楽しくなければ!
現在1月後半、弊社ではシステムの更新に向け絶賛作業中です。久しぶりの大型設備更新、この手のプロジェクトでは打合せ段階からC/O~その後まで様々な問題が起きます。そういう時活躍いただくのが、プロジェクトマネージャー(通称 プロマネ:PM)さんです。
プロマネとは「高度IT人材として専門分野を持ち、システム開発時にその実現に向け責任をもってマネジメント業務を担う者。システムの目的を実現するために、①目標・計画を策定し、人材・資源を確保し、チーム編成し、推進する。②問題に対して適切な対策・対応を実施する。③関係者と適切にコミュニケーションを取り、ニーズを満たし、目的実現のために良好な関係を構築し維持する。(情報処理資格者試験HPより要約)」とあります。私も某メーカー時代にはPM的な事をさせていただき、その経験を基に情報処理資格の一つ「プロマネ」も取得できました(というか“ソフト開発の腕”がないので、マネジメント的なこれしか取れなかったのが真相)。
弊社でも多くのシステムが動いていますが、その更新時には色々なPMさんに担当いただきました。大雑把に見せて実は細かくチームを指導し全体統括している人、殿様のようにただ威張って下の者に任す人、金の算段だけする人、できるように見せかけて実は大雑把で責任感のない人、責任感がありすぎて頑張りすぎてこちらが心配になる人、凄く切れ者なのにアホなお客の立場になって対等に考えてくれる人、慎重すぎて“石橋を叩いて叩き割る”人etc。個性豊かな人達に担当していただき、うまくいったりいかなかったこともあります。中にはどうしてもソリが合わず、交代をお願いした方もいらっしゃいます。
システム開発や更新の場面では、方法論がいくら進化しても最終的には人と人とが対話し、やり合いながら作業するものと思います。時にはユーザー側とメーカー側が衝突し、バトルをしながらモノを作っていきます。その目的は全て、よりよいシステム・運用を目指すためです。ユーザーはよりよい運用ができるシステムを求め様々な要求をし、それに対しメーカーは、ユーザーの要望をただ受け入れたり、拒否したりするのではなく、いい形でシステムに反映していくこととなります。
特に仕様が厳しかったり、開発が遅れたり、最悪なのはユーザーとメーカーの意識がずれたままそれに気付かずに進んでいたりという“炎上プロジェクト”の場合には、ユーザーメーカーの立場を超えた作業が必要になることがあります。「お前はメーカー的発想をし過ぎで踏み込み過ぎ、もっとユーザー立場で!」とよく怒られますが、炎上プロジェクトの場合には、メーカーユーザー両方の立場を行き来して立ち回るほうが、安全で早くよいシステムを作ることが出来るのではないかな、と思います(言い訳)。
いずれにしろ、ユーザー/メーカーの立場の違いはあれ、モノを実現しカタチにしていくことは、技術者として“楽しいこと”だと思います。特に炎上プロジェクトでの完成時には、つらいことや衝突したことを忘れ、喜び合えるのが技術者の醍醐味だと思います。
「放送局は設備産業である」と先輩方に教えられました。放送局には様々な設備がありますが、要は設備を使ってコンテンツを制作し、それを売り、利益を得て、次の設備投資に備える…これを繰り返していくのが放送産業だと。そして設備を運用中には“次はこうしたい”とか“こうしたほうがいいのでは”という問題意識が生まれ、次の更新時に新しい技術を導入し、改善点を提案し問題点を解決し、さらによい設備を作り上げていく。そうすることでメーカーや放送局に技術力やノウハウが溜まり、業界が発展していく、これが科学技術の発展であり、その発展に寄与することが私たち技術者の生き甲斐であり楽しさであると。
設備がシステムになり、ICT機器になり、さらには「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」で示されたクラウド化して…。実際に触って、ああしようこうしようとユーザーとメーカーが喧々諤々、よりよいモノを作り上げていくという余地が徐々に失われている気がします。ユーザー側技術者の中には、クラウドであれば面倒な更新作業も不要となり、費用も初期費不要で良いのではないか?という人も出てきています。他人が作った見えない設備を単に利用するだけ、それは技術者として、楽しいのでしょうか?人と人がやり合い、問題を解決し、よいモノを作る。そんなプロセスがなくなるのは、楽しいのでしょうか?また、これから放送技術者として入社し育っていく若者たちがそういう「設備を使うだけの仕事」で生き甲斐をもって一生楽しくやっていけるのだろうか?そのあたり、すごく気になります。