周防大島町の下水道事業を考える 前編
例年、年末頃から年度末にかけて、その年度に策定することになっている各種行政計画案が示され、”パブリックコメント”の募集が行われます。
「これから○年間の町のこの分野の事業を、こういう方向でやっていきます」という計画を(本町の場合はほとんどコンサルに委託して)策定するときに、念のため見落としている意見や修正点がないか、町民や町内で働いている方などにみてもらい、意見を聞く、というものです。
本町では、今年は
・一般廃棄物処理基本計画
・病院事業経営強化プラン
・特定環境保全公共下水道事業計画
などなど。あといくつかありました(町のウェブサイトがリニューアルしたため、見つけられなくなっています…)。
議員活動をする中で、どうしても日頃から興味関心が高い政策に意識が行きがちなので、私は、計画案が公表され意見募集が行われているときには、なるべく目を通して考えるきっかけにしています(見逃すことも多いのですが…)。
このうち、今回私は一般廃棄物処理基本計画(案)と、特定環境保全公共下水道事業計画(案)を読んで、意見を提出しました。インフラについては難しくてよくわからないのですが(議員として反省)、今後の下水道行政についてちゃんと考えないといけない、と思ったからです(一般廃棄物処理基本計画には、生活排水の計画も含まれています)。
計画案を読み込むにあたって、情報収集や考察を行ったので、私の課題感を整理して、この度一般質問をすることにしました。
周防大島町の汚水処理の種類と普及率
公共下水道の構造的分類
公共下水には構造的に2種類あって、汚水と雨水を公共下水道管で合わせて一つの管で流し、汚水も雨水も下水処理場に送って処理するものを合流式下水道といいます。東京をはじめ、早くから公共下水道が整備された地域は、この手法が多いそうです。
本町のように、昔から雨水は川や海につながる側溝などがあって、近年になって公共下水が整備されてきた地域では、雨水とは別に汚水だけを流す管を埋設し、下水処理場に送って処理する分流式下水道が多いそうです。
処理するのが町の場合と個人の場合の汚水処理施設がある
本町が敷設・管理運営する公共下水道には(国の縦割り的に)3種類あります。
農村漁村の生活環境の改善を目的とした農業集落排水、漁業集落排水。もう一つは、処理対象人口が概ね1000人未満で水質保全上特に必要な地区に整備される特定環境保全公共下水道です。
あとは、個人が自分の敷地内に敷設・管理するものに、合併浄化槽での排水処理(家庭から出るすべての生活排水を敷地内に埋設したタンクにためて、微生物などの働きにより有機物を分解してから河川等に流す)、トイレの汚水のみを浄化する単独浄化槽での処理があります(この場合、台所などからのほかの排水は、そのまま河川や海に放出されます)。
排水処理が一切されない家庭もあり、その場合のトイレは、汲み取り式(いわゆるボットントイレか、簡易水洗)となります。
下水処理普及率
公共下水道に接続している家に住んでいる人口と、合併浄化槽を備えている家に住んでいる人口を合わせて、全体の人口で割ったものを”汚水衛生処理率”と言います。R4現在で本町は58.9%。山口県の平均は89.5%、全国平均は92.9%となっています。子供のころから比べると、だいぶ整備されたように感じますが、結構低いことを知りました。
下水道財政の仕組み
noteを検索していると、大阪府松原市の公式noteでわかりやすく解説してありました。
これを参考に、わが周防大島の下水道事業財政の状況を簡単にご紹介します。
下水道は(本来)独立採算を目指す事業(なはず)
町の仕事に関する経費については、福祉や教育、消防防災や役場運営に関することなど、そもそも税金を投入することで成り立ち、儲ける余地のほとんどない事業について運営するための「一般会計」と、目的を限定して経費を分けて会計経費を管理する「特別会計」(介護保険、国民健康保険、後期高齢者医療、渡船事業)、利用料金など収入がある事業で、本来事業収入を主な財源として、独立採算の原則により特定の事業を経理する「公営企業企業会計」があり、これは下水道事業のほか、上水道事業、病院事業があります。
施設を整備するための経費と管理運営するための経費
本町の下水道事業についてみてみると、令和6年度予算案では、次のようになっています。
建設改良費
財源はというと、67%が企業債(借金)の起債。そのうち46%が「公共下水道事業債」、次いで「過疎対策事業債」が43%となっています。
17百万円ある「受益者分担金」は、下水道に繋ぐかどうかは別として、下水道が整備されたエリアの家は、庭も含めた敷地面積に応じて、”受益者”ということで負担金を支払わなければならないと定められています(整備されたときの一回だけ)。
下水道に繋ぐには個人負担の経費も多くかかります。そんなリフォームを予定していなくても支払わなければならず、一人暮らしでも庭が広ければ、その面積に応じた負担額が提示されます。
支出をみると、エリア拡大に伴う管渠の延伸にかかる経費が71%、13億円にのぼります。公共下水道のうち、環境保全公共下水道の「東和片添処理区」は、数年前から新たに島の北側、三ヶ浦地区に処理区を広げ、「久賀大島処理区」は2021年に処理場は完成し、順次計画に沿って管渠を該当エリアに敷設延伸中です。
処理場費は、老朽化に伴う処理場の修繕にかかります。本町には、処理場が9つあります。
管理運営経費
財源はというと、下水道使用料で賄われているのは1億1,200万円、ほんの9%です。最も多いのは一般会計からの補助金、次いで一般会計からの負担金です。
負担金と補助金の違いですが、負担金は別名「基準内繰入金」といい、毎年総務省から示される金額で、「このくらいは一般会計から下水道事業に繰出しをても妥当で、その一部は国から地方交付税などで支援するよ」とされている金額です。
一方、補助金は別名「基準外繰出金」といわれ、基準内繰入金を超えて一般会計から補填する金額。その全額が一般会計の持ち出し負担になります。この部分は本来、使用料 により負担すべき部分とされています。ぶっ飛んだ例になりますが、この部分を使用料で負担するとしたら…下水道料金は現在の5倍になります。
支出の半分は減価償却費が占めますが、これは、2021年に完成した久賀大島処理区の処理場が大半を占めていると考えられます。
また、7%(7,500万円)は、企業債の利子が支払われています。
思っていた以上に、一般会計に負担が食い込んでいる
整理してみると、自分が思っていた以上に、下水道事業が一般会計に重くのしかかっているとわかりました。
もしも、下水道事業に「基準外」の繰出しをしなくて済むとしたら、4億4,400万円が削減できることになります。または、その分他の事業に使うことができる、という考え方もできます。
令和6年度予算でいうと、小中学校費は3億9,000万円、社会教育費は2億9,200万円。下水道事業に対する負担額の大きさに、改めて驚愕しました。
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思った以上に長くなりそうなので、後半はまた後日にします。