伝播するナニカ

随分昔に、【グラン・ローヴァ物語】という漫画を読んだ。少女漫画だ。

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他人を騙して日銭を稼ぎ、街から街へフラフラと生きていたチンケな詐欺師が、ある時、世界を如何ようにも変えてしまえる程の膨大な魔力を持った石を自分の身の中に取り込んでしまう。

肉体や精神と同化してしまったその石は取り出す事も敵わず、世界の秩序を守らんとする権力は彼を世界と切り離された場所で幽閉するべきと奔走するが、根っからの悪人ではなかったその詐欺師は縁をもった者を手助けしたり救ったり愛したりしながら、その権力から逃れ続ける。

しかし、自分の中のその魔力の大きさと、自分では制御しきれないその恐ろしさに気づいた彼は、自分から閉じこもる道を選ぶ。

それでも、最終的には世界を放浪する賢者に彼はなる。その石の魔力をその身に宿したまま。
彼が触れた人間には彼のその魔力が微かに移り、それは人から人へ伝播して、いずれその力は全人類に行き渡るだろうという確信を彼は持ちながら。
世界を変えてしまう力を全人類が手にしたとしても、人がそれを全て悪しき力に変えてしまう訳ではない、人はその力を善きことにも使うはずだと、彼はそう信じて、放浪の賢者となった。
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みたいな話だ。Wikipediaのコピペじゃなくて、僕がうろ覚えのストーリーをまとめたものだから、間違ってる箇所もあるとは思うけど、大体こんな感じだったはずだ。

人が触れ合う事で伝播していくというのは、どうしてもウィルスをイメージしてしまうかも知れないけれど、人と人が関りを持つ事で伝播していくものの中には、優しさや思いやりもあれば、やる気もあるだろう。また、人と関わり合う事でストレスが薄れたりもする。もちろん、怒りや悲しみが伝播することもあれば、人と関わり合う事でストレスを取り込んでしまう事もあるだろう。

今は、直接会って笑い合いたい人とも会えず、どうしても気になってしまうトピックを集めていると暗いモノだらけになっちゃって、個人が苛む負の感情から負の発信が連鎖的に増えている……そんな状況が生まれているような気もするんです。

直接接触じゃなくても、人から人へナニカは確実に伝播しています。そのナニカが暗いものじゃなくて明るいものであって欲しい。
そんな事を思うのです。

今のところ、僕はあまり目にしていませんが、「不謹慎だろ!」と何にでも噛みつきに行く人が世界をより暗くさせる一番の因子だなーと思います。

明るい話題を提供してくれる人を、少なくとも僕は熱烈に支持しています。

明るい気持ちの伝播はとても良いものだと、僕はそう信じています。

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