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ラジオ番組への応募作(エッセイ又はコラム):お題「時計」1200字程度

時計は人類にとって必須の機器である。古くから物理科学の世界ではMKS単位系として長さm、重さkg、時間(秒)sを基本単位として様々なものが測定され、この基本単位を元に人類は発展してきた。正確な時間単位なくしては科学技術の発展がないだけでなく、人々の相互理解もできない。そして正確な時間を測るためには正確な時計が必須である。
朝日が昇り、太郎はその朝日によって目覚めた。今日は仕事の日である。起きて仕事場へ向かわねばならないが、これは命懸けである。なぜならこの世界には正確な時計がないからである。
太郎は駅に向かう。電車は適当にしか来ない。正確な時計がないので時計を基準にすると上り下りの電車が衝突してしまうためだ。そのため目視で見通せる範囲でしか電車を走らせることができない。この世界では、歩くことが一番安全である。
このような危ない思いをして太郎は仕事場に着く。太郎の勤務はおおよそだ。勤務の長さも人によって異なる。そのため給与もいい加減な計算となる。個々人で知っている時刻が違うから会議時間も決められない。会議が開けないことで、交渉や調整が出来ず、揉め事は絶えない。
この世界には正確な時計がないので、金融機関もTVもラジオも携帯もない。時間の基準が違うので銀行では振り込みなどがエラーになる。時間の基準が違うので株の売り買いで大損する。TVラジオでは正確な時計がないので周波数というものが測れない。そのため電波が送受信できないのだ。正確な時計がないので時間管理が必要な投薬もできないし、時間管理が必要な医療機器も作られないので、病気になったら生死にかかわる。正確な時計がないのでデータを正確なタイミングで送受信しあう情報通信ができない。情報通信網がないので、人々は遠方と意思疎通が出来ない。
対面で話すことができる自分の属するごく小さな集団内だけでしか円滑な意思疎通ができない。そして意思疎通できる範囲が小さいため大きなコミュニティは存在しえない。大きな集団に必要なルールも作られない。よって、この世界はばらばらである。お互いの小さなコミュニティ同士で意思疎通が円滑にできず、疑心暗鬼になり攻撃ばかり行っている。
そんなあるコミュニティに発明家がいた。正確な時計がないのに物理的に正確な測定方法を開発し大きな爆弾を作った。その動機は敵対するコミュニティを威嚇するためであった。いかに天才発明家といえども疑心暗鬼の世界観からは脱却できなかった。
敵対するコミュティティの人々はこれを威嚇と思わなかった。意思疎通できないまま、疑心暗鬼の心が勝ち、連鎖的に敵対するコミュニティに攻撃を仕掛け、時計のない世界は大爆発し破滅した。たかが正確な時計がないだけで。
やはり正確な時計は人類にとって必須の機器であり、科学が発達すれば情報通信技術がもっと密になり、それを制御するためにもっともっと正確な時計が必要になるだろう。
(文字数1999字)


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