【第65回岸田國士戯曲賞候補作を読む】その4
3作目は小田尚稔さんの『罪と愛』。
候補者について
小田尚稔[おだ・なおとし]
1986年生まれ。広島県出身。「小田尚稔の演劇」として作品を発表。
初の最終候補。
候補作について
昨年11月、小田尚稔の演劇としてこまばアゴラ劇場にて上演。
■時代、場所
現在、東京
アパートの一室、大家の自宅、海浜公園付近
劇場に併設されている事務所
■登場人物
男1 自室で脚本を書いている。
男2 アパートの更新が出来ない。大家に殺意を抱く。
男3 自由の女神の爆破を計画している。
男4 罪の意識を抱えている。
蜘蛛 男のアパートに棲息している。
鼠 男のアパートに棲息している。深夜に現れ音楽を奏でる。
大家 男の住むアパートの家主。
母 男の母。
高校球児 甲子園を目指している。
女 海浜公園で鳩に餌を撒いている。
音響 舞台上の観客から観える位置で音響操作をしている。
■物語
古いアパートの一室。机に向かって脚本を書いている男1。部屋に棲みつく蜘蛛はそんな男1を見守る。大家の自宅では家賃を滞納している男2が大家に土下座する。一方、男3は海浜公園付近で自由の女神の爆破を企て、鳩に餌をやる女に出会う。そして男4はかつて恋人を裏切ったことに罪の意識を抱いていた。
総評
小田さんの作品は観たことがなく、これが初読み。インターテクスチュアルな戯曲で、新約聖書に始まり、タイトルの元ネタでもあろうドストエフスキー『罪と罰』、ポール・オースター『リヴァイアサン』、ウィリアム・バロウズ『裸のランチ』、チャールズ・ブコウスキー『勝手に生きろ!』、更には市橋達也の著書や秋葉原事件の加藤智大のルポからの引用もある。
それなりに面白く読んだけど(妊娠した蜘蛛が男1に恋人の音響を紹介するあたりとか)、「、、、」といった表記は個人的にはあまり好きじゃないのよねぇ(岩井秀人さんあたりもよく使うけど)。
個人的な好みは置いておくと、選考委員受けする作品ではあるような気もするけど……。