周防大島町の下水道事業を考える 中編
今回(R6.3議会)、下水道事業について、「財政を圧迫する下水道事業の今後」と題して一般質問をする予定なのですが、今質問しようと思った理由は、公営企業は全て経営が厳しいが、下水道事業の方向性が一番心配だ、ということです。
3つの公営企業とは、、水道事業、下水道事業、病院事業です。
前編では下水道事業の令和6年度予算案をもとに、どのくらいの赤字経営になっているかを確認しましたが、次に、全国の自治体と比較した状況も確認してみたいと思います。
総務省による財務状況把握の結果から
総務省は、「地方公共団体に公的資金貸付をするのなら、貸付先の財務状況や事業の収益性等をちゃんとチェックすることが必要だよね」という財政制度等審議会からの指摘(H16)を踏まえて、”借金をちゃんと返せるのか?”ということを確認するために、「財務状況把握」を行っています。
周防大島町には直近で令和4年度にヒアリングが実施され、財務省から町に「結果概要(診断表)」(令和3年度について調査)が交付。
財務の健全化に向けた”貸し手”としてのアドバイスも付されています。結果は町のウェブサイトに公表されています。
貸付先として、債務、積立、収支の状況から、現状得に問題はないし、今後も大丈夫そう、という総合判断だったようです。ホッ。
ただ、その他の面から財政運営的に留意する点として3つ挙げられている懸念点の1つが、これ。
様々な公共的事業を行うための一般会計から、企業会計に繰出す(経費の一部を負担したり補助したりすること)金額、それが一般会計を圧迫するのではないか、懸念があるということだと読み取りました。
町の財政状況を見るだけではなく、類似団体(たくさんある自治体の中で、人口規模や財政規模など似た自治体)の中で比較することで、他所と比べてどうか、という目安になります。
3つの公営企業すべて、一般会計から繰出す割合が類似団体の平均より高くなっています。
順位を観ると、下水道事業についてはワースト1
「順位より比率が実際の負担率のほうが問題」
ともいえますが、赤字になりがちなこれらの公営企業において、他自治体よりも経営的にうまくいっていないということが分かるかと思います。
ちなみに令和6年度予算案の下水道事業への操出比率は4.46%となっています。
他の公営企業はどんな改善策を目指しているか
病院事業
操出比率のもっとも高いのが、病院事業です。
議会の病院・行政改革特別委員会でも常に取り組むべき項目として長年議論が重ねられています。
もうすぐ、経営強化プランが策定され、来年度から取り組みがスタートします。これは、将来にわたって持続可能 な地域医療提供体制を確保するため、地域の実情を踏まえつつ、必要な経営強化の取り組みをしていこうというものです。
さらに、令和6年度には、病院事業再編計画の第二期計画策定を予定しています。高齢化と人口減少が進む中で、必要な医療をどう残していくか、議論をしているところです。
本町の病院事業局は、現在2つの病院と1つの医院、2つの介護施設と1つの看護学校を経営しています。
町内には民間の医院や介護福祉施設が複数あり、また町内では補えない医療や圏域全体での医療サービスの規模や質の確保について、”柳井医療圏”という考え方のもと、調整がはかられようとしています。
企業局としての経営改善と、圏域の中の公立病院としての存在意義と、勘案しながらの事業改革が求められています。
水道事業
水道事業は、令和2年から、民間事業者に包括業務委託(料金徴収業務や開閉栓料金徴収、窓口業務の民間への委託)を行い、経費削減を図っています(料金徴収は下水道も併せて委託)。
また、先日R6.1.30には柳井圏域で水道事業の統合に向けて協定を結び、令和7年度の「経営統合(※)」を目指しています。
水道事業は、昔は町内で水源地を持っていましたが、平成12(2000)年から本土の水源地から水をひくようになりました(R6現在、13の配水区のうち4配水区は自己水源)。水道普及率は91.24%で、他は地区水道という地区特有の水源や、井戸水などを利用しているところがあります(かく言うわが家も井戸水使用)。
水源を共有する自治体で連携し広域化・効率化を図っていこうというのは自然の流れかなとも思います。
老朽化した水道管の更新、実際の使用量よりも多い責任水量分(柳井地域広域水道企業団との契約)の購入が行われていることなど、水道事業も課題は多く、経営統合後まで先送りするのではなく、来年度中にもある程度考えておかないといけないことだと思います。
そして下水道事業は
下水道事業の現状と今後について、次の資料を基に考えました。
下水道事業経営戦略(R3.3)
汚水処理施設整備構想(R4.3)
特定環境保全公共下水道事業計画変更申請書(案)修正版
一般廃棄物処理基本計画(案)中、生活排水処理基本計画(案)
施設も管渠も完成して使っている公共下水
農漁村集落排水と特定環境保全公共下水道のうち安下庄処理区については、管渠も処理場もだいぶ前に完成して、使用されています。
農業集落排水の水洗化率(整備された区域の中で接続している人数)はおよそ80%となっています。
漁業集落排水は、離島の浮島に整備されていて、水洗化率はほぼ100%。
処理人口の減少や処理施設の老朽化に伴い、小さい処理区を他の処理区につなげて、処理場を集約するなどの改善が行われてきています。
これからは、ストックマネジメント計画に基づいて、管渠の更新や施設の修繕等を着々と行っていくことになるのだと思います。
施設は完成して管渠を整備しつつある下水道
残る2つの処理区、「東和片添処理区」と「久賀・大島処理区」についてですが、処理施設はどちらとも整備が完了しています。
今回示された令和12(2030)年度までの計画案では、これまで整備されていなかったエリアに、少しずつ処理区域を拡大していくことになっています(特定環境保全公共下水道事業計画変更申請書(案)修正版 。
緑色のところは以前からの計画区域、赤色のところが今回拡大された区域、黄色のところは、以前は計画されてたけど低地だったり河川の位置関係だったりで、公共下水道に繋ぐことができないと判明して削られた区域です。
今令和6年なので、あと6年で完成を目指しているエリア、ということだと思います。
処理区域に追加されるとどういうことが起こるかというと、個人的に合併浄化槽を設置しようとした場合に、補助をうけることができなくなります。また、既に設置している場合には、修繕にかかる補助を受けることができなくなります。
町が示している公共下水道の最終形?
さらに、令和17年度を目標とした汚水処理施設整備構想(R4.3)では、次のような図が示されています。
…マニアックに地図を見比べないとわかりにくいかもしれませんが、延伸中の2つの処理区は、さらにエリアを拡大しているようです。
”持続可能な”公共下水道事業とは?
たとえ目標の接続率に向上したとしても、人口減少の影響により、下水処理人口は、現在よりも少なくなるという予測が示されています。
また、財源をどのように予測しているかというと…
建設改良費は年々減少していきますが、その財源のほとんどは起債と国費。一般財源からの繰入すらわずかで、受益者負担金はちょびっとです。
管理運営経費は年々増加し、一般会計からの繰入が財源の多くを占めるという予測になっています。
一度根本的に見直すべきでは?
現在、全国的に人口減少は加速しています。
自治体によっては、将来人口予測と公共下水敷設vs合併浄化槽敷の経費試算を行い、下水道計画区域を見直して区域を縮小して合併浄化槽を促進することにしたところもあります。
県内では、他に山陽小野田市さんも、新たな事業計画では同様の理由で計画区域を縮小しています。
これは、計画見直しの数年前から、下水道い事業検討委員会を設置し課題を整理・調査して、市に対して提言が行われており、それを計画に反映させた、という流れのようです。
また、広島県の安芸高田市では、公共下水道の整備されていない区域には、拡大はせず、合併浄化槽の設置をかなり市が負担して推進しています。
下水道が整備されることは住民の衛生的な生活にとっては好ましいことですが、それにどのくらいお金がかかるのか、維持していくためにはどのくらい将来に負担がかかるのか。一方合併浄化槽を個人個人が設置し、その負担軽減を行政がした場合にはどのくらいかかるのか?
しっかり試算して、比較検討し、本当の意味で持続可能な下水道普及を考えるべきだと思います。