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空中線更新

【はじめに】弊社では2021年度に51年使用した親局10kW送信空中線(双ループ1段3面)及び34年使用した中継局10W送信空中線(スーパーターン1段)の更新をNHKと共同で行った。そこでたまには真面目に更新報告する。
【更新方法】両空中線とも基本的な更新方法は、①仮設空中線取り付け、仮設に切替、②空中線交換、③新空中線に切替の3段階とした。
【中継局空中線更新】中継局では敷地内にある在阪民放TVの鉄塔を借用し仮設空中線を取り付け、送信機出力(共用器出力)を切替えた。ここで仮設空中線はNHK所有の物を借用した。仮設で運用しつつ旧空中線を取り外し、新空中線を取り付け、再度送信機出力を新空中線に繋ぎ変え、仮設空中線を撤去することで更新完了となった。
この時の総通局への申請は、仮設・本設とも現空中線と放送エリアが同一という事で、変更検査を要しない変更となり、段取りとしては、仮設空中線への変更申請、工事完了届、新空中線の変更申請、工事完了届、となった。工期としては約1か月で完了した。
【親局空中線更新】親局10kW空中線についても中継局と同様の手順で更新を行ったが、規模が大きいため付帯する様々な作業が発生した。
まず、仮設空中線を取り付けるため、鉄塔強度のシミュレーションと現地調査を行い、鉄塔補強を行った。また工事時の安全性確保の観点から鉄塔落下防止金具の取り付け工事も事前に行った。同時にこの場所には不要と判明した航空障害灯も撤去した。局舎内の設備や什器についても、移動や撤去しスペースを確保した。
次に仮設空中線とその導波管を通すため、既設STL受信パラボラの位置を変更する必要が生じた。そのためSTL受信パラボラ及び導波管ルートの変更工事を弊社及びNHKそれぞれで行った(変更申請要)。
そうして仮設空中線(新規製作品)取り付け場所を確保し、クレーン車を用いて取り付けた。この送信所はFM802も送信しているため合計30kWの強電界地域であるためクレーン動作に異常のないことを事前に確認し作業した。同時に局舎内では仮設空中線用の給電装置(共用器含)を設置した。各段階で仮設空中線系設備の特性を単独で測定し、全体として問題ない事を確認後、放送休止中に送信機出力を繋ぎ変えた。その際、10k(2社合計では20k)というパワーを(仮設設備製造以来初めて)入力し、発熱や発火などしないことを確認しながら切替を行った。また、仮設空中線位置が既設より約10m下がるため放送波中継を行っている中継局で正常受信できるかもフィールド測定班を派遣し確認すると同時に、大阪府内各所で電測を行い、既設と同等な事も確認した。空中線が変わったことで送信機の反射値が10~20W程度だったものが100W程度まで上がったが、そもそも送信出力が大きいことからこの程度の変化は誤差範囲と判断し、切替完了とした。
次に、既設空中線の取外し、旧給電装置等撤去、新空中線取付け、新給電装置設置などを行った。また受信空中線(3Y:モニター用)も更新を行った。受信空中線を切替えた際に、受信電界強度が30dB程上がったため、ATTを急遽挿入し、受信機入力レベルを合わせこんだ。
各種監視系(VSWRやDCR等監視装置)やデハイドを接続し、放送休止時に、仮設から新空中線設備に繋ぎ変えた。仮設時と同等の電測・中継局確認を行って、無事切替完了となった。雪の残る中、山中で切替待機していた方々に感謝する。なお、本件で使用した仮設空中線は残置とし、「NHK予備送信空中線」となった。予備空中線とするための送信設備の変更をNHK単独工事として行い、全体工事完了となった。工期としては約3か月であった。
工事完了時には、予備給電装置等が増えたこともあり局舎スペースがかなり厳しいものとなった。次回更新時にはかなりのパズルを強いられることとなることが想像されたが、未来の技術者に託すこととした。
親局の総通局への申請関係は、これも変更検査を要しない変更となり、中継局同等の手続きとなった。
【雑感】空中線更新話は7~8年以上前からあり、社内的に“空中線って何?”から説明を行って(以降、経営陣には“アンテナ”という言い方にした)更新の必要性に理解を得て更新完了まで、数年来の懸案が完了した。歴史の転換点に立ち会ったという思いと、FM大阪の歴史がここからまた、この新しい空中線から送信されていくのかと、感慨もひとしおである。
【謝辞】本更新を行うにあたり、近総通殿、NHK(東京、大阪)殿、FM802殿、在阪民放TV各局殿、NHKテクノロジーズ殿、古河C&B殿、電気興業殿他協力いただいた皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

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