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手帳大賞という名の珍道中 1

昨年の秋に祖母を亡くした。
私にとって数少ない信頼できる大人の1人だった。親にさえ理解されない事、聞いてもらえない事もおばあちゃんは聞いてくれた。いつも私の味方だった。大好きだった。

幼少期の私と祖母

そんなおばあちゃんが空に還ってしまった。それは自然な事だと頭では理解しているが寂しさから心が追いつかない。お風呂に入る時、眠りにつく前、1人になる度に私は泣いていた。

亡くなる半年前、一緒に散歩した時。

どこにも誰にも吐き出せない気持ちも寂しさも身体に納めきれなくなり私は手帳に吐き出し始めた。いつものように手帳を開くと手帳のポケットに挟まったままのリーフレットに目に止まった。

「思わず手帳にメモした身近な人の”忘れられないひとこと”をお送りください」

すぐにパソコンを開きキーボードを叩き始めた。正直、受賞するとかしないとか、そんな事どうでも良かった。祖母の言葉、一緒に過ごした時間を誰かに聞いてもらう事で、絶対に消えないものとして残したかったのだ。

パッと思い出した言葉を選んだ。パッと思い出すという事は1番深く私の心に刻まれていたからだろう。それは

「逃げなさい、逃げるなと言われるのは人間だけなのよ。」

子供の頃、変な訛りのある日本語を喋る子供だった私はいじめという洗礼を受けていた。その頃に祖母に言われた言葉だ。

応募完了した夜に、ようやく私は泣き終えた。1人になると波のようにやってくる悲しみも寂しさも落ち着き、すっかり日常を取り戻した。手帳大賞に応募した事などすっかり忘れてしまうほど、私は仕事や旅に夢中だった。

祖母の1周忌を迎えようとする頃1通のメールが届いた。送り主は手帳大賞事務局。なんと祖母の言葉が受賞したという連絡だった。

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