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周防大島町の国保税率が10年ぶりに改訂される議案!

国保について記事を書こうと調べものをやりかけたとき、うっかり中途半端な「国保税はなんで」で検索をかけてしまった。

ーなんで払わなきゃいけないの?
ーなんで去年より高くなったの??

など、素朴で切実な質問が各自治体に寄せられている模様。

私も個人事業主となってからは国民健康保険のお世話になり、毎年ちゃんと納めています。

公務員の時は、給与明細は”手取り”しか気にしていませんでした。
無頓着だった、というよりも、気にしたってどうこうできるものでもないし、額の大きさにいちいち慄きたくなくて、敢えて目をそらしていたのかも。

「自分は自営業で、一生懸命働いているけど、働けば働くほど国保税が上がって、国保税を払うために働いているのかとさえ思えてくる」
「こっち(うちの町)の実家と、他の町にも家があって。行ったり来たりしているけど、国保税が高いと聞くから住民票あっちに置いたままなんよね。」

住民の方々の声(要約)

という意見を、これまでも聞いてきました。
かく言う私も、実は昨年個人事業(宿)のほうで、山口県の「宿泊施設の高付加価値化等支援事業」というのを活用して、施設に投資を行いまして。補助金は”雑収入”として計上されるため、確定申告での収入が増大しました。
そのため今年は、度肝を抜かれる額の国民健康保険税を払っております…
(注:私にとって、なので、普通レベルなのかもしれません)

自分事となるとがぜん課題意識が高くなる。
普段から住民の方々からの声を、このくらい自分事として全て受け止め考えるべきだ!との啓示かもしれません。


周防大島町の国保税率の10年ぶり改訂、引き下げ案が提出されました!

今まで不勉強だった反省も込めて、この12月議会で国保税率の引き下げを提案する一般質問をしよう!と準備をしていましたが、

なんと

執行部からの議案「周防大島町国民健康保険税条例の一部改正について」で、国保税率を引き下げるという案が上程されたではありませんか…!!!

〇引き下げ案の内容

国保加入者が払っている国保税は財源目的が3つあって、医療分(国保加入者の医療保険の分)・後期支援分(75歳以上の後期高齢者枠の医療保険を支援する分)・介護保険分(介護保険を支援する分。40歳以上65歳未満が負担)があります。
今回税率を下げる案が示されているのは、この中の医療分です。

【引き下げ案】
所得割:現行8.90%→令和7年度案7.70%(1.2%引き下げ)
均等割:現行27,400円→令和7年度案27,200円(200円引き下げ)
平等割:現行25,800円→令和7年度案23,900円(1,900円引き下げ)
【〇〇割って?】
所得割→(前年の総所得金額-基礎控除額)×税率
均等割→国民健康保険加入者数×税額
平等割→1世帯当たりの税額

〇過去10数年の周防大島町の国保事業を取り巻く変遷

引き下げの妥当性を考えるために、まず、過去10年くらいの周防大島町の国保事業について、執行部からの議会での説明や「周防大島町国民健康保険運営協議会」の議事録、国全体の動きを紐解いてみました。

  • 平成23年度から、国保特別会計(国民健康保険事業専用の財布)が赤字で、一般財源(町の事業全体の財布)から毎年赤字補填が行われていた(平成26年度当初予算ベースで8400万円)。

  • そこで、平成27年度から税率を上げたところ、平成28年度からは赤字が解消されて、国保基金を創設して積み立てを始めた。

こうして、令和6年度予算ベースで、国保基金(貯金)は、6億5千万円にのぼっています。
しかし、赤字解消の要因は、町の国保税率アップのほかに国全体の制度改正も大きく影響していると感じます。

〇税率アップ以外の、国保事業会計改善の要因

  • 平成27年から保険者支援制度(低所得者数に応じ、保険料額の一定割合を公費で支援)が始まって、国・県・町による国保の財政支援が手厚くなった。

  • 平成30年度の診療報酬改定で医科の診療報酬本体が引き下げられた。

  • 平成30年から国保制度改正により、それまで町単独で運営していた国保事業を、県も財政運営責任を負うなど、県内全体の国保運営を支えるようになった。これにより、(法で決まっている)給付費は、県が全額出してくれるようになった(その代わり、その財源として町は県から指定された額の納付金を支払うようになった)

このように、本町の国保加入者に対する保険税率アップのほかにも、国全体で国保を何とか続けていこうという制度改正により、国保財政が改善されたのだと思います。

〇本町の国保税は高い?!高すぎ?!

本町の場合、人口の約1/3が国保加入者で、その半数が前期高齢者となっています。
人口減少とともに国保加入者数も減少、また低所得の加入者が多い(半数が前期高齢者というのも要因と思います)。一方で一人当たりの医療費は増加してる。

どこの国保も同じような課題を大なり小なり抱えているとは思いますが、本町は県内自治体の中でも、全国平均でも、また全国の類似自治体と比べても医療費が高くなっています。

周防大島町データヘルス計画より

そして税率は、県内自治体の中でもトップクラスに高いです(令和6年度医療分では2番目の高さ)。

山口県 令和6年度国民健康保険の標準保険料率等について より

低所得の方には減額措置がありますが、実際の税額(調定額)でみても、県内6番目の高さとなっています(令和4年度)。つまりは、自営業で頑張っている人たちがとても多く負担している、ということなのかな??

山口県国民健康保険団体連合会 グラフで見る山口県の国保 より


一方で、積み立てに回している金額は、1人当たり3万円(県内トップ)…。

山口県国民健康保険事業状況について 令和4年度分より


将来に備えるにしても、現在の現役から取りすぎな感は否めません。

〇国保料は都道府県単位で統一に向けて調整中

現在、国では、国保を市町村単位ではなく都道府県単位で運営していこうという動きがあります。(参考)保険料水準統一加速化プラン(厚労省令和6年6月26日)

平成30年の制度改革により、都道府県内の保険給付を管内の全市町村、全被保険者で 支え合う仕組みとなったので、逆にいえば都道府県内のどこに住んでいても、同じ保険給付を、 同じ保険料負担で受けられるのが望ましいよね、という理屈です。各都道府県単位で市町村と調整しながら進められています

統一に向けた調整は2段階あって、
第一段階:納付金ベースの統一(市町村ごとの医療費水準を各市町村から県への納付金に反映させない)
第二段階:完全統一
となります。

第二段階の完全統一まで達成しているのが、大阪府と奈良県です。

大阪府:令和6年度より大阪府内の保険料水準が完全統一になりました
奈良県:令和6年度からの国民健康保険の県内保険料水準統一が完成しました。

山口県では、
令和12年度までに第一段階の納付金ベースの統一を、令和15年度までに完全統一をという目標で、県と市町村とで調整していく予定だそうです(完全統一についての年度目標は、質疑で回答いただきました。遅くとも令和17年度までには、という国の目標もあるようです)。

〇町が、引き下げてもいいと考えた理由

本会議ではじめに執行部が説明した引き下げ理由は、

物価高騰による景気の低迷などによる被保険者の経済的負担の軽減を図るため

とのことでしたが、大前提として、基金が積みあがりつつあるという現状と、今後の”国保の県内統一”への動きを鑑みて、引き下げても当面のゴール(国保県内統一)まで持つと考えた、というのが、本当のところではないでしょうか。


各議員からあがった質問に対する回答まとめ

〇国保財政への影響は?

試算段階で、国保税収が約4,000万円の減収、収支全体で約5,000万円の赤字計上となりそう。その分をこれまで積み立てている基金(令和6年度予算ベースで6億5千万円)から補填することで賄う予定。年間5千万取り崩しても、10年は持つという試算。

〇家計への影響は?

モデルとして一例を示すと、夫婦、子ども二人の4人世帯で、世帯所得300万円とすると、年間3万3千円程度の減額となる。
どの収入レベルの世帯でも、軽減世帯含めて、実質減額になるようにシミュレーションして減税幅を考えた。幅はあるが、だいたい5~7%の減額になる。

〇今後定期的な税率の見直しは?

これまで10年見直しを行わなかったし、今回は医療分のみの改訂だけど、今後は、国保財政の状況を見ながら、3年を目途に見直しをしていこうと考えている。


これまで10年間、黒字にもかかわらず、税率の見直し(内部で検討はあったのかもしれませんがわかりません)は行われず、ここまで来たのですが、今後は状況をみながら「前の年と一緒で…」ではなく、検討していこうという前向きさは、うれしく感じました。

ただ、大前提としての”一人あたりの医療費が高い”という大きな課題は全く解決の糸口をつかんだわけではありませんので、その視点からの一般質問を考えたいと思います。

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