【第68回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その1 金子鈴幸『愛について語るときは静かにしてくれ』
候補者について
金子鈴幸[かねこ・すずゆき]
1992年生まれ。東京都出身。明治大学文学部英米文学科卒業。コンプソンズ主宰。劇作家、演出家。初の最終候補。
候補作について
昨年8月、コンプソンズ第11回公演としてOFF・OFFシアターにて上演。『紙背』2023年11月号に収録。
■時代、場所
2052年。下北沢の古いアパートの一室。
0 小春がいる。VRのゲームをしている。
1 VRのコントローラー等を外す小春。
2 場面は路上。アパートの真下あたり。タバコを吸っているカノン。
3 幕が開き、場面は部屋に戻り。
4 電話の音。出てくる大介。その後にスズ。
5 幕が開く。場面は部屋。小春とカノンがいる。
6 場面はとある道。刑事1、出てくる。
7 幕が開く。
8 カノンが登場。続いてスズ、その後ろに子供。(坊主で、タンクトップ)
9 カノン、スズ、子供はそのまま、部屋のなかへ。
10 幕が閉まる。
11 幕が開く。
■登場人物
加藤小春(29)ゲーマー 引きこもり
荒木カノン(29)売れない漫画家
廣瀬スズ(30)小春の恋人 フリーター
矢島大介(27)小春の幼なじみ
岡田玲司(30)大介の先輩 霊媒師
藤堂まい(29)小春の大学時代からの友人
サキュバス 悪魔
子供
刑事1
刑事2
ユウスケ 大介の父 ※声のみ
キョウコ 小春の母 ※声のみ
■物語
令和のトキワ荘と呼ばれた下北沢のアパートの一室。今年30歳になるゲーマーの小春が配信を終え、映画監督志望の恋人・スズと言い合いをしていると、隣に引っ越してきた売れない漫画家・カノンが抗議に来る。スズが結婚や子供のことを考えていると知った小春は別れを決意。そこへやってきた小春の友人・まいと幼なじみの大介は戸惑う。スズが旅に出る一方、小春には女性の姿をした悪魔・サキュバスの姿が見えるようになる。その頃、街では子供が殺される事件が発生。刑事は住人が全員逮捕されているアパートの住人に目をつける。
総評
この作品は実際の上演を鑑賞しているが、終盤の展開が今ひとつ乗れなかった(こちら)。今回、改めて戯曲を読んでみたが、「これが演劇だったら」というフレーズが少々しつこい。新作『岸辺のベストアルバム!!』にもそういった台詞は出てくるけど、そちらの方が出来がいいと思うので、来年受賞ということで。笑
なお、『紙背』には丘田ミイ子さんと佐々木敦さんによる批評も掲載されているので併せて読むべし。
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