ラジオ番組への応募作(エッセイ又はコラム):お題「雨」1200字程度
北京オリンピックの開会式の天気予報は豪雨でした。しかしご存じの通り雨は降らず開会式は行われました。これは中国の気象当局が消雨ロケット1000発以上を雨雲に発射し、雨雲を消し去ったからなのでした。なぜそんなことができるのでしょう?逆になぜ雨は降るのでしょう?今回はその謎に迫ってみたいと思います。
雨が雲によって降るのはご存じかと思います。まずは雲の正体について考えてみましょう。雲は白いですね。これは空気中の水蒸気が上空の冷たい空気によって冷やされ、細かな水の粒(雲粒)になって白く見えているのです。暖かい湿った空気が上空にあがり冷やされるとその空気中にためることができる水の量(飽和水蒸気量)が少なくなります。そしてチリなどの微粒子があるとその周りに水滴が付き雲粒となるのです。さて、その雲粒は0.01mm程度の粒ですが、小さくとも重力の影響を受け落下しようとします。ところが空気の落下速度による抵抗力(kv)に対し、落ちる力(=重さに比例:mg)が非常に小さいため、上昇気流に逆らえず、雲のままとなります。
そしてこの雲粒は雲の中を重力による落ちる力と上昇気流による昇る力の影響で上下します。上下しているうちに、雲粒同士が衝突し、くっついていくことになります。そうすると、粒の大きさが大きくなるとともに、重さも増えることとなり、雨粒となります。ある閾値(0.1~5㎜)を超えると、上昇気流より落下する力が上回り、粒は地表に落ちることとなります。これが雨です。
この動きを高校1年の1学期に物理で学んだ力学の式で表すとma=kv-mgとなります。ここでmは粒の重さ、kvは空気の抵抗力、maは雨粒にかかる力、gは重力を表します。雨が降るという事は右辺のmがある程度大きくなりmgも大きくなります。そうすると空気の抵抗力(kv)より大きくなり、雨粒にかかる力maは負となり落下するという事です。
さて、話を元に戻します。この雨の仕組みを使って人工的に雨を降らせてしまえば、雨雲はなくなり晴れとなります。その方法は「雨粒を作るチリなど微粒子を人工的に雲に与える」ことです。これをシーディング法といいます。シード、つまり、雨の種を雲の中に撒いてやるという方法です。種にはドライアイスやヨウ化銀、塩などが使用されます。これら種を雲に撒くことで、雨粒を成長させ、ある程度の大きさにすることで雨を降らせます。雨が降ることで飽和した水蒸気がなくなり、雲もなくなります。北京五輪では、このように人工降雨させることで人工的に晴れを作ることができました。
さて、もうすぐ東京オリンピック。北京五輪の豪雨予想のように“うっとおしく”世間を覆っているコロナも、科学の力で消し去り、快晴の下、晴れ晴れと開催することが出来たら、と思います。科学の力で人類の問題を解決し、明るい未来をつくる。何とロマンチックな事でしょう!科学万歳。
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