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データからみる周防大島町民の健康度

さて、今回令和6年12月定例会で、国民健康保険税率を一部引き下げるという議案が上程されました。
被保険者(加入者)にとっては、経済的にとっても大変助かる施策です。

しかし、

  • 人口減少に伴い国保加入者も減少している

  • 加入者における高齢者の割合が高いなど、低所得世帯が多く、保険料が軽減されている方が多い

  • 一人当たり医療費が増大しており、保険料支払いも増大している

といった町国保の財政課題は進行しています。


また、町は、「周防大島町の概要」という公表資料の中で、

…元気なお年よりの多い「長寿の島」、「生涯現役の島」として知られ、…

周防大島町の概要より抜粋

と、我が町のことを紹介しています。

確かに、元気なお年寄りの方々に、本町の暮らしは大いに支えられています。


イメージは大事ですが、実際のところどうなのでしょう?
本当に、
元気なお年寄りが多いのか、長寿の島なのか、生涯現役の島なのか。
私自身、そのように年を重ねていくことが出来るのか。
ちょっとデータを紐解いて、考えてみたいと思います。


〇平均余命・平均自立期間が、よそと比べて短め

周防大島町データヘルス計画(令和5年度)によると、平均余命(寿命)・平均自立期間(健康寿命)ともに県、同規模自治体、国の平均と比べても短いというデータが示されています。
データ上は、”長寿の島”とは言い難いかも。

平均自立期間:要介護2以上になるまでの期間を、「日常生活動作が自立している期間」としてその平均を算出したもので、健康寿命の指標の一つ。
男性平均余命:78.2年(国平均-3.5年) 平均自立期間:76.9年(国平均-3.2年)
女性平均余命:86.2年(国平均-1.6年) 平均自立期間:83.3年(国平均-1.1年)

平均余命と平均自立期間(周防大島町データヘルス計画)


〇要介護(支援)認定率も、よそより高め

こちらも、山口県平均、同規模自治体、国平均と比較して、高めになっています。

要介護(支援)認定率(データヘルス計画)

サポートを求めている人に支援が届きやすい…?と受け取ろうとしたのですが、
認定率は、介護予防の効果のアウトカム(成果や結果、効果)とも言われていて、高いのはあまり良いとも言えないと、介護業界の方に教えていただきました。

”生涯現役の島”というのも、なかなか厳しいかもしれません。

介護人材が不足しているということもありますし、なるべく自立期間を長く生活していくことがほんとに重要だとわかります。

〇一人当たり医療費が高め

…国保加入者の減少に伴って、医療費全体は減少しているけど、一人当たりの医療費は、高くなりつつあります。これは、全国的に言われていることではあるのですが、うちの町は、特に高いようです。加入者のうち高齢者が占める割合が高いというのも要因の一つではあると思いますが。

国保の被保険者一人当たり医療費(データヘルス計画)


〇特定検診受診率も低い→病気に気づくのが遅れがち?

町が受診率を上げたいと頑張っている、国保加入者の健康診断、「特定検診」。こちらも、県内平均と比べても受診率が低く(ちなみに都道府県ランキングでは山口県は40位)なっています。
健診を受けたら、早めに不調に気づいて軽いうちに対策を打てる可能性がある、ということは言えると思います。
一方で、健診の結果、課題のあった方への「特定保健指導」にいたっては、なんと県内ワースト。せっかく健診受けて課題が見つかっても、改善につなげられていない方も多いということだと思います。

特定検診受診率・特定保健指導終了率ランキング(グラフで見る山口県の国保)

「悪いところが見つかったら嫌だから…」ということで、健診をあえて受けないという方もいらっしゃる模様。気持ちが分からなくもないけど、将来のことを考えたら絶対早く見つけたほうがいいですよね。

〇受診率が低く、医療費が高いということは…!?

県内市町の、一人当たり費用額(保険支払い額)と医療機関の受診率を相対的にみると…

なんと、周防大島は一人当たり費用額が高く、受診率は低いという結果に。
つまりは、なかなか病院に行かないけれど、行ったら重い病気になっているという方が、他の市町よりも多い…ということなのでしょうか。

〇「生活習慣変えなきゃ」とは思ってるけど踏み出せない人が多い?

健康診査のときの、質問票への回答をまとめたデータをみると、生活習慣を改善する気がない、という人と、生活習慣改善する気はある!という人の割合が、両方、よそとの比較で高くなっています(なぜ!)。
一方で、実際に生活習慣の改善を始めている人、習慣づけている人の割合は、他所との比較で低いという状況になっています。

令和4年度調査票調査より(データヘルス計画)

生活習慣を改善して健康度を上げたい気持ちはあるけど、実際の行動に移せていない人が多いということが言えるのではないでしょうか(はい!私も!)。

〇現役世代に占める国保加入者が多い→自営業者が多い
25歳から59歳まで、5歳階層別で国保加入率を調べてみると、県内市町と比べて加入率が高いことが分かります。

国勢調査(R2)、国民健康保険実態調査(R2)より筆者作成

これは、自営業者が多いといわれる本町の特徴を表しているのでは?と考えます。
会社員や公務員など雇用されている場合は、けっこうしっかりと健康診断を受けると思います。
しかし、自営業者では、しっかり自覚をもっておかないと、受診し忘れたり、忙しくて機会を逸したりと、疎かになりがち(私もそうでした)。

本町の特徴的な産業(農業、漁業といった一次産業や、飲食業・宿泊業などの観光産業)を担う自営業者の方々に、生涯現役で、やりがいをもって元気に働いていただくためにも、若いうちからの健康習慣を身に着けていただくということは、本人だけではなく町にとっても重要なことだと考えます。

〇大切なのは、何?何から始める?

健診受診率を上げないと、ということはわかりますが、手段が目的化してしまってはいないでしょうか。
根本的な課題、町民の健康維持・向上という課題が改善しなければ、住民のQOL(クオリティ・オブ・ライフ、一般的には「生活の質」「人生の質」「生命の質」。生きる上での満足度や快適さを表す主観的な概念)の向上にはつながらず、町の財政運営改善にもつながりません。

今回、目を白黒させながら様々なデータをみたり、
町民の方に話を聴いたりして感じたことは、

わかっちゃいるけど…
具体的に何をどうしたらいいのか、わかりにくい。
運動しよう、塩分控えよう、規則正しい生活を…
という一般論はわかるけど、私は一体どうしたら?

パーソナルトレーナーがいるようなトレーニングジムが身近にあるわけでもなく、
そもそも運動しない人や、濃いめウマ飯が好きな人に(=私)、
 運動してみよう!した方が気持ちがいい!
 塩分少なくても美味しいじゃん!
と思ってもらうことがスタートなのでは?
「やる気」になってもらって、「やり始めて」もらい、「やり続ける」ことで改善していくことが大切なのですが、そのためには、ポジティブな気持ちで取り組めることがあったほうがいいのではと考えます。

健康診断→注意を受ける→指導を受ける
という、責められ系だけではなく。


〇伸びしろがたっぷりあるということ


最初に、周防大島町は、自らのことを、
元気なお年よりの多い「長寿の島」、「生涯現役の島」
と紹介していると書きました。

元気なお年寄りが多いのは肌で感じています。

これに、長寿の島、生涯現役の島というのが雰囲気だけではなく実現となれば、ただでさえ元気なお年寄りが多いのに、もっと元気なお年寄りが多い島になるということでは?

平均余命も、平均自立期間も、介護認定率も、一人当たり医療費も、特定検診受診率も、生活習慣も、改善の余地がいっぱいあります。てことですよね?

やれることがたくさんある!希望しか感じません。


【参考にした情報】
周防大島町データヘルス計画
第2期周防大島町健康増進計画後期計画
やまぐち健康マップ
グラフで見る山口県の国保
国民健康保険実態調査
                 など


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