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【第67回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その4 金山寿甲『パチンコ(上)』

候補者について

金山寿甲[かなやま・すがつ]
1975年生まれ。千葉県流山市出身。東洋高等学校商業科卒業。東葛スポーツ主宰、劇作家、演出家。第65回に続いて2度目の最終候補。

撮影:田中大介

候補作について

昨年10月、東葛スポーツの公演としてシアター1010稽古場1にて上演。

■時代、場所
 現代、東京(葛飾区金町)
 第一幕 イントロダクション
  【ラップ】「ライフ・ストーリー」
       「生活保護VSパチンコ」「ママ」
 第二幕 前説
 第三幕 BLOOD
  【ラップ】「DNA」
 第四幕 ある男
       【ラップ】「ぶっ放せ」
 第五部 オレオレ詐欺
       【ラップ】「特殊詐欺グループ東葛スポーツ」
 第六部 純金積立
       【ラップ】「NISA」
 第七幕 アボジ
 第八幕 アウトロ
       【ラップ】「PACHINKO」「自己紹介」

■登場人物
  パチンコ屋三代目、東葛スポーツ主宰
 할머니(ハルモニ=祖母) 俺の祖母 
 フード 生活保護をパチンコに張るパチプロの男
 ママ パチンコ依存症のシングルマザー
 前説 前説の担当者(本屋店員)
 ある男 あの男(盲目のパチンコ屋の客)
 嫌韓 日本人
 반일(パニル=反日) 韓国人
 USA アメリカ人
 ミズホ ガールズバーの女
 一重瞼 焼肉「エデンの国」店員
 母親 ある男の母親
 こころ 松戸角海老根本店の泡姫
 オレ オレオレ詐欺を企てる役者(女性)
 オモニ 在日の一般的なお母さん
 舞台役者
 テレビタレント
 客 
資産運用を考えている女
 職員 朝鮮総連事務員
 アボジ 俺のアボジ
 後説 後説の担当者

■物語
 在日三世でパチンコ屋の三代目である俺は、節税対策で東葛スポーツの主宰を務め、演劇をやっている。射幸心を煽るような台が禁止され、スマートパチンコの導入を迫られて先行き不透明な中、俺は東葛スポーツを法人化し、文化庁のARTS for the future!第2弾の支援金申請をする。そんなパチンコ屋にサングラスをかけた盲目と思しき男が入ってくる。俺が床から拾ったパチンコ玉を落とした男に声をかけると、男は手製の散弾銃をぶっ放す。

総評

 『A-②活動の継続・再開のための公演』に続いてまさかの最終候補入り。
 本作も実際の上演を観ていて(感想はこちら)、ライムの見事さは惚れ惚れするほど(特に「教団が頼り 教団に頼る/そして今日凶弾に倒れる」)だけど、やはり前回同様、戯曲として評価するのは難しい気がする。
 仮に受賞となった場合、白水社から戯曲本が刊行されるけど、チラシもパンフレットも作らず証拠を残してこなかった東葛スポーツの主義に反してしまうのではなかろうか。笑

 ところで「反日」を意味する「パニル」のハングル表記が「바닐」となっていたけど、正しくは「반일」では?


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