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船で進むスピリチュアルの道【ポルトガルの道#11】

歩き旅、ポルトガルの道の旅11日目。
これまでの巡礼旅で、最も遅く起きた朝である。いつもは夜明け前から歩き始める私だが、今日は、宿のすぐそばの船着場から朝8時に出る船に乗って、川を上って進むことから始まる。朝7時過ぎに目覚めて、船着場までクリスティーナと共にのんびり歩いて向かった。

世界多分一周旅中ではあるが、私のライフワークともいえる歩き続ける旅「カミーノ」を、長旅の途中に組み込んだ。
通称「カミーノ」とは、スペインの北西にあるサンティアゴ・デ・コンポステーラという町の大聖堂を目指して、そこへと繋がる巡礼路がいくつもあり、道ごとが世界遺産認定されている美しい道。2015年~2017年に「フランス人の道」というフランスから東西に延びる800㎞のメジャーなルートを歩き通し、次に2019年と2023年にフランス国内のルート「ルピュイの道」を少しずつ歩いていた後、私が選んだのは「ポルトガルの道」。
世界一周の旅の途中にポルトガルのポルトに飛び、そこから海岸沿いのルートをずっと北上して、スペインへと国境を越えて、270㎞先のサンティアゴを目指して毎日歩く。その記録。
マガジン「380km歩き旅!ポルトガルの道」にまとめています。

長過ぎる前置き

昨日のはこちら↓

ここからは歩き旅でかなり珍しい行程になるが、1時間ほど船に乗って川を上って進む。歩くのではなく乗り物に乗るわけだが、ここの区間は、ボートに乗ることが巡礼のルール上では認められているらしい。(巡礼路を100km以上踏破した人が貰える証明書の発行のための条件。別にそれが不要なら、途中で何に乗ろうと自由。)
面白いなと思ったのが、これまでずっと歩く方角を指して導いてくれていた黄色い矢印イエローアローが、思いっきり歩けない川の方を指していること。

ポルトガルからスペインへと国境を越える時も川を渡るために10分ほどボートに乗ったが、今回は1時間ほど乗るので、なんだか巡礼仲間みんなでクルーズに出かけるみたいで、少しウキウキしていた。フェデリコに船着き場で会い、「昨夜の体育館での寝心地は悪くなかったよ」という話を聞いていたら、クリスティーナが私を呼び、「ちょっと!7日間の間にハンサムイタリアーノといい仲になった話は聞いてないわよ。デイヴがショックを受けるわよ」と小声で冷やかしてきた。メキシコ女とイタリアーノとそれぞれに私が紹介をしていると、イタリアーノおじさんズ、アメリカ人のシャーリーンたち、クリスティーナの知り合いのストロングアイライナーレディー(その名の通りの顔。後日紹介する予定)、セルビア人ガール2人が船着場に集まってきた。
さあいよいよクルーズタイム。
名前が呼ばれた順に船に乗り込んでいくが、なぜか私は最後まで呼ばれなかった。

なんで。

名前を呼ばれなかった8人だけが、ミニサイズのボートに乗るように言われる。クルーズ船から、「なんでー?!どうしてこっちに乗れないの?」とクリスティーナらが叫んでいたが、叫びたいのは私である。
大多数の巡礼者と同様にbuen caminoのアプリから、船を予約したのだが、予約がギリギリで定員オーバーだったのだろうか?よく分からないまま、私は小さいボートに乗り込んだ。
後にこのボートは「イミグラントボート」と呼ばれ(外国人のブラックジョーク)、クルーズ船のメンバーからの笑い話としてしょっちゅう持ち出されることとなった。

真ん中のピンクのクリスティーナがイミグラントボートの私を撮影している。
ねぇなんで?
かなり揺れる。
めちゃくちゃ猛スピードを出すから、
寒くて凍え死にそうだった。
ダウンを着て震え続けた1時間。
川イルカの群れを見たり(写真は見えにくいけど)
いくつもの祈りのポイントを通る。

聖ヤコブの遺骸を乗せた昔の船はもっと時間がかかったと思うが、イミグラントボートは猛スピードで進み、クルーズ船よりも30分くらい早く到着した。
またもやクリスティーナと別れてしまったが、今日は同じ宿を予約しているし、連絡先も知っているから、安心して進む。

船を降りたら、街中を進む道だった。
スピリチュアルの道の初日はハードな山、2日目は美しい森、3日目ラストは船に乗り降りてからは街中を歩く。街から街へと平坦な道をサンティアゴに向かって進み続ける道で、それ自体に面白みはないが、スピリチュアルの道を3日間通して歩くと、なかなかドラマティックな構成になっていると思った。

残り28kmなの?PKの意味が分からない。
残り、22.86km!

ロシア人のデンは昨日遅くに、もうサンティアゴに着いたと連絡が来た。さすがデン、歩くのが早い。明日朝には空港に向かい、モンテネグロに帰るらしい。私は残り22.86kmで、十分サンティアゴまで今日辿り着ける距離だが、クリスティーナと同じサンティアゴの少し手前の町の宿を予約したので、サンティアゴ到着は明日になる。デンとはもう会えないのだなと思うと寂しくなった。あのケーキの時が最後なのかと思うと、再び、ケーキをひとつ分けてあげなかった後悔が募る。デンと出会えて楽しかったなぁと思い、またどこかで会えたら、ケーキをご馳走したいと思う。(思ったくせに、モンテネグロと大阪で2回デンに再会して、2回ともデンに奢ってもらった情けない後日談はまた別の話。)
シールちゃんは今日サンティアゴに到達するらしい。メインルートを選んだ方は、私の選んだスピリチュアルの道よりも1日早く到着できる人が多いが、コリアン夫妻はゆっくりペースなので、私と同じく明日到着予定。それぞれがサンティアゴ到着の予定を報告しあった。
そしてなんと、思いがけない旅仲間からも連絡があった。7年前にフランス人の道を歩いていた時の旅仲間フォルクが、全く別の道を歩いて旅をしていて、私と同じ日にサンティアゴに到着すると言う。7年前にアストルガという町でチームアストルガと名付けてパーティーをして別れた仲間の1人で、別名ジョージクルーニーと呼んでいたのだが、彼から「サンティアゴに金曜までいるから、チームアストルガ、また集まろう」という誘いのメッセージが来た。
7年ぶりに同じ目的地にたどり着くなんて偶然に驚くかもしれないが、カミーノを歩く人の中では割とよくある不思議な縁。同じ時期に、またカミーノへと戻ってくる人が多いから、タイミングが重なることがよくある。チームアストルガのメンバーのベルギーの彼にも報告し、懐かしんだ。

サンティアゴでの楽しみがいっぱい増えてしまって、時間が足りない気がしてきた。楽しみが増えてしまって、一歩一歩進んで300km歩いてきた重みが、逆に軽く感じてくるから面白い。
さて。
そんな中、お待ちかねのハンバーガータイム!

とてもいいピクニック場所があったので、昨日買ったものを並べて、持参しているマイケチャップとマイマヨネーズも取り出す。プレジデントのカマンベールチーズクリームをバンズに塗り、缶詰のミートボールを乗せる。これはハンバーグとみなしている。そしてバンズを重ねる。

思わずキムタク持ち。

いい!
パンが柔らかくて、ミートボールもちゃんと肉肉しくていい!!
2個目、3個目、4個目をついでに作ってしまっておく。3個目はケチャップを混ぜ、4個目はマヨネーズを混ぜた。この遊び心は大事。アルミホイルで包んで出来上がり。
なぜこんな簡単で美味しくて食べやすい1アイデアを11日目まで思いつかなかったのか。うう。まあ、そんなもんだ人生。
しかもチーズとろりんのあの美味しさとは比較対象にもならない普通の味のチーズを使っているのが、非常に無念である。
チーズとろりんにまた出会いたい。
それが今この時の私の最大の願い。

ケチャップバージョン
マヨネーズバージョン

それからセルベッサ・コン・リモン(レモンビール)を飲んだり、コーラを飲んだりしながら進む。そうこうしていると、クリスティーナが来て、「宿で待ってるね」と言って私を追い抜いて行った。

いつもは朝6時頃に出発して遅くても15時過ぎには着くのだが、今朝はボートの時間のせいで8時に出発し、ボートを降りた9時から歩き始めている。そのため、暑い時間帯が長く、かつ、9時から8時間ほど歩くので、到着がこれまでで一番遅い時間帯になりそうである。歩くのは23kmほどだが、それでも長丁場に感じる1日だった。

15.49km
石の十字架
10.38㎞
9.87㎞
またセルビア人ガールズと休憩タイム。
セルビア人ガールズは、この日のうちにもうノンストップでサンティアゴまで行くらしく、到着は夜になると思うとのこと。
そうは言いつつ、いつも通りのんびり休憩していた。
シャコベオくん。
ガリシア州のご当地キャラ。
到着。

結局、宿の到着は17:30。ヘトヘトである。
改めて考えると、ポルトガルの道を長距離歩くのは、今日が最後だった。なんとなくあっけなく感じる。
まだまだ歩きたい。
最近はずっとそう思っている。ボーナスステージを歩こうかな、などと考えはじめていた。

さて、この日はクリスティーナの誕生日の前日。クリスティーナが「バースデーイブディナーに行こう!」と誘ってくれて2人でちょっといいレストランに行った。
風の強い日で、20時のオープンまで寒くて震えながら店の外で待った。
クリスティーナは宿を予約していたはずなのにシステムの手違いで予約ができておらず、この日は満室で、あなたはここには泊まれないと言われてしまったらしい。そこでクリスティーナが、フロントスタッフに「予約はちゃんとしてたし、今日は私の誕生日イブなのよ。そんな悲しいことを言わないで」と頼んだら、宿のスタッフが「分かりました。代わりにこちらを使ってください」と部屋を特別に用意してくれた。その案内された部屋が、隠し扉の奥の、スタッフ用と思われるシャワーとトイレとテレビのある広い個室だったらしい。私も後で見せてもらったが、かなりいいホテルの個室のようだった。クリスティーナは「プレジデントルーム」と呼んで喜んでいた。
そんな彼女と、日本人の目から見てどう見ても天ぷらじゃないTempuraと、メキシコ人から見てどう見てもタコスじゃないTacosを注文し、笑いながら食べた。
また、メキシコからクリスティーナのママがビデオ電話をかけてきたが、私もいると知らずにママが素っ裸でスマホに映し出されて
ママが「オラー!」、
私が「ええー、裸!」、
ママが「ギャー!」、
クリスティーナが「No!ママ!No!」
と言って大騒ぎする事件があって笑った。
お会計で、私が払おうとするとクリスティーナが、「いいのいいの、ここは私の夫の奢りね」と言ってカードを出した。
「こういう時だけカードを使っていいルールなのよ」とウィンクし、私はメキシコにいるまだ見ぬクリスティーナの夫エリアスに、グラシアスと感謝した。(半年後、ちゃんとメキシコで夫に会ってお礼を伝えたのはまた別の話。)
何もかもがすごく楽しい夜。
飲みすぎて寒すぎて身を寄せながら震えながら歩く帰り道、振り返ると、21:30を過ぎてようやく沈む太陽。
特別な感情や振り返って募る感動に浸るわけでもなく、普通に楽しく友達と過ごして笑って1日が終わる。
そういう巡礼最終日も、すごく普通で良いなと思った。
明日はいよいよサンティアゴ。
ポルトガルの道、残すはあと一日。
まだまだ終わらないでほしいけど、早くゴールしたい気持ちを抱いて。

椅子に座って、メキシコの娘と
電話で喋ってるクリスティーナを見ながら、
りんごをかじってる。
ちなみに右足親指の爪の色はペディキュアじゃなくて、死んでいる色。
剥がれかけた爪は左の根元だけがしっかりしてきたので、結局剥がれない状態を維持してしまい、色は死んでいる。
左上が天ぷら、右がタコス。
スペイン人は外国の料理のことをよくわかってない節あり。
クリスティーナは
1歳違いの、誕生日5日違い。
イタリア人が驚きそうなパスタと、
普通に美味しいステーキと。
21:35
22時

ポルトガルの道11日目。
Vilanova de ArousaからO Milladoiroまで。
35,000歩、歩いたのは20km、ボートを入れた移動距離は49km。9時間半。
ポルトから306km進んだ。
ポルトガルの道の移動距離は280kmなのだけど、スピリチュアルの道のルートは船での移動を含めて314kmほどある。
よく分からなくなってきたけど、
とにかくサンティアゴまで残り7.7km!

もうほぼサンティアゴです!


今日の宿↓


本日の必需品、というか秘技。
この頃から、ドミトリーなど他人と同じ部屋で眠る時は、耳栓ではなくこういう瞑想系音楽を15分タイマーをかけてイヤホンで聴きながら眠ることにし出した。どんな優れた耳栓も完全に他人の音を遮断することは難しいので、逆に瞑想系のBGMを聴くようにして、目を閉じたら15分以内に必ず眠れるようになった。
念の為紐付きの耳栓も首にかけておいて、途中目が覚めかけた時に、目を閉じたまま無意識でイヤホンから耳栓へと入れ替える技を身につけた。↓


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のりまき
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