【第65回岸田國士戯曲賞候補作を読む】その5
4作目は金山寿甲さんの『A-②活動の継続・再開のための公演』。
候補者について
金山寿甲[かなやま・すがつ]
1975年生まれ。千葉県流山市出身。東葛スポーツ主宰。
初の最終候補。
候補作について
昨年12月、東葛スポーツによりシアター1010稽古場1にて上演。
■時代、場所
現代、東京
第一部 ミヤシタパーク
第二部 文化庁芸術文化担当
第三部 文化庁芸術文化担当/その2
第四部 パラサイト/団子屋の家族
第五部 エピローグ
第六部 アウトロ
■登場人物
モデルA(女性) ルイ・ヴィトンのモデル
モデルB(男性) バレンシアガのモデル
大内 ファッションジャーナリスト
宮下 宮下公園のホームレス(モデルBと同一人物)
前説 川﨑麻里子
補佐 文化庁芸術文化担当参事官補佐
参事官 文化庁芸術文化担当参事官
役者 舞台女優
さくら 団子屋の女将
博 団子屋の主人
満男 団子屋の息子
名古屋 ウーバーイーツ(青年団・青春五月党所属の役者)
ソン ソン・ガンホ
娘 ソン・ガンホの娘
ププ ソン・ガンホの飼い犬
■物語
コロナ禍により公演の延期・中止が相次いだ演劇界。妊娠した舞台女優は中絶手術のため、文化庁に補助金申請の問い合わせの電話をかける。Uberイーツのアルバイトをしている女優は出会い系イメクラのUberミーツに転職することを決意。最後の仕事として訪れた柴又の団子屋に注文の品物を取りに行った際、団子屋の息子・満男にUberイーツの仕事を譲る。そこへ日本に滞在中のソン・ガンホから注文が入り、早速、ソン・ガンホ邸に向かう満男。一旦、娘とともに帰国しなければいけないというソン・ガンホのため、満男は伝説の家政婦として母・さくらを、伝説のペットシッターとして父・博を紹介する。
総評
今回の候補作の中で一番の問題作。まさか東葛スポーツが岸田戯曲賞の最終候補に残るとは(前説で「岸田に引っかかりそうなテーマですけどね」とかラップの歌詞に「岸田の最終 ノミネートへのネゴシエート」と出てくるのも何の因果か)。
本作は実際の上演を観ていて(感想はこちら)、個人的には大好きな作品なので受賞してほしいけど、戯曲賞を与える作品として妥当かと言われると躊躇してしまう。そもそも東葛スポーツの戯曲は時事ネタが多いので賞味期限が短く、しかも川﨑麻里子さんや名古屋愛さんなど演じる人が前提の台詞や歌詞もあったりする。そのあたりを選考委員がどう受け取るか、気になるところ(特に実名の出てくる柳美里さんね)。
とりあえず大穴としておく。笑