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【第67回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その2 上田久美子『バイオーム』

候補者について

上田久美子[うえだ・くみこ]
奈良県出身。京都大学文学部フランス語学フランス文学科卒業。劇作家、演出家。初の最終候補。

撮影:Naoko Kadowaki

候補作について

昨年6月、梅田芸術劇場主催のリーディング公演として東京建物Brillia HALLにて上演(演出:一色隆司)。

■時代、場所
 現代。広大な庭の一隅にあるクロマツの木の周囲。
 1 どこか
 2 庭―ある秋の夜―
 3 庭―二日目の朝―
 4 庭―二日目の夜―
 5 庭―三日目の夕方―
 6 庭―三日目の夜―
 7 庭―三日目の夜の続き―
 8 庭―四日目の昼―
 9 庭―四日目の夕方―
 10 事情聴取 ~ 庭―四日目の夜―
 11 どこか

■登場人物(ふき以下は下にある草木の二役)
 ルイ(8)政治家一族の一人息子
 ケイ(8)家政婦ふきの孫娘
 ふき(68)ルイの一家に古くから仕える家政婦・ばあや
  クロマツ 樹齢200年誓い大きな黒松。中性風
 怜子(40)一族の一人娘。ルイの母親
  クロマツの芽 クロマツの赤ちゃん。男児風
 (42)一族の婿養子。衆議院議員、元官僚
  セコイア クロマツの隣に植えられた若い大木。男性風
 克人(77)一族の家長。元大臣
  クロマツの盆栽 克人によって抜き取られた。卑屈な親父風
 野口(37)ふきの一人息子。一家の庭師
  一重の薔薇 クロマツの根元に咲くイングリッシュローズ
 ともえ(39)怜子の傾倒する花療法士
  竜胆 クロマツの根元に咲いた竜胆。若い娘風

■物語
 その家の男の子はいつも夜の庭に抜け出し、大きなクロマツの下で待っていた。フクロウの声を聴くために...。男の子ルイの父に家族を顧みるいとまはなく、心のバランスを欠いた母は怪しげなセラピーに逃避して、息子の問題行動の奥深くにある何かには気づかない。政治家一族の家長としてルイを抑圧する祖父、いわくありげな老家政婦、その息子の庭師。力を持つことに腐心する人間たちの様々な思惑がうずまく庭で、古いクロマツの樹下に、ルイは聴く。悩み続ける人間たちの恐ろしい声とそれを見下ろす木々や鳥の、もう一つの話し声を...。【梅田芸術劇場公式サイトより】

総評

 この作品は配信で鑑賞(こちら)。実際の上演では中村勘九郎さんがルイとケイの二役を演じていたが、戯曲上の指定は一人一役。
 上演はそれなりに楽しんで観たが、これも戯曲として読むと今一つ。そもそも「音響効果」という言葉が戯曲にそぐわないし、ところどころト書きに「?」と書いてあるのもいかがなものか。上演台本だとしても、決定稿で読みたかったところ。明らかなミスもいくつかあったが、「いじめられるものどおし」はさすがに恥ずかしい。

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