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スピリチュアルな森の道【ポルトガルの道#10】
歩き旅、巡礼旅、ポルトガルの道も10日目、いよいよ終わりに近づいてきた。
昨日から「Variante Espiritual スピリチュアルの道」を選んで、少し迂回しつつ、聖ヤコブの遺骸が運ばれた道を歩いている。
今のところ、この道のスピリチュアルというものが何なのかはあまりピンと来ていないが、初日の昨日が、今までで一番ハードな道のりだったのは間違いなかった。
世界多分一周旅中ではあるが、私のライフワークともいえる歩き続ける旅「カミーノ」を、長旅の途中に組み込んだ。
通称「カミーノ」とは、スペインの北西にあるサンティアゴ・デ・コンポステーラという町の大聖堂を目指して、そこへと繋がる巡礼路がいくつもあり、道ごとが世界遺産認定されている美しい道。2015年~2017年に「フランス人の道」というフランスから東西に延びる800㎞のメジャーなルートを歩き通し、次に2019年と2023年にフランス国内のルート「ルピュイの道」を少しずつ歩いていた後、私が選んだのは「ポルトガルの道」。
世界一周の旅の途中にポルトガルのポルトに飛び、そこから海岸沿いのルートをずっと北上して、スペインへと国境を越えて、270㎞先のサンティアゴを目指して毎日歩く。その記録。
マガジン「380km歩き旅!ポルトガルの道」にまとめています。
今日も今日とて、日の出前から歩き始める。
もう最初に書いてしまおうと思うけれど、今日の道は、今までで1番美しい道だった。
気持ちが良くて、心地が良い、ずっとずっと歩いていたくなる森の道だった。もう今日がクライマックスだと感じた。緑が美しい、グリーンガリシア。流れる川の音、自分の足音、300年経ってしまいそうな美しい鳥の鳴き声。太陽が緑の隙間から差し込む。誰もいない早朝の森。
この時間こそが、私がコロナ禍で旅に出られず、日本で恋焦がれていたカミーノのような気がした。
午前中に森を通り抜け、ワインになるブドウ畑を見ながら進み、あちこちの休憩スポットでピクニック気分で何か美味しいものをつまむ。
途中の巡礼者のためのコーナーでバナナとゆで卵をもらい、カフェでびっくりするくらい大きなヌテラ入りのクロワッサンを買った。スーパーで買ったプリンもいつも通り美味しくて、シャーリーンにもらったトルティージャも、バナナケーキも美味しい。1時間に一回は、ベンチに座って景色を眺めながら何かを食べる。こんなペースでゴールできるのかという思いと、まだまだ着きたくないという思いが両方あって、休憩が増える。
最近、よく私と同じ場所でピクニックのようにパンやフルーツを食べるセルビア人の女の子2人組がいて、今日も隣で靴と靴下を脱いで、疲れたねー、お腹すいたねと言いながら、それぞれが何かをもぐもぐ食べる時間を共有した。
彼女たちのうち1人はぽっちゃりさんで、歩みが遅くてやたらと休憩したがるようで、細い赤毛の子の方が付き合って休憩している。ぽっちゃりさんと私の休憩のペースと場所選びのセンスが重なるからだと思うが、この数日間、本当によく一緒になる。
私が休憩していると、そこに後ろから2人がやってきてぽっちゃりさんが笑顔で私の横にバックパックを下ろすか、私がそろそろ休憩しようかと考えながら歩いていて、いい場所を見つけたと思って近寄ると彼女たちが既にそこにいるというパターン。気が合うし歩みも合うし、お腹が空くペースも合う。休憩の時しか結局会わなかったし、名前が難しすぎて覚えられなかったのだけれど、彼女たちも私の巡礼の日々を彩る大切な旅仲間だと今は強く思う。
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私は紫外線対策で日陰を求める。
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中にはヌテラがたっぷり入ってて、そこは褒めるに値する。
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keenの靴がボロボロになってきた。
ダーンタフの靴下はさすが!全く破れず。
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森を抜け、海にまた出て、本日の目的地Vilanova de arousaに到着。
フェデリコに、この町のムニシパル(公営の巡礼宿)が無料だからそこに泊まろうと誘われたが、調べてみるとどうやら町の体育館の片隅でマットレスを敷いて寝るスタイルらしく、夜は町のチームがバスケをしたりするらしく、うーん、どうしようかと迷った。
それも面白いかなと思ったが、やはりちゃんとベッドで眠りたいし、何より昨日から相当汗をかいているので洗濯機で洗濯したかったため、フェデリコの誘いを断り、何となく飛び込みで感じの良いゲストハウスを訪ねると、ベッドが空いているとのことだったので、そこに泊まることにした。
洗濯機もあるし、広々とした綺麗なシャワールームがあり、6人くらいしか宿泊していないからゆっくりできそうだと思った。大量に洗濯をし終えてからしまったと思ったのだが、「宿に干すスペースはありません」という注意書きがあった。そして乾燥機もない。どないせいっちゅうねん。思わず飛び出る大阪弁。他の宿泊客も、困り果てて文句を言っていた。
そこで私はいいことをひらめいた。宿の外の道路にあるベンチに広げて干すというむちゃくちゃな技である。通行人が結構いるし、靴下やTシャツ(見えにくい場所にパンツも引っ掛けて干した)が飛ばされたり盗まれたりしないように、宿から椅子を1つ持ち出してベンチのそばに椅子を置いて腰掛けて、乾くのを待ちながら見張るという、日本では考えられない方法で洗濯を干した。
いい天気だったのですぐ乾いたため、パンツも無事回収した。
それからスーパーに買い出しに行き、パン売り場でまたもひらめきが舞い降りた。
ボカディージョよりも、ハンバーガーの方がパンが柔らかくて食べやすいんじゃないか?というひらめき。バゲットを持ち歩いているとどうしても固くなって食べにくいなと、後半感じていたのである。ハンバーガー!このひらめきが降りてきた時、自分を天才かと思った。明日が楽しみで仕方ない。
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あと、缶詰のミートボール。天才的なひらめき。
それから、明日乗る予定のボート乗り場を確認しに行き、フェデリコに晩ごはんを誘われたが、あまり気乗りがせずなんとなく断った。町の教会を覗いた後、海辺を散歩しながら、適当に何かをテイクアウトして宿で食べようかなと思って歩いていたら、私の名前を大声で呼ぶ声が聞こえた。
声のする方を見ると、バルのテラス席で4人くらいのグループの1人が立ち上がって手を振り、こちらに向かって走ってくる。
「クリスティーナ!!」
私も大声で叫んで走って駆け寄った。
ヘビの宿以来、7日ぶりの再会である。
嬉しすぎて2人で抱き合い、笑い合う。
「会いたかったの!」
「私もまた会いたかった!」
「絶対会えると思ってたのに、7日もかかっちゃった!」
「毎日あなたのことを考えて歩いてたのよ」
「私も、今どこにいるのかなって思ってた」
「どこ歩いてたのよもう!」
「どの町に泊まってたの?」
お互いに次々と喋る。
クリスティーナが、「OK!まず第一に私たちがすべきことは、連絡先の交換よ!」と言って、instagramをフォローし合った。
「よし、これであなたの居場所は確認できるからまずは安心。それからデイヴに今すぐ連絡をするから。デイヴもあなたを見かけたか?って毎日あなたを探していたから」と言い、1つ手前の町にいるデイヴとも連絡がついた。
「次にすることはビールを注文すること。
それから私と一緒に何か食べながら、お互いの7日間、どこに泊まって何があったかを話し合いましょう。」と言い、腕を引っ張られバルへ連れて行かれた。
まさか本当に会えるとは。私だけが会いたいと思っていたのではなく、同じくらいの気持ちで私のことを思ってくれていたことがとても嬉しかった。スピリチュアルの道の何がスピリチュアルなのかよく分からないままだが、会いたい人に再会できたことは奇跡、魔法、スピリチュアル?何と呼んでもいいけれど、何かに導かれるような再会だったように感じる。
ゴール直前にして嬉しい1日となった。
そして、飲んだ後に一緒に宿に向かって歩いて帰っていたら、驚くことにクリスティーナは私と同じ宿の同じ部屋で、私のベッドの下だった。
2人で「まさかここにもヘビ、出ないよね?」と言って笑った。クリスティーナは全ての宿を事前に予約して歩いており、予約の一覧表を私にシェアしてくれ、「あなたもこのスケジュールでここに書いてある宿に泊まるようにすれば、これから私に毎日会えるよ」と言った。私は、その場で次の日のクリスティーナと同じ場所の宿を予約した。
明日は、ヤコブの遺骸が運ばれた川をボートで進む。ボートの時間が朝の8時発のため、いつものように夜明け前から歩かなくていいから早起きもしなくて良いのである。
デイヴから「2人でいるなんてズルい」とメッセージが来た。「早くまた3人で会いたいね、会えるのはサンティアゴかな?」と返事し、サンティアゴで再会を約束した。
終わりに近づきゴールしてしまうのが寂しくて、できるだけゆっくり進みたいと思っていたが、サンティアゴで会いたい人が何人もいるので、ゴールが楽しみにもなってきた。
夜遅くまで、クリスティーナと7日分のお喋りは尽きなかった。
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ポルトガルの道10日目。
ArmenteiraからVilanova de Arousaまで。
42,000歩、24km、8時間半。
ポルトから257km進んで、
サンティアゴまで残り23km。と思ってたけど、違うらしく、あと56km。
船で川を30kmほど進むから、歩く距離はそれほどない。
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本日の宿↓
カミーノの必需品。有吉先生もおすすめのダーンタフ。穴が空いたら無料交換してくれるくらい、品質に自信がある靴下。
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