませんか?

というわけで、2023年度東京外国語大学オープンアカデミー春期開講の私の講座「フィリピン語 (タガログ語) 初級Ⅰ (CEFR PreA1)【初学者向け】」のご紹介でした。

ただ、実はこの授業が本当に開講できるかは、受講申込者の数次第です。

受講申込者の数が少ないと開講されません。

というわけで、タガログ語をこの機会に勉強したいなと思った方はぜひ申し込んでみてください。

一般受付期間は、2023年2月16日(木) 13:00~2023年3月7日 (火) 23:59 だそうです。よろしくお願いします。

… ということなんですが、ここまで読んで、「どういう授業かは分かったけれど、そもそもタガログ語の勉強をおすすめする理由は?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方のために、以下の記事では、なぜタガログ語の勉強がおすすめなのかをご紹介しました。こちらもどうぞ。

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